プログラム
【大会企画シンポジウム】
1. 細胞・組織のメカニクス
Mechanics of cells and tissues
日時 3月28日(日)9:00~11:00
細胞や器官の生理的機能には,それを支える形態の成立・維持が重要である.機能および形態には,細胞・組織の生存・暮らしぶりの結果としてもたらされる「ちから」が深く関わっている.生体の「メカニクス」は,従来から生理学において運動,循環,呼吸などを主要な対象として精力的に研究され,最近では,発生・形態形成,再生,病態の探求においても,細胞・組織の力学的特性(硬さ,弾性など),機械的刺激の感知機構,力学的負荷への応答などに関する細胞・分子のレベルでの「メカノバイオロジー」研究が,分野間越境的な相互連携を通じて新しい知見を生み出しつつある.こうした現状に照らし,生理学・解剖学の接点として「ちから」を意識し,様々な場面・舞台において細胞の内外でどのような力学的なイベントが起きているか,また,それらをどう捉え,理解していくことができるのか,情報共有・意見交換の場を持つことは意義深い.
座長:
宮田 卓樹
(名古屋大学)
柴崎 貢志
(長崎県立大学)
2. 自律神経研究の可能性
Possibility of reseaches in autonomic nervous system
日時 3月28日(日)9:00~11:00
自律神経系は生体の恒常性維持に重要な役割を果たす。従来の研究手法に加え,オプトジェネティクスやケモジェネティクスといった神経操作法,イメージングシステムや細胞間相互作用解析などの新しい技術の発展により,自律神経研究の可能性はますます広がってきている。本シンポジウムでは自律神経を軸とした中枢-末梢連関に焦点を絞り,呼吸,循環,消化や免疫などの各分野で活躍する研究者が新しい知見を紹介する。多種多様な自律神経機能を包括的に解釈し,whole bodyを用いた研究の「これから」を示せるようなシンポジウムを目指したい。
座長:
安部 力
(岐阜大学)
横田 茂文
(島根大学)
3. 視床下部・下垂体系の器官形成研究の最前線
Cutting-edge researches on the organogenesis of hypothalamus-pituirary systems
日時 3月28日(日)9:00~11:00
視床下部-下垂体系の発生および再生について、胚性幹細胞/組織幹細胞の視点からアプローチする。哺乳類の発生過程で神経外胚葉と口腔外胚葉の相互作用から腺性下垂体と神経性下垂体が形成される。この過程は胚性幹細胞系の3D培養系で再現可能となり再生医療応用が検討されている(須賀)。機能的な下垂体系の再現においては下垂体門脈系が必須である。下垂体門脈系の形成過程にVEGF-Aが必須でありホルモン産生細胞の機能変化にも関与する(中倉)。生体の視床下部-下垂体機能の維持のため組織幹細胞や支持細胞が存在する。ラトケ嚢に端を発するSox2/ S100β/CD9陽性の下垂体幹細胞が生体において前葉細胞に分化する(堀口)。同じくラトケ嚢から発生するFolliculo-Stellate cellはホルモン産生細胞の支持や液性調節を担う(藤原)。特異な脳室上衣細胞であるタニサイトは視床下部においてホルモン分泌制御や組織幹細胞として機能する。タニサイトの細胞表面抗原を同定し、マウスES細胞系におけるタニサイトの発生過程の詳細が明らかになった(小谷)。以上5人の演者により最先端の知見を紹介する。
座長:
長崎 弘
(藤田医科大学)
堀口幸太郎
(杏林大学)
4. 目的指向性および動機付け行動の神経機構
Neural mechanisms of motivated and goal-directed behaviors
日時 3月28日(日)9:00~11:00
目的指向性行動はヒトの高次脳機能の一つであり、動機付けは、目標選択、行動の開始、維持、または変更するためのすべての過程に関与している。また、動機付け形成には、前頭葉における意思決定、意欲、報酬価の評価、脳幹からの上行性入力、および線条体系における強化学習など多くの要因が関与している。一方、同機構の障害により、うつ病、依存症および強迫性障害など様々な神経疾患が発症すると推測されており、これら神経機構の解明によりこれら疾患の解明が進むことが期待されている。本シンポジウムでは、ヒト、サル、およびげっ歯類の様々なレベルの解析から目的志向性行動における動機付け機構の役割について議論する予定である。
座長:
西条 寿夫
(富山大学)
西 真弓
(奈良県立医科大学)
5. 生後脳におけるニューロン新生:制御機構および高次脳機能への関与
Neonatal and adult neurogenesis: novel regulatory mechanisms, functional implications, and contribution to disease pathology
日時 3月28日(日)9:00~11:00
海馬歯状回顆粒細胞下帯および側脳室周囲脳室下帯では、生涯にわたって新しい神経細胞が産生されている。歯状回の新生ニューロンは、記憶、学習、情動といった高次脳機能の正常な発揮に必須であり、その制御機構の破綻は、うつ病などの精神疾患を引き起こす。脳室下帯の新生ニューロンは、嗅球へ移動し、局所で嗅覚の働きを調節する。また、脳が傷害を受けた場合には、損傷部位に移動し、消失した神経細胞の一部を代替する。本シンポジウムでは、若手、中堅、シニアの研究者に、新生ニューロンの多様な生理機能とその制御機構について、最新の知見を交えながら紹介していただく。
座長:
鵜川 眞也
(名古屋市立大学)
澤本 和延
(名古屋市立大学/自然科学研究機構生理学研究所)
6. 肥満症の病態生理とエネルギー代謝調節機構
Physiology of energy homeostasis and pathophysiology of obesity
日時 3月28日(日)14:20~16:20
肥満症は世界中で深刻な社会問題となっており、その解決を目指して病態解明や創薬開発に向けた研究が活発化している。近年の肥満症に関する多くの研究成果により、その病態メカニズムは徐々に明らかになりつつあるが、エネルギー代謝調節機構においては様々な分子シグナルが複雑に絡み合っており、未だ全容の解明には至っていない。本シンポジウムでは、国内においてこの領域をリードする5人の講演者に肥満症とエネルギー代謝調節機構に関する最新の知見を発表していただく。特に、肥満症における栄養シグナルとホルモンの役割、神経ペプチドNPGL/NPGMの生理作用、脂肪細胞分化機構における運動トレーニングの影響、肥満とその関連障害におけるオンコスタチンMの役割、心理的ストレスに対する熱発生や心血管反応のメカニズムといった様々な側面の最新知見をもとに、肥満症の新たな病態メカニズムや予防・治療法につながる臨床応用研究についても議論する。
座長:
花田 礼子
(大分大学)
田中 智洋
(名古屋市立大学)
7. 内臓痛・内臓感覚の機能形態学的基盤とその異常がもたらす病態
Visceral pain and sensaton: basic mechanisms and pathophysiological aspects
日時 3月28日(日)16:30~18:30
内臓痛を含む内臓感覚は、皮膚の痛みや感覚などの体性痛・体性感覚と異なる様々な特徴があるが、その特徴をきたすメカニズムについては不明な点が多い。意識に上らない内臓感覚は、生体の恒常性維持のための生理機能として重要であり、意識にのぼる感覚や内臓痛は、恒常性の維持に加えて、警告系としての意義もあるが、体性痛や体性感覚と異なり、局在性がなく、情動への影響が大きい特徴がある。近年、内臓感覚や内臓痛について、受容伝達に関わる分子や神経回路、制御機構、それに関わる因子が明らかになってきた。本シンポジウムでは、口腔を含めた消化管や泌尿器系、末梢から中枢まで、内臓感覚や内臓痛のメカニズムについての新たな知見を紹介し、生理的機能の理解を深め、その機能異常という面から、高齢者に見られる機能障害や疾患に伴う症状を理解することを目的とする。
座長:
尾﨑 紀之
(金沢大学)
古江 秀昌
(兵庫医科大学)
8. 脳の形成・成熟および可塑的変化を担うグリア研究の未来
Glial research to understand brain formation, maturation and plasticity
日時 3月29日(月)9:00~11:00
多様な現代社会において、高次脳機能の理解は喫緊の課題である。近年、高等動物におけるグリア細胞の割合の多さおよびその形態の複雑性から高次脳機能に対するグリア細胞の役割が着目されている。またミクログリア、アストロサイトをはじめとしたグリア細胞の発達・成熟期における新規生理機能が明らかになるにつれ、それらの生理機能に異常を来した際の病態についての理解も深まるようになってきた。本シンポジウムでは5人の若手グリア研究者によって、発達〜成熟期のグリア機能について新しい知見を示して頂き、これによって生じる病態を解剖学・生理学・薬理学的な立場から議論し、グリア研究の未来への道を切り開きたい
座長:
和氣 弘明
(名古屋大学)
鍋倉 淳一
(自然科学研究機構生理学研究所)
9. 受容から知覚、感覚障害まで ―化学感覚研究の最前線―
From Reception to Perception, and Disorder: Current Topics in Chemoreception Research
日時 3月29日(月)9:00~11:00
嗅覚・味覚は化学物質が刺激となって生じる感覚であり、化学感覚とよばれる。化学感覚の研究はその研究対象がハエなど昆虫からヒトまで広範囲に及び、刺激受容から個体の行動に至るレベルで様々な解析がなされてきた。しかし、無限に近い種類の化学刺激をどのように限られた数の受容体で受容しているのか未だ不明な点が多い。本シンポジウムでは長年の謎であった嗅細胞マーカー分子の匂いの持続性制御への関与の発見や、塩味の受容機構とシグナル伝達機序の発見など新知見と、口腔で起こる体性感覚と化学感覚との連携、糖の識別行動における嗅覚と味覚の連関に関する研究成果を紹介する。さらに、新型コロナウイルス(COVID-19)感染症の初期症状として注目されるヒトの嗅覚・味覚障害の発症過程について、介在する分子細胞機構など最新の知見を紹介し、味と匂い化学感覚の受容・認知機構の特性とその生理的役割について議論する。
座長:
二ノ宮裕三
(九州大学五感応用デバイス研究開発センター/ 米国モネル化学感覚研究センター)
脇坂 聡
(大阪大学)
10. 心血管系の形態と機能を制御するメカニズム
Regulatory mechanism of cardiovascular development and function
日時 3月29日(月)14:00~16:20
心血管組織の形態機能保持は生体にとって非常に重要であり、その破綻は生体機能の低下に直結する。心血管組織の形成・維持には様々な細胞の協調的な働きが必須であり、多くの細胞の分化・増殖・移動が効果的に制御されて完結する。本シンポジウムでは心血管形成過程における細胞制御機構、異なる細胞間での相互作用、構成する新たな細胞、また心臓形成制御および血管発達機構に焦点を当て、正常組織を形づくるメカニズムについて討議を行う。これまで確立されてきた心血管組織の維持機構に新たな知見を加え、形態・機能維持とその破綻を統合的に理解していく場としたい。
座長:
千田 隆夫
(岐阜大学)
佐藤 元彦
(愛知医科大学)
11. 臓器機能を制御する神経回路
Neural circuits controling organ functions
日時 3月29日(月)16:30~18:30
分子細胞レベルの研究が活発に展開されている現状にあって、蓄積した分子レベルの知見を臓器機能の制御回路の解明に活用することは重要である。本シンポジウムの狙いは、臓器機能の制御回路の解明のためのin vivo実験の事例を紹介し、共有することにある。解剖学会の会員と生理学会の会員がそれぞれ得意とする手法を融合させて、新しい研究の展開を模索する機会とするために、特定の臓器に焦点を絞ることなく、話題提供する。
座長:
志水 泰武
(岐阜大学)
山本 欣郎
(岩手大学)
12. 解剖と生理の時計
Clocks in Anatomy and Physiology
日時 3月29日(月)16:30~18:30
全身のサーカディアンリズムを駆動する生物時計には、解剖学的、生理学的、分子生物学的なレベルの制御があります。これらの制御は重層化されており統一的に機能することで我々は日々の明暗周期に合わせた健康な生活を送ることができます。これをふまえて本シンポジウムではサーカディアンリズム制御の基礎科学の進展、そして健康・病気との関連についての新しい知見について5人のシンポジストに話題提供していただきます。講演と議論を通してサーカディアンリズム制御の総合的な理解を目指していきたいと思います。
座長:
増渕 悟
(愛知医科大学)
重吉 康史
(近畿大学)
13. シナプスの局在制御と脳機能
Spatial distribution of synapse and brain function
日時 3月30日(火)9:00~11:00
神経細胞におけるシナプスの空間分布は、入力の統合効率を調節することで、神経細胞の出力決定、さらには脳の機能発現に重要な役割を担う。近年、大規模な形態解析や機能解析、遺伝子操作などの研究手法の進歩に伴って、脳内各所のシナプスの局在制御、さらに、その発達や学習を含めた脳機能への関与について、新たな知見が得られている。本シンポジウムは、この分野で活躍する生理学会と解剖学会の研究者が、これらの最新知見について意見交換を行うことで、脳の情報統合と機能発現に対する新たな理解を得ることを目的とする
座長:
久場 博司
(名古屋大学)
深澤 有吾
(福井大学)
14. 臓器連関による生体恒常性維持機構
Inter-organ communication networks maintain organismal homeostasis
日時 3月30日(火)9:00~11:00
個体レベルでの生体恒常性維持には、神経や血管を介した様々な生理活性物質や代謝物の循環による臓器間ネットワークの情報伝達が重要であることが明らかとなってきた。たとえば、腸内細菌代謝物は腸から吸収されて肝臓に運ばれ、肝疾患をはじめとした様々な全身疾患の発症に影響する。迷走神経を介した脳―臓器連関の破綻が生活習慣病を増悪させる。このように臓器間ネットワークの破たんにより、様々な疾患が発症するものと考えられる。今回、臓器連関に着目した最新の研究から、生活習慣病やがん等の疾患発症メカニズムとその予防に向けての提案を見出す。
座長:
池田 一雄
(大阪市立大学)
大谷 直子
(大阪市立大学)
15. 心筋細胞の恒常性維持機構
Mechanisms in the maintenance of cardiac homeostasis
日時 3月30日(火)9:00~11:00
本シンポジウムでは、心筋細胞の恒常性が維持もしくは変容する調節機構について、 最新の研究内容をご紹介いただくことを目指す。心筋細胞の種類・発達変化・神経刺激・病態・性別などによる維持機構の違いやそれぞれの状態の特徴について、これまで多くの研究がなされてきたがいまだ謎は尽きない。そこで、恒常性維持・変容・破綻について、様々な角度から研究を推進しているシンポジストの研究発表と会場の皆様との議論を通じて、心臓の機能調節機構についての理解を深めることを目指す。
座長:
黒川 洵子
(静岡県立大学)
森本 達也
(静岡県立大学)
16. ミトコンドリア病 その最新の知見
Mitochondrial disease: update
日時 3月30日(火)9:00~11:00
ミトコンドリアの働きが低下することが原因で発症する病気を総称してミトコンドリア病と呼ばれている。ミトコンドリアの機能低下の原因は様々であるが、遺伝的原因としては、核ゲノムにコードされた遺伝子の変異によるものと、ミトコンドリアが独自に持つ、1 細胞当たり数百~数千個存在するミトコンドリアDNA (= mtDNA) の変異によるものに大別される。ミトコンドリア病の臨床症状は極めて多彩で、体のどの部分のミトコンドリアにどれくらい異常が生じるかによって症状が大きく異なっている。本シンポジウムではまだまだ未解明な病気である本疾患の病態機構から治療法までその最新の知見を検討する。
座長:
秦 龍二
(藤田医科大学)
富澤 一仁
(熊本大学)