慢性B型大動脈解離（急性A型大動脈解離術後を含めて）の治療は現時点でも容易ではなく、その治療方針も施設毎に大きく異なっている。TEVARによる治療が積極的に行われるようになって久しく、その経験も蓄積されてきていると思われる。さらに、新たなデバイスによる治療経験が欧米から報告されてきており、本邦での上市が期待されている。また、Openについては、脊髄保護の為の工夫や分割手術などもこれまで多く議論されてきた。本セッションでは各施設のデータを元に短期成績のみならず遠隔期成績を含めた議論を行いたい。

三尖弁逆流（TR）の外科的治療に対する重要性の認識が増している。Severe TRまでの逆流に対しては人工弁輪による弁輪縫縮のみでほとんどが対応できる。しかし、massive TR以上になると弁輪縫縮のみでは逆流制御が困難なことが多くそれ以外の追加処置が必要となる。また、TRを完全に制御した後に右室不全のため術後管理に難渋する場合もある。そこで、massive TR以上を有する症例に対してどのような術前評価、手術手技、術後管理が適切なのかということをこのセッションでは論議したい。

弓部大動脈置換術は標準的な手術となり、またTEVARが弓部大動脈病変に適応されて久しい。分枝付きデバイスの国内導入も近づき、高齢者の患者がさらに増加すると見込まれる今日、それぞれの長所短所を活かした手術戦略が採られることが望ましい。この2つの手術戦略の使い分けを各施設からのデータと経験を元に議論したい。

極端な大動脈の粥状硬化を示すShaggy aortaは特に日本や韓国で近年注目される病態である。カテーテル操作、人工心肺確立法、手術戦略等、Shaggy aortaを有する症例に対する各施設における手術手技の工夫を報告していただきたい。

小児期においては、適合した人工弁サイズがなく人工弁置換術の選択の幅が少ないことにより、完全な手術が困難でありながらも、形成術が選択される。しかしながら、弁尖や弁付属器（腱索や乳頭筋）の高度の異常では、置換術でなければ制御できない症例にしばしば遭遇する。成長期における弁置換術は初回挿入時の工夫も重要であるが、成長に伴うサイズミスマッチにおける再手術は、狭小弁輪に対する人工弁置換術となり、小児、成人心臓血管外科医にとっても重要な問題である。このセッションでは、成長に伴う人工弁のサイズアップを目的とした再手術の適応、方法を広く募集し、狭小弁輪に対する手術法を多くの外科医とともに議論したい。

心筋症の手術治療は狭窄部が流出路に限局するものなのか、中部閉塞を有するものであるのかでその方法は大きく異なってくる。前者ではいわゆるモロー手術の考え方の手術が適用されるが、後者では左室内血流の方向を積極的に変更することではじめてSAMは改善する。また左室内異常筋束を有する症例にも同様のことが言えるので、術前CT画像でそれをしっかり同定し、異常筋束を確実に切除することがSAMの改善にとって重要である。本セッションでは術前の画像診断から手術の術式、術後の評価などについてエクスパートの先生方に議論を深めていただく。

肋間小開胸MICSに加算がついて以降、僧帽弁手術をMICSで行う施設が増加している反面で、心筋保護不良に伴うトラブルも増加している。各施設の心筋保護法と術式・遮断時間・手術成績をご提示いただき、MICS-Mitralを安全に実施するための心筋保護法について、単なる心筋保護液の組成や投与間隔に留まらず、空気塞栓の対策や左室ベンティングの実態を含めた議論をしていただき、臨床成績改善に直結するシンポジウムにしていただきたい。

心房性機能性MRは、長期間の心房細動等による左房拡大が原因で、弁輪拡大や左房左室形態変化がおき、二次的に生じたMRと定義できる。初期の段階では心室機能は障害されないが、経過とともに心室拡大、収縮低下により心室機能性MRも合併してくる。患者は高齢であることが多く、低侵襲治療も考慮にいれて治療を考える必要がある。本セッションでは、本疾患群の定義を踏まえたうえで、心房機能性MRの治療戦略を議論したい。

日本では欧米に比べて単独CABGに対するOPCAB率が高く、ここ数年でも60％と高い水準を維持している。その一方でOn pump beatingでのCABGを選択する施設も少なくなくないが、mechanical supportの詳細な方法についての議論はあまりなされていない。近年はIMPELLAの登場によりIMPELLAサポート下のCABGの有用性も報告されている。このような現状を踏まえて、mechanical support下のCABGについて、選択肢、それぞれの有用性や注意点、短期及び中長期成績を報告していただき、その意義について議論を深めたい。

TAVIが、より低リスクの患者層にも適応とされ、TAV in SAVも実施される時代において、SAVRがTAVIに負けない存在意義を発揮し続けるために求められるものは何か、弁口面積や弁周囲逆流などの弁機能、遠隔成績、TAV in SAVのしやすさ等、多方面から検討していただきたい。Supra-annular・simple interrupt・弁輪拡大などのインプラント法、心膜弁・ブタ弁・外巻き弁・ステントレス弁・rapid deployment valveなどの弁種、MICS-AVRの位置づけ、TAV in SAVを見据えた治療戦略など、多角的なディスカッションを期待する。

弁膜症手術における肋間小開胸MICSの隆盛とロボット手術の導入により、MICS-CABGも見直されてきているが、単独CABG対象患者さんのほぼ全ては多枝病変であり、MICS-CABGが応用される機会は未だ少ない。かかる現状の中、今後MICS-CABGをどう生かしていくか、TAVIとの組み合わせ、PCIとのhybrid治療、ITA採取などロボット手術の応用を含めて、議論していただきたい。

TAVIが本邦に導入されて10年経過し、TAVI後の患者さんに心臓手術を施行する機会も少しずつ増加している。これには治療した大動脈弁関連の再手術と、僧帽弁など異なる病変に対する手術が含まれる。TAVI患者はハイリスク者・高齢者が多く、TAVI後の心臓手術に際しては、大動脈遮断の可否、冷却心筋保護液注入や心臓脱転に伴うデバイスのmigrationなど、特有の問題点がある。最近認可されたTAV in TAVも含め、TAVI後の心臓手術の現況と問題点について、経験を共有していただきたい。

急性大動脈解離に対するFrozen Elephant Trunk（FET）はもはや標準的な術式となっており、Conventional Elephant Trunkは淘汰されつつあるようにすら見える。また、FETの使用は急性解離に留まらず拡大されつつあり、慢性大動脈解離に対しても積極的に使用されている。分枝付きのFETが本邦でも使用可能となりつつある現在、あらためてFETの長所短所、またその使用における注意点等につき、各施設での経験やデータを元にした積極的な議論を行いたい。

急性大動脈解離に対する外科治療は欧米に比しても好成績を示すようになった。しかし、術前に存在するmalperfusionはその手術適応や手術戦略に大きな影響を及ぼす。特にcerebral malperfusionは、緊急時における脳機能の評価の困難さもあり治療方針の判断に悩むことが少なくない。近年、救命という目標を第一に掲げつつ、早期再灌流、結紮、CASの応用など、術後のQOLを良好に保つ為の工夫が多く報告されてきた。本セッションでは、画像診断や初期治療を含めてcerebral malperfusionを有する急性大動脈解離症例の治療戦略につき、多角的な議論を行いたい。

無脾症候群は肺動脈形態、肺静脈灌流形態にvariationが多く、外科治療においては長年様々な工夫と議論がなされてきた。今回、動脈管依存性肺循環と肺静脈灌流異常について、①右室肺動脈短絡と体肺動脈短絡のどちらを選択するか（肺血流供給側の問題）、②肺静脈灌流異常の肺静脈狭窄の程度によって、介入時期や方法(stenting、suturelessやconventionalなど)を、どうするか等について検討する。工夫点含め、 是非積極的な応募をお願いしたい。

左心低形成症候群とその類似疾患に対するNorwood手術の成績は近年向上しており、それに伴い術後の合併症や続発症が明らかになってきている。その中で術後遠隔期に現れてくる大動脈および大動脈弓に関連する諸問題は患者の血行動態と遠隔成績に大きく影響する。Norwood手術時の大動脈弓再建には様々な方法があるが、このセッションでは遠隔期の再建大動脈における諸問題点を提示し、後方視的に至適再建術式について再考したい。

成人先天性心疾患の手術では、時として悪夢のような落とし穴に嵌まり込んでしまうことがある。大昔に他院で行われた手術の再手術例では「フォローアップが途切れていて病状が進行しすぎている」、「詳細な手術記録が入手できず、どのような手術が行われたのか定かでない」、「激しい癒着」、「石灰化（石化）した人工材料」等の困難が待ち受けている。「剥離できない！」、「血管が見つからない！」、「いきなり大出血！」、「石灰化して針が通らない！」等、外科医も患者も体力の限界に挑戦するような手術を経験することになる。本ワークショップでは、「悪夢のような手術」のビデオ画像を持ち寄り、成人先天性心疾患手術のピットフォールとトラブルシューティングについての議論を深め、会員諸先生方の貴重な経験を共有したいと考えている。

包括的高度慢性下肢虚血（CLTI）の病態は糖尿病や透析患者の増加に伴って益々複雑化している。CLTIの治療戦略は外科的血行再建と血管内治療、さらに再生療法などの補助療法やフットケアを含む包括的治療まで何を選択すべきかはいまだ議論の的である。近年、Global Vascular Guidelines、BEST-CLI、BASIL-2などの新たなEevidenceが登場してきた。今後、血管外科医はこれらのEevidenceをどのように解釈してCLTIを治療すべきか、将来の血管外科医のあるべき姿も含め論じていただきたい。

本邦にEVARが導入されてから約17年経過した。外科的人工血管置換術に対する早期成績の優越性は明らかであるが、逆に遠隔期の問題が明らかとなってきている。瘤関連死亡や瘤破裂など致命的なものから瘤径増大まで含めると一定の割合で合併症が起こってくることが分かってきた。この予防としてIMA塞栓の有効性が本邦から示され、ガイドラインでも推奨されている。しかしながら同様の側枝である腰動脈の予防的塞栓に関するエビデンスはなく、その有効性は明らかではない。本シンポジウムではAAA側枝塞栓のみならず、EVAR後遠隔期成績を改善するための戦略につき報告いただきたい。

慢性静脈不全症は、深部静脈血栓症（DVT）・静脈血栓後症候群（PTS）・下肢静脈瘤などの静脈還流不全を背景として、浮腫から皮膚炎・皮膚潰瘍に至る多彩な病態を呈することが知られている。本邦では、下肢静脈瘤の血管内焼灼術・塞栓術、静脈性皮膚潰瘍に対する圧迫療法が保険収載され、今後はDVT・PTSに対する静脈ステント、血栓除去デバイスの保険収載にも進みつつある状況にある。2022年にはESVSから下肢慢性静脈疾患診療ガイドラインが出され、多くの治療法についてのevidenceも集積されてきた。本シンポジウムでは、様々な治療法における各施設の成績などをもとに、本邦におけるより良い「慢性静脈不全症に対する治療」について議論を深めたい。

現在、国内の腹部大動脈瘤の6割以上がEVARで治療されている。開腹手術と比較しても急性期・短中期の治療成績は良好であるが、遠隔期合併症発生率や追加治療の必要性が開腹術よりも高く、エンドリークなどによる瘤径拡大や感染の場合はopen conversionが考慮される。しかしながら、open conversionの適応や術式は標準化されておらず、個々の症例での判断が求められているのが現状である。本セッションではopen conversionの適応や手術手技の工夫、およびその結果と成績などを提示することで、EVARの長期成績の改善につなげたい。

Distal bypassは下腿病変を伴うCLTI症例では起死回生の一手となる重要な治療オプションである。ただし対象は複雑な病変を持つハイリスクのバイパス困難症例が多いため、様々な工夫を凝らさなければならない。本セッションでは高度石灰化症例やrun-off不良症例に対する工夫、適切なvein graftがない症例に対するcomposite graftやspliced vein graftの選択、術後DOAC併用による成績向上の可能性など、それぞれの施設で行っている斬新なトライアルを紹介していただき、その有用性を議論していきたい。