この度、第55回日本移植学会総会を2019年10月10日~12日に広島国際会議場において開催させていただくことになり、光栄に存じております。会の開催に際し、ご指導とご支援を賜ります会員の皆様に熱く御礼申し上げます。本学会は1994年11月に土肥 雪彦先生が第30回日本移植学会総会を主催され、当教室としては四半世紀ぶりの2回目の開催となります。本学会の歴史を感じるとともに、移植医療をお支えいただいた皆様の多大な貢献に深く敬意の念を表します。
2009年に改訂臓器移植法が制定されて以来、奇しくも10年の節目の年の開催となりました。自国での臓器移植の推進を提言したイスタンブール宣言に後押しされた改訂法の施行後、脳死からの臓器提供は期待したほどのテンポではないにしても確実に増加しています。我が国の場合、20世紀の奇跡の医療と言われた臓器移植は、21世紀となった今、成熟期を迎えようとしています。この10年間、移植医療のさらなる普及と発展のために残された課題は何であり、如何に解決するべきかを知るために議論が重ねられて来ました。これからの10年では、知るだけでは十分ではなく、知ったことを実践しなければ移植医療の改善は見込めません。志があるだけでは十分ではなく、移植医療に携わる一人一人がそれぞれの立場で行動を起こさなければ、課題は山積したままになってしまいます。そんな思いから、Johann Wolfgang von Goetheの格言として知られる言葉を本学会総会のテーマとして掲げました。
Knowing is not enough, we must APPLY.
Willing is not enough, we must DO.
知るだけでは不十分だ。実際に応用しなければならない。
やる気があるだけでは不十分だ。実行しなければならない。
我が国の臓器移植は、脳死ドナーからの提供が少なく、未だに生体ドナーからの移植が主流です。移植成績そのものは諸外国と比べ同等かむしろ良好であるものの、生体ドナーに依存したいわば片輪走行ゆえ、臓器の総移植症例数は先進諸国に全く及びません。総移植症例数の伸び悩みは、移植医療の未来を切り開くための基礎科学に携わる研究者人口の伸び悩みにも繋がっているのかもしれません。今回の学会総会は、臓器提供・移植を促進するために我々がこれまで蓄積してきた基礎、臨床、行政の方策を、今こそ実践しようとする気運が高まる会でありたいと願っています。
広島には、世界遺産の宮島、平和公園があり、夜の繁華街では美味しい瀬戸内の魚や地元のお酒を楽しめる場所もたくさんあります。移植医療の発展を願う同士と一緒に、情報交換や親交を温める楽しい時間を過ごしていただけるよう準備をしてお待ちしております。沢山の皆様のご参加をお願い申し上げます。
広島大学大学院 消化器・移植外科学
教授 大段 秀樹
左はキメラ、右はヌエ(伝説上の怪物で、いわば日本版キメラで、頭は猿、胴は狸、尾は蛇、手足は虎のようで、鳴き声は鳥(トラツグミ))、中央は三本の矢を示す。
中央の3本の矢は、戦国時代の武将、毛利元就の故事による。
国際移植学会と日本移植学会の連携、行政・市民・移植関係者の三本の矢を束ねた緊密な協力体制、移植医療の進歩発展などを祈念し、このロゴマークを作成。
基礎、臨床、行政など移植医療に関わる全ての領域の皆さんが、“APPLYING and DOING!”を実践することで、我が国の移植医療の行先があるべき方向に向かうことを祈念し、これに貢献できる学会総会となるようにご支援のほど、よろしくお願い致します。