学会長ご挨拶

 このたび、第27回日本慢性期医療学会の学会長を拝命し、2019年12月3日(火曜日)~4日(水曜日)に大阪国際会議場で学会を開催させていただくこととなりました。大変名誉なことであり、日本慢性期医療協会会員の皆様方にはこのような機会を与えていただきましたことを厚く御礼申し上げます。
 平成4年に第1回介護力強化病院全国研究会が開催されたのが日本慢性期医療学会の始まりです。それ以降、名称変更はありましたが藤﨑学会長が立派にお役目を果たされた昨年の第26回鹿児島学会まで途切れることなく毎年学会が開催されてまいりました。第1回東京学会ではわずか66題の演題数、参加者も600名あまりでありましたが、平成16年の第12回札幌学会では演題数が300題を超え、平成22年第18回大阪学会で初めて500題を超えました。平成25年の東京学会では演題数734題、参加者数3,300名あまりと過去最大の学会となりました。その後若干演題数は減少しておりますが600題余りを維持し2,000人以上の参加者を見る大きな学術集会となっております。発表内容に目を向けますと当初はいかにも経験すなわちスキルのみに基づく症例報告ばかりでありましたが、平成16年の第12回札幌学会以降エビデンスを意識した演題が散見されるようになり、平成19年の第15回神戸学会のころよりデータに基づく演題が一気に増加してまいりました。その翌年当時の日本療養病床協会という名称が現名称である日本慢性期医療協会へ改称されました。最近では症例報告以外の発表では当然のように統計学的処理がなされております。
 一方、急性期で用いられる既存のエビデンスが慢性期ではなかなか通用しないことは昔からの経験で我々はよく知っています。平成と共に歩んできた日本慢性期医療学会も昨年の鹿児島での開催が平成最後となり、第27回大阪学会は新しい年号で開催される初めての学会となります。この新時代は、我々が慢性期で得たデータを今までの経験と融合して発展させ、慢性期医療のゴールデンスタンダードを構築していく時代となると私は確信しています。そこで大阪学会のテーマを「令和時代の慢性期医療~スキルとエビデンスの融合を目指して~」とさせていただきました。
 今回の会場はできるだけエレベーターでの移動距離が少ないようにさせていただいています。特にポスター会場は多くの口述発表会場と同フロアにおき、できるだけ多くの皆様に見ていただくチャンスをもうけました。ポスターセッションは口述発表に比べ関心のある発表を選択的に見ることができる、発表者との距離感がなく発表内容を見ながらじっくりと議論ができる、発表者との距離感がなく遠慮なく質問ができる、等大きな利点を有しております。「ポスター発表はチャンスの宝庫」とも言われております。ぜひ活用いただければと思います。
 シンポジウムも同時開催を行わず、1会場のみとし5題に絞らせて頂きました。テーマは介護医療院に関するもの、ACPに関するもの、今後の医療政策に関するもの、治療病棟としての慢性期医療に関するものに加えて、高齢者の多くが抱えている“痛み”を上げさせていただきました。例えばひざ痛のために外出が減りフレイルが進行したり、疼痛緩和のために何剤もの鎮痛剤投与がなされpolypharmacyの原因となったりと痛みが原因でQOLの低下を招いている高齢者が多く存在します。痛みは“たかが痛みされど痛み”であると私は考えております。本学会で一度深く取り上げられればと考えております。
 大阪は庶民の町です。街中できょろきょろしていると地元のおばちゃんに「兄ちゃん、どこ行きたいん?」と声をかけられます。せっかく大阪まで来ていただくのですから、学会の合間に大阪をうろうろしてそんなおばちゃんとの掛け合いを楽しんで頂いても良いかもしれません。
 是非とも多くの皆様に参加いただき、白熱した議論から高齢者医療の現場で本当に役立つエビデンスが生み出されることを期待しています。

第27回日本慢性期医療学会 学会長 井川誠一郎

井川誠一郎