大会長挨拶大会長挨拶

第32回日本老年歯科医学会学術大会
大会長:河相 安彦(日本大学松戸歯学部 有床義歯補綴講座 教授)

 この度、第32回日本老年歯科医学会学術大会の大会長を仰せつかりました日本大学松戸歯学部の河相でございます。第32回学術大会は本来、隔年で合同開催される第32回日本老年学会の分科会として、2年前仙台で行われた合同学会を受け、名古屋で開催する予定でした。しかし、ご周知の通りCOVID-19の拡大が続いており、2021年6月におけるCOVID-19の状況予測は難しく、第31回日本老年歯科医学会学術大会に引き続きWEB開催となりました。
 今回の学術大会のテーマを「人生100年時代に老年歯科医学ができること」とさせていただきました。日本が世界に先駆けて超高齢社会に突入しているなか、老年歯科医学会は、精力的な活動を重ねています。その最たるものは「口腔機能低下症」の概念を地道に検討し、歯科医療に新たな息吹と方向性を導いたことではないでしょうか。この「日本発」の取り組みは、間違いなく世界各国へ影響を及ぼすと言っても過言ではありません。
 一方、まだ解決すべき課題も多くあります。「人生100年時代」に向けて健康寿命の延伸を考えるとき、人の一生を長期的に俯瞰し課題を検討する必要があります。つまり、小児期から、先制医療の概念でこれからのスキームを組み立てなければいけません。それには指標の設定と変動に伴う個人への影響、それに基づく介入の可否などを明らかにする必要があります。研究面では、今までのエビデンスと課題を整理して、超高齢社会先進国である我が国からもっと多くの洗練された前向き研究の排出が促進を後押しする課題についても検討し、学際研究へのシーズが創出されることが必要です。さらに、社会インフラや人的資源に関わる様々な仕組み・戦略の検討と構築も必要です。これらの山積した課題に関して、歯科がアカデミア・臨床家・多職種・行政等のワンチームで、「できること」、「やらなければならないこと」、「できないこと」を整理して、ロードマップの礎を作らなければなりません。そのような願いと思いを込めて今回のテーマとさせていただきました。
 第32回の学術大会は第32回日本老年学会総会の分科会としての機能があります。高齢者に関する医療・ケア・基礎研究に関わる面々が一堂に会し、オンラインではありますが多職種・多分野交流の場となり、参加される皆様にとって意義深い会になるよう、幹事校として精一杯努めさせていただきます。WEBによる開催も2年連続となり、その利点や改善点も明らかになりつつあります。WEBだけに、いつでも、「ど・こ・か・ら・で・も」、そしてWEBだけど、「一体感を、そしてインタラクティブに」を目指した学術大会としたく存じます。老年歯科医学会会員の皆様には是非ご参加と、ご協力をお願い申し上げます。

河相 安彦