第33回東北救急医学会総会・学術集会

会長挨拶

第33回東北救急医学会総会・学術集会(第29回日本救急医学会東北地方会)の開催にあたり、ご挨拶を申し上げます。本学会は東北の地で活動する医師・看護師・救急隊員など多職種のみなさんで、救急医学・救急医療について多角的方向から議論を行える場であります。

今回のテーマは「救急医療〜より深く、さらに広く〜」としました。戦後・高度経済成長期の昭和30〜40年台、交通戦争と呼ばれる交通外傷の急増が大きな社会問題となりましたが、これに対する医療システムの改変(消防による救急搬送業務の法制化や救急医療機関告示制度の制定など)が、我が国の救急医療の大きな転換点でした。続いて、内因性救急疾患の医療ニーズ急増も踏まえた初期・二次・三次救急医療機関の体制整備が成され、現在の救急医療の骨格が形成されました。東北救急医学会が産声を上げた昭和62年以降、病院前救急の質向上を目指した救急救命士法の制定とメディカルコントロール体制の構築、外傷診療や心肺蘇生・心血管救急など数々の傷病対応の標準化と高度化、ドクターカーやドクターヘリの登場による病院前—病院内救急医療のボーダレス化など多様な新システムが生まれました。単一の職域構造や一つの疾病領域内で問題を「深く」追及する作業と、複数の職域・フィールド・フェーズを「広く」またぐ連携により、この半世紀で救急医療は著しい「深化・伸化・進化」をとげています。

50年前の外傷救急体制整備がそうであったように、救急医療はその時代の世情を鋭敏に反映し、常に深まり、広がりを見せています。それでは今この時代、数多の災害が発生する我が国で、史上例を見ない少子高齢化社会の中で、社会インフラの地域間格差を鑑みて、救急医療に携わる私たちが深め、広げていくべきものは何であるか、様々な立場にあるみなさんで議論して頂き、その知を共有し実践の土台として頂ければこの上ない幸いです。

綠のまぶしい杜の都仙台にて、たくさんの皆様にご参加頂けますようお待ちしております。

第33回東北救急医学会総会・学術集会
(第29回日本救急医学会東北地方会)
会長 山田 康雄
独立行政法人国立病院機構仙台医療センター 救命救急部長 兼 救命救急センター長

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