会長挨拶

松本 守雄

 この度、第29回日本腰痛学会を2021年10月22日(金)、23日(土)の2日間、東京・虎ノ門ヒルズフォーラムで開催させていただきます。伝統ある本学会を担当させて頂きますことを大変光栄に存じます。
 本学会は、1993年に日本腰痛研究会として発足し、第8回の2000年から日本腰痛学会と名称を変更し、今日まで発展してまいりました。本学会の設立は労働の場において多発する腰痛の問題に対する整形外科的な議論の必要性が背景にありましたが、その後、国民病とも言える腰痛に関して、診療科や職種を超えてさまざまな角度から議論をする場となっております。
 難治性腰痛は科学が進歩した現在でもその病態が十分に明らかにされているとは言いがたい一方で、実臨床の場では診断技術の向上や集学的治療の導入などにより徐々に光が見えてきている状況でもあります。また社会の高齢化が急速に進む中でロコモティブシンドロームの原因としての加齢性腰椎疾患患者は増加しており、その対策も急務です。さらに近年、人工知能の診療への応用、モバイル端末から取得したpersonal health recordの活用、クラウドを用いたビッグデータの集積と利活用など、さまざまな技術が医療の現場に導入されつつあり、今後、腰痛診療にも応用されることが期待されます。これらを鑑みまして第29回本学会のテーマを「腰痛診療 –新時代への先導–」とさせていただきました。本邦における腰痛診療の現状を俯瞰しつつ、その近未来像を本学会から提示できるよう、さまざまなシンポジウムや主題、教育研修講演を企画してご参加の皆様にご議論をいただきたいと思います。
 新型コロナウイルス感染症の状況も慎重に見極めながら、安全かつ内容も充実した会になるよう準備を進めたいと思います。整形外科をはじめさまざまな診療科医師の方々やメディカルスタッフの方々など、多くの皆様のご参加を心よりお待ちしております。