第68回日本甲状腺学術集会

会長挨拶

志村 浩己 第68回日本甲状腺学会学術集会
会長 志村 浩己
公立大学法人福島県立医科大学医学部臨床検査医学講座 主任教授

 第68回日本甲状腺学術集会の会長を拝命し、令和7年11月27日(木)〜29日(土)の3日間、福島県郡山市のホテルハマツにて学術集会を開催させていただきますことを、会員の皆様に心より御礼を申し上げます。福島での開催は、福島市で開催された第58回学術集会に続き2回目となります。歴史ある本学会学術集会開催にあたって、浅学非才の身ではございますが、力の限りを尽くし、皆様をお迎えしたいと考えております。
 福島県は、2011年3月の東日本大震災に引き続いて発生した原子力発電所事故により、放射性物質が飛散し、低線量放射線被ばくによる健康への影響、特に小児甲状腺癌発症に関する不安と甲状腺への関心が高まってきた地域でもあります。福島県と福島県立医科大学は、県民の不安に対応するため、福島県「県民健康調査」甲状腺検査を2011年10月から開始しております。本学会は、福島県の甲状腺検査の立ち上げ、県内における検査および県外検査への御協力、県内の検査者養成への御協力など、本検査に多大な御協力をいただいており、これまでの御協力に深謝いたします。震災から14年後にあたる学術集会時には、7回目の検査にあたる本格検査(検査7回目)を実施中です。本学会におきましては、現状の報告とこれからを議論する機会とさせていただけましたらありがたく存じます。
 本学術集会のポスターには、福島が輩出した野口英世博士のお写真を掲げております。博士は生涯に200編余りの英文論文を公表されるなど、その時代としては傑出する業績を上げておられ、医学の世界に身を置く我々としては、学ぶべきことが大いにあります。その彼の母である野口シカの言葉として、「どれだけ働いても、愉快な心でいれば、決して体を害することはない。心に不快さえなければ、仕事が大変であっても、体を害することはない。」という息子の健康を気遣う言葉が残されています。働き方改革が進む現代にはややそぐわない言葉であるかもしれませんが、現代の我々も、この時代だからこそ、学問や仕事を“愉しむ心”を持つことは大切なことと思います。そこで、福島県で開催される今回の学術集会のテーマとして「〜福島の地で〜甲状腺学を愉しむ」とさせていただきました。本学会員の皆様には福島の地に足を運び、心ゆくまで甲状腺学を愉しんでいただけましたらと願っております。
 また、本学術集会のポスターの野口博士の左側には、安積疎水の十六橋水門の写真も配しております。安積疎水は、明治時代に猪苗代湖の水を郡山市に引くために開削され、同市が大きく発展する礎となりました。郡山市は、東京から1時間20分程度とアクセスも良く、福島空港も近い地にあります。郡山の街のみならず、近隣には磐梯熱海温泉や磐梯山や猪苗代湖などの名所も数多くあり、その猪苗代湖畔には野口英世博士の生家と記念館もございます。福島県は酒どころとしても知られており、この機会に、郡山市および福島県の自然と日本酒などの名産品をご堪能いただけましたら幸いです。全国から多くの皆様のご参加を心よりお待ちしています。