ご挨拶
謹啓 時下、皆様におかれましては未曽有の災禍の中ご苦労はいかほどかと拝察致します。
このたび第26回日本災害医学会総会・学術集会の大会長にご指名いただき大変光栄に存じます。今回の学術集会のテーマは災害時の保健医療における「善・真・美の探求」とさせていただきました。真善美は人間の理想や追求目標となる普遍的な価値観であるという哲学用語ですが、災害時の保健医療は実践と検証を積み重ねてきていることから善行による実践、そして検証による真・美の探求という順としました。
2021年は東日本大震災から10年、熊本地震から5年という節目の年となります。2011年3月11日14時46分に発生した東日本大震災は、皆様もよくご存じの通り地震、巨大津波そして福島第一原発事故という複合災害により甚大な被害をもたらしました。阪神淡路大震災の教訓から災害拠点病院、DMAT体制、EMISなどが整備されましたが、それまでの計画では対処しきれないパブリックヘルスの課題、難題が突き付けられました。まだまだ復興したとはいえない地域や復旧すらもままならない地域もありますが、当時とそしてこの10年を振り返り、善とは何か、真は何であるのか、美を成すにはという問いを皆様と探求していきたいと思います。
さらに、新型コロナウイルス感染症(Covid-19)が全世界に甚大な被害をもたらしています。日本ではダイヤモンド・プリンセス号の対応に始まり、その後、日本全国に感染が拡大し、人々の暮らしや医療、経済に大きな影響を及ぼしています。新型コロナウイルス感染症のこれまでの対応に関する検証と今後の対策や体制強化、コロナ禍での災害時の保健医療対応などについて活発な討論がなされることを期待しています。
日本災害医学会の26年の歴史の中で、初めて女性として、また医師以外の職種として大会長を務めさせていただきます。ジェンダーギャップを最小にする取り組みの一つとして学術集会の企画委員の3割を女性とし、また、女性・平和・安全保障に関するプログラムなども企画してまいります。
最後に、日本医師会のJMATが組織されて10年となる年でもありますのでJMATの運営に尽力されてきた前日本医師会常任理事救急災害医療担当で、前日本災害医学会指名理事の石川広己先生に副会長をお願いしています。
新型コロナウイルス感染症の影響でオンライン開催となりますが、できるだけ参加者の皆様にとってご不便がなく、また充実した学術集会となるよう準備して参りますので奮ってご参加いただきますよう心よりお願い申し上げます。
敬具
会 長 石井 美恵子 (国際医療福祉大学大学院 災害保健医療研究センター 副センター長 保健医療学専攻 災害医療分野 教授) |