第52回日本脊椎脊髄病学会学術集会の開催にあたって

第52回日本脊椎脊髄学会学術集会
会長 種市 洋
獨協医科大学医学部医学科整形外科学教室 主任教授

 第52回日本脊椎脊髄病学会学術集会は2023年4月13日(木)〜15日(土)、「格致日新(かくちにっしん)」をテーマとして、札幌コンベンションセンターおよび札幌市産業振興センターにおいて開催する運びとなりました。半世紀以上の長い歴史をもつ本学会学術集会を獨協医科大学整形外科学教室が担当させていただますことを大変光栄に存じ、心より感謝申し上げます。
 超高齢化社会という現状において、今後もわが国が活力ある社会を維持していくためには健康で自立した日常生活を送れる期間である「健康寿命」の延伸が喫緊の課題です。筋・骨格・神経系からなる運動器の健康は自立した日常生活を支える基本で、健康寿命延伸の絶対条件といえます。とくに脊椎・脊髄は運動器の機能を保証する中核であり、その障害からの回復や機能維持に果たす脊椎脊髄外科の役割は極めて重要といえます。「格致日新」の「格致」あるいは「格物致知」とは、しっかりと事物を観察しその道理や本質を理解するという自然科学の基本を説く言葉で、こうして日々向上していくという意味です。これは外科修練にもよく当てはまることです。健康寿命の延伸のためには「実効性の高い医療の提供」が求められ、そのためには私たちは病態や治療原理の正しい理解と外科技術の向上を目指し、着実に脊椎脊髄外科を発展させていかなければなりません。
 本学術集会では「格致日新企画」として,病態の本質に迫る基礎研究、治療原理の根本を見据えた脊椎脊髄外科治療、質の高い外科医育成を図る新たな教育法、あるいは,実効性の高い治療のためのイノベーションに関するシンポジウムやディベートを多数ご用意いたしました。また、目前に迫った医師の働き方改革、医療の質を保証する医療安全、医学研究のための研究倫理・関連法規などをテーマとした招待講演を企画しています。学会主導研究セッション、国際化推進を狙ったEPA(English Presentation Award)セッション等、日本脊椎脊髄病学会が継続的に展開しているセッションも踏襲しています。一般応募演題数は1,475演題で、1,067演題を採択させていただきました(採択率72.3%)。内訳は口演618演題(主題144演題、EPA 36演題、一般口演438演題)、ポスター449演題(English 28演題、一般421演題)です。基調講演には野原裕・獨協医大整形外科名誉教授に「日本における脊椎外科の黎明期」、特別講演には産業用ロボットの世界トップ企業であるファナック株式会社の代表取締役会長・稲葉善治様に「産業用ロボットの現状と展望~医療用ロボットへのヒント」、文化講演には元・NHKアナウンス室長・山根基世様に「こころの声を「聴く力」」をご講演していただきます。招待講演には、千葉大学の横手幸太郎先生、筑波大学の山海嘉之先生、浜松医科大学の大磯義一郎先生、獨協医科大学の上杉奈々先生にお願いしております。教育講演として格致日新セミナー(主催校選定の海外演者10名):5、海外招請講演(国際委員会選定演者9名):4、ランチョンセミナー:26、モーニングセミナー:7、アフタヌーンセミナー:7、ハンズオンセミナー:5を企画させていただきました。
 第52回学術集会は北の大地・札幌市で開催させていただきます。時代はウィズ・コロナのフェーズに移行し行動様式の見直しも行われている中、会員の皆様が一堂に会して活発な議論を展開し、直接のパーソナルコミュニケーションがとれる開催形式として最終的な調整を行っているところです。札幌は桜前線が届く前の水芭蕉やフキノトウなどが咲く早春の季節です。ご参加いただける会員の皆様が本学術集会を十分にご満喫いただけるよう教室員一丸となって準備して参りたいと思います。

謹 白