会長挨拶
坂井 晃
(福島県立医科大学医学部 放射線生命科学講座 教授)

 この度、第46回日本骨髄腫学会学術集会会長を拝命いたしました、福島県立医科大学放射線生命科学講座の坂井 晃です。本学術集会は、2021年5月29日(土)、30日(日)に福島市で開催いたします。2011年の東日本大震災と東京電力(株)福島第一原子力発電所の事故による甚大な被害から復興中の福島で、震災後10年の節目に開催できることを大変嬉しく存じます。
 さて多発性骨髄腫の治療は、プロテアソーム阻害薬、免疫調節薬、ヒストン脱アセチル化酵素阻害薬、抗体薬といった多様な薬剤選択が可能となり、明らかに骨髄腫患者の生存期間が延長してきておりますが、それら薬剤の組合せ方や治療開始時期、維持療法のあり方など多くの課題があるのも事実です。
 第46回の学術集会では、これらの新規治療薬の情報だけでなく、もう一度多発性骨髄腫という疾病がどういうものか見つめ直すため、学術集会のテーマを「温故知新」としました。骨髄腫の治療開始時期は、現状では基本的にCRAB (高Ca血症、腎機能障害、貧血、骨病変)のいずれかを認める症候性骨髄腫からということになっておりますが、骨髄腫においてこれらCRABが生じる機序と意義を見直し理解を深めることで、骨髄腫の治療が今後さらに発展することを期待します。実際、骨髄腫における貧血の機序は十分に解明されておりません。また骨髄腫で正常免疫グロブリンが抑制される機序も不明です。
 骨髄腫に興味をお持ちの若い方には治療方法だけではなく、骨髄腫の基礎研究や斬新な診療方法をご紹介いただき、活発な議論を交わしていただきたいと思います。また第46回の学術集会では、2020年度の日本骨髄腫学会奨励賞及び骨髄腫患者会助成金を受賞された計4人の方に研究内容をご講演いただく予定です。
 なお、過日よりご案内の通り、本学術集会は新型コロナウイルスの感染拡大を鑑み、感染対策を徹底した上で、現地開催とウェブを併用したハイブリッド開催といたします。(会場はザ・セレクトン福島のみといたします。)感染状況が好転しているとは言い切れないものの、医療従事者を中心としたワクチン接種も開始し、2年ぶりの学術集会にてより多くの皆様に福島の地でお目にかかれることを楽しみにしています。
 福島県は豊かな温泉に恵まれ、また日本一の日本酒の産地です。5月末の新緑の福島を堪能していただければ幸いです。一人でも多くの方の来福をお待ちしております。