ご挨拶

川瀬 鉄典

第32回日本災害医学会総会・学術集会

会長代理 川瀬 鉄典

(兵庫県災害医療センター 副センター長 兼
兵庫県災害救急医療情報指令センター室長)

第32回日本災害医学会総会・学術集会の開催にあたり、謹んでご挨拶申し上げます。

この度、2027年3月18日(木)から20日(土)の3日間にわたり、札幌コンベンションセンターおよび札幌市産業振興センターにおいて、本学術集会を総会会長代理として担当・開催させていただくこととなりました。

本学会は、北海道南西沖地震や阪神・淡路大震災を契機に発足して以来、国内外の激甚災害や新興感染症の対応を通じて発展を遂げてまいりました。現場の実践知を体系化し、訓練・教育・研究へと還元する「知の循環」を積み重ねることで、我が国の災害医療体制の質を確実に向上させてきたといえます。しかし、近年の能登半島地震、そして2026年に相次ぐ国内外の自然災害や人為災害、複合的な健康危機に直面する中で、私たちが直面する課題はより高度化し、複雑さを増しています。予測を超える気象災害、高齢化を含む地域社会の脆弱性、そして支援者・被災地の双方が直面する過酷なリソース不足――。これらは従来の枠組みと考え方だけでは対応できない新たな現実を突きつけています。

こうした時代と人々の意識が変化する中、本学術集会のテーマを「移りゆく世界の中での災害医療の本質の追求:守るべきものは命だけか」と掲げました。

災害医療の原点が救命にあることは言を俟ちません。しかし、被災した保健・医療・福祉の従事者や施設、地域全体のシステムそのものを支えられなければ、地域社会の崩壊を防ぐことはできません。また、急性期のリスク回避や延命のみに偏重し、生活や尊厳、中長期的な人生の継続を見落としてはいないか。いま一度、私たちが真に守るべき「本質」とは何なのかを多角的に問い直したいと考えております。

会場となる北海道・札幌の地は、本学会設立の原点ともいえる地であり、全域ブラックアウトを経験した北海道胆振東部地震や広域における感染症対応など、幾多の困難を多職種・多機関の結束で乗り越えてきた歴史を有しています。北の大地において、医師、看護師、業務調整員、ロジスティクス専門職、公衆衛生・福祉関係者、行政・消防・自衛隊など、領域を越えたすべての仲間が一堂に会し、膝を突き合わせて議論を交わすことは、極めて大きな意義を持つと確信しております。

不測の事態により、残すところ半年で急遽会長代理を拝命することとなりましたが、会員の皆様、そしてこれまで本学会を支えてくださったすべての関係者の皆様の温かいご支援を力に変え、実り多き学術集会となるよう誠心誠意、準備を進めてまいります。皆様の札幌へのご参集を、心よりお待ち申し上げております。

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