当番世話人挨拶

「至誠」を胸に、
急性肝不全研究と診療の未来を
松山から発信いたします

高見 太郎
第53回日本急性肝不全研究会
当番世話人 高見 太郎
山口大学大学院 医学系研究科 消化器内科学 教授

第53回日本急性肝不全研究会を、2027年6月9日、愛媛県県民文化会館にて開催させていただきます。当番世話人を務めます、山口大学大学院医学系研究科 消化器内科学の高見太郎です。このような貴重な機会を賜りましたことを、関係各位の皆様に心より深謝申し上げます。

本研究会のテーマは「至誠」といたしました。

「至誠にして動かざる者は未だこれ有らざるなり」という言葉に象徴されるように、山口の地が育んだ吉田松陰は、時代を動かす原点として「至誠」を重んじました。

そして今回の開催地・松山は、司馬遼太郎『坂の上の雲』の舞台でもあります。主人公の秋山兄弟らが、それぞれの志を胸に近代日本の未来を切り拓いていったこの地においても、「至誠」は重要な精神的支柱であったように感じます。

いまだアンメットメディカルニーズである急性肝不全は、まさにこの「至誠」が問われる分野であると感じています。患者一人ひとりの命に真正面から向き合い、限られた時間の中で最善を尽くし、さらに多職種・多施設が誠実に連携することによって、初めて救命へとつながる領域だからです。また、この困難な病態を克服するためには、基礎・臨床の垣根を越えた真摯な研究の積み重ねが不可欠です。

近年、急性肝不全を取り巻く病態・診療は大きく変化しています。免疫抑制療法や化学療法後に発症するde novo B型肝炎は、依然として重篤な転帰を来し得る重要な課題です。また、日本におけるACLF(acute-on-chronic liver failure)の急性増悪因子としてアルコールが占める割合は高く、アルコール使用症を含めた包括的な取り組みが求められています。さらに、自己免疫性肝炎(AIH)や薬物性肝障害を契機とした急性増悪、背景肝疾患としてのC型肝炎、MASLD、PBCなど、急性肝不全・ACLFを取り巻く病態はますます多様化しています。加えて、切除不能肝細胞癌に対する免疫複合療法の進歩に伴い、irAE(immune-related adverse events)としての肝障害マネジメントは、ますます重要性を増しています。

急性肝不全研究会は、こうした時流に応えながら、これまでに培ってきた集学的治療や肝移植医療をさらに発展させ、また基礎研究〜橋渡し研究〜臨床研究〜社会実装に至るまで、多角的な議論を深める場であり続ける必要があります。

本研究会では、急性肝不全、ACLF、薬物性肝障害、ウイルス性肝炎、移植医療、集中治療、再生医療、免疫関連有害事象など、幅広いテーマについて活発な討論を行いたいと考えております。そして何より、若手研究者・臨床医の先生方も自由闊達な議論に参加し、新たな連携と未来への「志」を育む場となることを願っております。

『坂の上の雲』の舞台である松山の地で、皆様とともに「至誠」を胸に、急性肝不全研究と診療の未来を語り合えることを心より楽しみにしております。