会長ご挨拶

松野 直徒 謹啓 時下ますますご清祥のこととお慶び申し上げます。平素は格別のご高配を賜り、厚く御礼申し上げます。この度、第49回日本臓器保存生物医学会学術集会を、旭川市民文化会館にて、2023年10月20日・21日の2日間の日程で開催する運びとなりました。
 旭川医科大学としては同門の第6回故関口定美先生以来で、北海道としては第34回玉置透先生以来となります。とても光栄に思います。
 本学会は、「臓器保存研究会」として1974年に発足し、外科学・移植医学のみならず、基礎医学、工学、薬学、生命科学等の研究者を加えたより広範な分野を対象とする「日本臓器保存生物医学会」へ1993年に改組されました。2013年には「一般社団法人 日本臓器保存生物医学会」となり、臓器保存学のみならず異種移植や再生医学など移植外科学に関連する生物学を対象とする多様性のある学会へと発展してきました。
 今回の学会のテーマは「移植外科学の両輪—保存と免疫 一つでも多くの命をつなぐために」とさせていただきました。わたくしは、岡山大学消化器外科で外科医をスタートし、まず腎移植を学びました。さらに東海大学でHLAクラスII DNAタイピングの研究で学位を取得し母校東京医大へ戻りました。故小崎正巳名誉教授のもと初めて臓器保存学を知り、さらに1990年代初め、ウイスコンシン大学外科にて故Belzer教授の腹部移植チーム(肝臓、膵臓、小腸、腎臓)で臨床研修する中、多くの研究を基盤としたUW液の臨床応用ならびにすでに始まっていた機械灌流保存に対する彼の自信と誇りに圧倒されました。
 私は臓器保存学の発展とドナー数増加は表裏一体と考えています。欧米では心停止、脳死マージナルドナーによる移植が活発に進み、臓器提供数の増加に確実に寄与しております。この流れの中で、各臓器において臓器保存学は進み、体外において灌流保存をしながら臓器を治療するという研究が現実味を帯びております。また再生医療への架け橋にもなりうる技術です。異種移植も重要なトッピクスですが、異種移植グラフトの保存についても確かなことはわかっておりません。10月中旬には大雪連峰は冠雪、市内は紅葉。学会では大いに議論をしていただきたいと思っております。

第49回日本臓器保存生物医学会学術集会
会長 松野 直徒
(旭川医科大学移植医工学治療開発講座 特任教授)