第49回日本臨床免疫学会総会

会長挨拶

会長:早川智

第49回 日本臨床免疫学会総会
会 長 早川 智
(日本大学医学部病態病理学系微生物学分野)

第49回日本臨床免疫学会総会を担当させていただき大変光栄に存じます。現在、国際社会はCOVID-19の流行というかつてない事態に直面していますが、会員の先生方も日々の診療、教育、研究で大変な思いをされていることと拝察いたします。

古典ギリシア語で、時を意味する単語にはクロノスとカイロスがあります。過去から未来へ一律に流れてゆく物理的なクロノスに対し、それまでの社会や秩序、個人の価値観や認識が変わる主観的な時がカイロスです。今回のパンデミックは、100年前のスペイン・インフルエンザ、遠くは700年昔の黒死病に匹敵するカイロスでしょう。しかし、人類はいずれの災厄も医学の進歩で克服しています。全ての診療科が感染症との戦いの最前線に立ち向かいますが、共通した基礎となるのは免疫学です。

日本臨床免疫学会は、「基礎免疫学の臨床への応用」を存在理由とする分野横断的学会ですので、「ヒト免疫学」と「免疫疾患」をキーワードに、基礎免疫学、膠原病学、消化器病学、神経学、腫瘍免疫学、産婦人科学、感染症学、皮膚科学、アレルギー学、眼科学、など多くの医学の専門分野の研究者が知恵をよせあい、切磋琢磨することで発展してきました。

特に今回は、同僚である日本大学医学部産婦人科学教授の川名敬先生が主催される第36回日本生殖免疫学会総会・学術集会と合同開催する運びとなり、「認識と寛容」をメインテーマとしました。SARS-CoV-2に代表される病原微生物や変異した腫瘍細胞を認識して排除するのは獲得免疫系の基本機能ですが、自己抗原や無害な外来抗原に対する反応は自己免疫疾患、アレルギー疾患の原因となりますし、産婦人科領域では胎児胎盤に対する過剰な免疫応答は習慣流産をはじめとする異常妊娠の原因となります。「認識と寛容」にかかわる分子・細胞機構と、臨床におけるその制御を両学会の共通するテーマとし、いずれかの学会に登録していただければ全てのプログラムに参加可能としました。内外から基礎免疫学、臨床免疫学の高名な先生方お呼びしてご講演をお願いするとともに、第一線で活躍する研究者の分野を越えた討論を企画しています。さらに若手研究者育成のため、学部学生は参加費無料、研修医は減免とし、最終日にはこれらの方々による若手奨励企画を計画しています。

今回の総会は、新宿にある京王プラザホテルを会場におこなわれます。久しぶりの東京ですので交通の便はよいと思いますが、今後のCOVID-19の流行状況により遠隔開催やハイブリッド開催の可能性も完全には捨てておりません。免疫関連疾患の予後改善のために、我々に何ができるか、特に関連他領域でどのような知見があるのかを議論できる機会となるよう準備をすすめております。10月の新宿は近くの公園で金木犀が香り、コスモスの咲き誇る快適な季節です。多くの先生方のご参加を心よりお待ちしております。

2020年12月

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