会長挨拶

第40回日本分子腫瘍マーカー研究会の開催に当たって
「バイオマーカー、時空を超える羅針盤」

この度、第40回日本分子腫瘍マーカー研究会を、2020年9月30日にリーガロイヤルホテル広島からWeb形式(ライブ配信)にて開催させていただくこととなりました。本研究会は、腫瘍マーカーに関する基礎と臨床の研究を通じた「臨床で役に立つ分子の発見」を目的に、「腫瘍マーカー研究会」として1982年に設立され、以降の分子生物学的ながん研究の進歩に伴って2000年に「日本分子腫瘍マーカー研究会」と名称を改めて発展してまいりました。歴史と伝統ある本研究会の節目となる第40回を担当させていただきますことを、たいへん光栄に存じますとともに、推薦いただきました幹事・世話人の皆様に心より感謝申し上げます。

 生体内の微量な変化を捉えるバイオマーカーの測定は、腫瘍マーカーとして臨床現場での診断や治療方針の決定に大きな役割を果たしています。末梢血中から簡便かつ再現性をもって検出されるバイオマーカーは、空間的に離れた部位の腫瘍の状態を反映し、また組織の遺伝子レベルの解析は、発癌プロセスや予後予測など、時間を越えた情報を明らかにします。私たちはそんなバイオマーカーを羅針盤として、患者さんにとって最適の治療戦略を提案しています。

 そこで、今回の本研究会のテーマを「バイオマーカー、時空を超える羅針盤」としました。シンポジウムでは、「時間を越えて予後を知るバイオマーカー」と「空間を越えて原発を探るバイオマーカー」について、それぞれの領域のエキスパートの先生方に最新の情報を紹介いただき、新しいバイオマーカーの可能性を示していただけるものと期待しております。また、一般演題も多くの応募をいただき、「ゲノム医療最前線」、「新規バイオマーカー」、「がん免疫・がん微小環境」、「リキッドバイオプシー」の4セッションを組むことができました。さらに、本研究会に多大な貢献をなされた今井浩三先生を記念して設立された「今井浩三賞」の初めての受賞講演も予定しております。

 さて、世界および国内での新型コロナウイルス(COVID-19)感染症の蔓延の中、小規模の研究会こそ、感染対策を講じて集まるべきとの幹事会のご意見をいただき準備して参りました。しかし、昨今の全国的な感染拡大の状況から、参加いただく皆様の安全を考慮して、完全Web形式で開催させていただくことといたしました。一部の演者、座長の先生のみ広島会場に来場いただきます。また、関連の話題として、イブニングセミナーで鹿児島大学の馬場昌範先生に、「新型コロナウイルス感染症治療薬の現状と将来」の講演をお願いいたしました。本研究会は、臓器横断的に基礎と臨床の先生方が活発に意見を交換できる場であり、熱気あふれるディスカッションが大きな特徴であります。秋深まる広島を感じつつ、オンラインで多くの先生方にWeb参加いただきますようお願い申し上げます。

第40回日本分子腫瘍マーカー研究会
会長 藤原 俊義
(岡山大学大学院 消化器外科学 教授)

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