第20回日本臨床腫瘍学会学術集会長を拝命いたしました九州大学の馬場英司です。まず世界中の自然災害や紛争により大変困難な状況におられる皆様に心よりお見舞いを申し上げます。
このたびの日本臨床腫瘍学会学術集会を、2023年3月16－18日に福岡県福岡市の福岡国際会議場、マリンメッセ福岡にてハイブリッド形式で開催いたします。

日本臨床腫瘍学会（JSMO）は2004年に学会として正式に活動を開始し、第1回学術集会は桑野信彦集会長の下、福岡市で開催されました。学術集会の主要課題として、がん医療の均霑化、臨床研究の推進とドラッグラグの解消、がん薬物療法の専門医の育成が取り上げられ、広い会場一室に全ての参加者が集い、熱い議論を行った、正にJSMOの旅立ちの姿でした。これから20年を経て、日本、世界のがん医療は大きく変遷し、これと共に学術集会も成長して参りました。

第20回記念となる本集会ではこれまでの歩みに想いを馳せ、“Cancer, Science and Life” をテーマといたしました。科学に基づいた知見ががん医療の進歩を支え、患者さんが満足できる日々を過ごし、実りある人生を送っていただく助けになること。これまで変わらずJSMOが抱き続けてきた理念を、本集会にご参加の皆様と再び共有し、理解を深めたいと願っています。

そのために発表演題として、明日の診療を変えてゆく臨床研究、がん医療の進歩の基盤となる基礎研究や橋渡し研究、日常診療の注意深い観察に基づく新たな知見、支持療法や緩和医療など患者さんの生活を力強く支えるための研究を広く募集しました。その結果、本集会では一般演題1,100題、特に海外からは292題を採択いたしました。また教育講演、企業提供講演も含めますと計1,323題の演題が準備されており、いずれも学術的意義、臨床的意義の高い充実した内容です。特にプレジデンシャルセッションの19演題は、海外の主要学会ではなくJSMOで初めて報告して頂ける貴重な内容であり、是非ご期待頂きたいと思います。このプレジデンシャルセッションのみは、海外の視聴者に対してWEB無料公開され、JSMOから世界へ新たなエビデンスを発信できる機会となります。

教育シンポジウムでは、最も注目すべき臓器別・臓器横断的なテーマについて、29枠のシンポジウムにおいて、国内外の第一線で活躍している研究者と議論を行います。これらはJSMO学術企画委員会と53名のプログラム委員、そしてInternational committee memberの協力により実現いたしました。またESMOやASCOをはじめとする他学会との合同シンポジウムを11枠、会長企画シンポジウムを5枠設け､最新治療から国際的臨床研究の規制､腫瘍循環器学､医療経済、患者支援などの幅広いテーマに取り組みます。例年参加者の多い教育講演も入門編と応用編の全34枠の充実した内容となっています。

第20回記念大会に当たりJSMO事務局と協力し、記念のプログラム・展示を準備致しました。記念講演には東京工業大学栄誉教授の大隅良典先生にご登壇いただきます。大隅先生はオートファジーの全貌を解明し2016年にノーベル生理学・医学賞を受賞されました。本学会では、がん研究に欠かせないオートファジーの研究成果と共に基礎研究への思いをお話下さいます。特別講演は、国際的な建築家であり慶應義塾大学教授の坂茂先生にお願いしました。建築界のノーベル賞と言われるプリツカー建築賞を2014年に受賞されています。坂先生は数々の優れた建築を設計されるだけでなく、紙管を用いた建築で世界中の災害地での支援を続けておられ、私たちに人々の命を守ることへの新たな視座を提供して下さると思います。

第9回学術集会からJSMOが取り組んでおりますペイシェント・アドボケイト・プログラムでは全国からの患者さんを対象に、3日間の基礎・応用講座を実施します。最新のがん医療について、そしてJSMOの活動について理解を深めて頂く機会になることを期待しています。

新型コロナウイルス感染の状況は未だ流動的ですが、感染対策とハイブリッド開催の十分な準備を整えております。春の息吹が感じられる3月の福岡で、多くの皆様とお会いできますことを願っております。皆様の温かいご理解とご支援を賜りますようお願い申し上げます。