第32回日本内視鏡外科学会総会

どれだけ手技が進歩しても、手術中のトラブルの発生をゼロにすることはできないが、術者の熟練度により対応法、結果が異なるのが現状であり、他者のトラブルシューティングから学ぶことは多い。また、内視鏡外科手術では、術野の展開制限やトラブルに対応する手術器具の制限により、通常の手術とは異なるトラブルシューティング法の習得が要求される。このシンポジウムでは、他領域の内視鏡外科医にも参考になるような、新しいdeviceやconceptでのトラブルシューティング法を発表していただきたい。

内視鏡手術は、食道疾患に応用されるようになってから30年近くが経過し、最近では良性疾患に対しては第一選択となっている。一方、悪性疾患に対しても普及しているが全食道切除の1/3にとどまっている。食道疾患は頻度が低く、一般消化器外科医ではなじみの浅い縦隔操作が普及の妨げとなっている。Low volume centerでも行える内視鏡手術の定型化とその成績、さらに内視鏡手術を行うにあたってもより侵襲を軽減する手技などの工夫を論じていただきたい。また、国際セッションでもあるので海外からの聴衆を意識した発表を期待する。

食道癌に対する内視鏡手術は、胸腔鏡手術の普及に加え、近年のロボット支援手術と縦隔鏡手術の導入により、根治性は勿論、低侵襲性に対する真価をますます問われる段階にきている。胸腔鏡と縦隔鏡アプローチは、アプローチが全く異なることで、求められる解剖認識は著しく異なる。したがって、安全確実な郭清操作を行うためには各アプローチ特有の手技の工夫と定型化、郭清の指標となる縦隔解剖の理解が不可欠である。本セッションでは、主として手術手技の点から、各アプローチの利点と課題、課題を克服するための工夫について、さらに、手術適応、周術期を中心とする手術成績について発表していただきたい。

食道胃接合部癌の至適郭清範囲については、日本胃癌学会と日本食道学会が合同で実施した前向き試験によってある程度明らかとなってきたが、内視鏡下手術における下縦隔の郭清手技についてはまだまだ定型化されていないのが現状である。また、胸腔鏡や腹腔鏡下に下縦隔吻合を行う場合の高い縫合不全率や術後逆流性食道炎のリスクも未解決の課題である。そこでこのパネルディスカッションでは、現在各施設がどのような工夫をして、下縦隔郭清や下縦隔吻合を行っているかについて論じていただきたい。

食道癌における反回神経周囲リンパ節は転移頻度が非常に高く、その郭清は重要である。反回神経を温存しリンパ節を郭清する手技は比較的安全に行われるようになってきたが、術後の反回神経麻痺は依然として一定頻度で発生し、食道癌術後のQOL低下の一因となっている。本パネルディスカッションでは、食道癌手術における反回神経周囲リンパ節郭清に関して、各施設の手技を供覧していただき麻痺軽減の工夫に関して討論していただきたい。

食道癌に対するロボット支援手術は2018年4月の保険適用により他領域のロボット支援手術とともに急速に普及しつつある。一方、手術法の詳細は各施設により使用するロボット機種、手術体位、アプローチ法、使用する高性能鉗子およびエネルギーデバイスなど様々で、未だ試行錯誤中である。さらに本手術が従来の胸腔鏡下食道切除と比較して真に優れているかを示す科学的根拠も極めて少ない。食道癌ロボット支援手術のさらなる発展を期待し、本セッションでは、未完成かつ進行中である食道癌に対するロボット支援手術の長所および短所を示す小さなエビデンスを各施設からご報告頂き、聴衆との討論の中で今後の方向性を示してゆきたい。

食道良性疾患の代表的なものに食道裂孔ヘルニア、逆流性食道炎、アカラシア、憩室などがある。これらの疾患に対し、腹腔鏡手術が導入されるようになり四半世紀以上が経過した現在、手技も概ね標準化され良好な手術成績が報告されている。その一方で、整容性を考慮したneedlescopic surgeryやreduced port surgeryなども行われている。またアカラシアに対するPOEM、GERDに対するARMSに代表されるような内視鏡的治療も行われるようになってきている。本ワークショップでは食道良性疾患に対する低侵襲治療として斬新的なアプローチ、チャレンジングな取り組みの発表を期待したい。

腹腔鏡下胃癌手術は広く受け入れられ、先進的な施設では進行胃癌も腹腔鏡下手術の適応としている。国内外からはRCTやpropensity score matching analysisの結果が報告され、開腹手術と比較して同等の予後との報告もある。一方で進行胃がんに対する腹腔鏡下胃全摘術では開腹手術に比較して縫合不全が多いとの報告もある。進行胃癌に対して腹腔鏡下手術を実施するにあたり、どのような問題点があってそれを克服するために各施設でどのような「手技と技術の革新」を行ってきたのか、それらを含めて進行胃癌に対する腹腔鏡手術の可能性と限界について広くご討議頂きたい。

2018年4月より消化器癌に対してもロボット支援手術が保険収載され、我が国でも胃癌においてもロボット支援手術が本格的に開始されることになった。その一方で保険点数に上乗せがなく現実的には従来の腹腔鏡下手術よりコストが高い手術のままであり、NCDなどを基にした胃癌ロボット支援手術の有用性を証明することが急務とされている。本セッションでは術式別手術例数・手術時間・出血量・リンパ節郭清個数・術中および術後合併症･在院日数・医療費・可能ならば長期的栄養評価や再発の有無などの基本データを提示していただき、これら胃癌に対するロボット支援手術の現状をもとに利点および欠点をパネルディスカッション形式で討論していただきたい。

Laparoscopy Endoscopy Cooperative Surgery（LECS）は内視鏡と腹腔鏡により至適な胃切除範囲を決定し、胃切除および縫合閉鎖を行う術式である。本法を進化させたLECS関連手技は当初の適応であった粘膜欠損のない胃粘膜下腫瘍のみならず、胃癌にまで適応を広げつつある。また、十二指腸や大腸といった他臓器への応用も研究段階にある。本セッションでは、LECS関連種皮の新たなる展開について大いに語って頂きたい。

胃上部の早期胃癌の増加に伴い、腹腔鏡下噴門側胃切除が増加している。腹腔鏡下噴門側胃切除後の主な再建法としては、食道残胃吻合、上川法などの各種逆流防止機構を付加した方法、ダブルトラクト再建、空腸間置など種々の再建法が行われているが標準的な方法は確立されていない。また、その短期成績や各術式のピットホールなども十分に明らかにされていない。このワークショップでは、それぞれの術式を行う上でピットホールとそれを防ぐための工夫について、各施設の成績を含めて報告して頂きたい。

残胃癌に対する腹腔鏡下胃切除術の多くは残胃全摘となる。初回手術が消化性潰瘍では、大網が温存されリンパ節郭清が行われていないため腹腔鏡下に完遂可能なことが多い。一方、胃癌の場合には大網温存の有無、リンパ節郭清範囲、再建法、また初回手術が開腹か腹腔鏡かによって難易度が大きく異なり、開腹移行せざるを得ないこともある。特に大網・網嚢を切除した開腹B-1再建例では結腸間膜と腹壁との剥離、膵上縁の剥離、肝左葉や横隔膜と残胃の剥離など難易度が最も高い。本セッションでは残胃癌に対する腹腔鏡手術の適応、周囲臓器との剥離の工夫、リンパ節郭清のコツなど安全・確実な腹腔鏡下胃切除術の手技を中心に議論して頂きたい。

胃癌患者の高齢化はますます進み、治療戦略は重要な課題となっている。脆弱な高齢者ほど低侵襲治療を受けるべきである。腹腔鏡下胃切除術は開腹手術よりも低侵襲で出血量や術後創部痛などの点で優れており、術後早期回復のみならず長期予後にも貢献すると考えられている。
一方、高齢者は併存疾患割合が高く、手術リスクは高い。低侵襲を目指しても、ひとたび合併症を発症するとたちまち超高侵襲治療にと変わる。
術後合併症を起こさず安全な腹腔鏡下胃切除を行うため、術前リスク評価、術中管理、至適術式、手技の工夫など様々な角度から議論していただきたい。

腹腔鏡下スリーブ状胃切除術が保険収載され約5年が過ぎた。この間に多くの施設がこの治療に取り組むようになってきたが、現時点での保険診療の適用はBMI35以上、術式もスリーブ状胃切除術に限られており、海外と比べて十分な状況とは言えない。我が国における糖尿病などの代謝性疾患のほとんどはBMI35未満であり、現在の保険適応では多くの患者がその恩恵をうけることができない。また、糖尿病に対してバイパス系手術の優位性も示唆されている。本シンポジウムでは、内科治療でコントロール不良な糖尿病に対しての外科治療の有用性、今後の展望や期待について、ご討論いただきたい。

我が国においても肥満・糖尿病手術が普及しつつあるが、我が国ではスリーブ状胃切除術が唯一保険収載されている術式である。スリーブ状胃切除術はバイパス術に比べて比較的単純な術式であり、多職種によるチーム医療をしっかり行うことで高い効果が期待できる。一方で実際には様々なピットフォールが存在し決して簡単な手術ではない。ひとたび合併症が発生するとその治療には非常に難渋することが多く、重篤な結果を招くことも多い。さらに重症糖尿病例や超肥満例ではその効果は限定的で、リバウンド例も散見される。スリーブ状胃切除術の問題点を挙げていただき、安全な施行と高い効果を上げるための各施設での取り組みを紹介していただきたい。

大腸癌に対する腹腔鏡手術は、拡大視効果による精緻な操作が可能になり、本学会の全国アンケート調査によると2017年には大腸癌手術の約70％に実施され、もはや特殊な手術ではなくなった。本邦における手術手技の評価は、これまで臨床病期II/III結腸癌に対する第3相試験 (JCOG0404)や臨床病期0/Ⅰ直腸癌に対する第2相試験（Lap-RC）を通じて質の高いエビデンスが報告されている。一方、高齢者や横行結腸癌、ISR、側方郭清、TaTME、ロボット支援手術など新たな手技の導入や適応拡大に関してはその臨床評価は未だ十分でない。本シンポジウムでは、各種術式において様々な観点からのエビデンス応募をお待ちしたい。

大腸領域の技術認定医申請に用いられるS状結腸切除術は、剥離授動、リンパ節郭清、腸管切離・吻合といった、他の大腸手術にも必要とされる基本手技で構成されている。合格という結果にとらわれるあまり、「こうすると減点される」「こうすると点数を取りやすい」という、本質を見失ったHow toアドバイスも昨今良く耳にするが、がんに対する手術原則を守り、手技の一つ一つを確実に行うことが患者さんの安全のためであり、結果として合格につながるということを忘れてはならない。もちろんそのための具体的なコツやピットフォールはあるので、各演者の方々には安全な大腸切除術を行うために必要な手技のポイントを解説していただきたい。

直腸癌手術における重要な選択肢としてTaTMEは昨今世界的な広がりを見せている。その大きな理由として骨盤という限定された空間内でも良好な視認性が確保できる点や骨盤深部での操作性の良さが挙げられる。近年の国際的な臨床試験から示されたように腹腔鏡下TMEは根治性の確保という観点からも決して容易な手術ではなく、TaTMEによる課題解決が今後期待される。
本セッションではTaTMEの手技に焦点を絞り、①安全に行うためのコツ、②標準化するための方策、あるいは③より高度な手技への展開という観点から「TaTMEの手術手技を極める」ための議論を尽くしたい。

直腸癌に対するロボット支援手術は、昨年度から保険適用となり増加傾向である。これから導入する施設も多いが、十分に経験を積んだ施設も増えつつある。開腹手術と腹腔鏡手術との利点を併せ持つロボット支援手術であるが、その有効性は明らかではない。経験を積み、良好な成績を得ている報告がある一方で、定型化に難渋し、従来の手術と比して、満足な成績まで到達していない段階の施設も多い。本セッションでは、直腸癌に対するロボット支援手術において、長所や短所を踏まえながら、術式の工夫も含め、経験とデータに基づいてご討論いただきたい。

我が国では側方リンパ節郭清は標準治療であり、内視鏡外科手術の普及、発展により、近年では腹腔鏡下、ロボット支援下に精緻な側方郭清術が行われている。一方、欧米においても側方リンパ節郭清の意義が検証され、近年、とくに局所制御に一定の有用性がある治療選択肢の一つとして見直されつつある。本セッションでは技術的側面や腫瘍学的な長期成績を含めた幅広い議論を行いたく、腹腔鏡下あるいはロボット支援下側方郭清術における各施設の技術的工夫やこだわり、生理機能や合併症を含めた短期成績、集学的治療との組み合わせ、長期成績などに関する幅広い発表を募集する。

外科手術が発展を続ける中で、ほとんどの外科医が忌み嫌う術後合併症が縫合不全であろう。器械吻合が主流になった直腸癌手術では、その発症率は低下したもののいまだ解決されたとはいえない。これまでもその対策など議論はされてきたものの、外科医自身の経験と基本的手技に忠実に手術を完遂することしかできないのが現状であった。近年では拡大視効果を特徴とする腹腔鏡下手術やICG蛍光法を使用した血流評価もその有用性が議論されている。本ワークショップでは、直腸癌術後縫合不全を回避するために各施設で行っている工夫や新しい機器・器具の活用など、それぞれの経験と科学的根拠に基づいて示していただきたい。

潰瘍性大腸炎(UC)における、大腸全摘術は、各施設で手術方法は異なるものの、症例数の集積により、手術時間の短縮が図られて、単孔式手術やtaTMEを利用した報告例も増加している。最近増加が著しい、colitic cancer症例や肥満症例に対する各施設の工夫についても議論したい。また、クローン病(CD)においては、初回手術の回盲部切除術や右半結腸切除術などは腹腔鏡手術が多くの施設で第一選択となっている。複雑な瘻孔形成症例は施設間での意見の相違があると思われる。CD症例ではどこまで腹腔鏡手術が可能であるかについても討論したいと思う。UC, CDいずれも腹腔鏡下手術の適応・非適応をしっかりと明示していただきたい。

近年腹腔鏡手術の普及により多くの施設で急性虫垂炎に対して腹腔鏡手術が施行されるようになってきた。このような状況において、急性虫垂炎に対してどのような点（どのような症例）で腹腔鏡手術のメリットがあるか？開腹手術が必要な症例はどのような症例か？若手外科医の教育の点において開腹手術、腹腔鏡手術それぞれにどんなメリットがあるか？医療経済面でどうか？待機的虫垂切除術導入の影響は？などいろいろ議論することが多いと思われる。
今回、急性虫垂炎に対して開腹、腹腔鏡手術の両面において各施設の成績やメリット・デメリットなどを発表していただき、急性虫垂炎手術の治療アプローチを討論したいと思います。

憩室炎に対する腹腔鏡⼿術の有⽤性が認識され広く普及してきている。しかし、穿孔や膿瘍形成の症例では⽣命予後に直結することも多く、腹腔鏡⼿術の適応や限界は明確ではない。特に穿孔性の憩室炎に対し、従来の開腹での憩室炎部分の腸管切除および⼈⼯肛⾨造設術（Hartmann ⼿術）に対して、腸管切除を伴わない腹腔鏡下洗浄ドレナージ術が有効率が⾼く合併症も少なくとの報告も増加しているがまだ結論はでていない。各施設での⼿術経験と治療成績、対応策、適応に対する考え⽅を提⽰していただき、⼤腸憩室炎に対する腹腔鏡⼿術の治療戦略と⼿術⼿技について議論を進めたい。

腹腔鏡下結腸右半切除術においては、複雑な血管解剖を理解した上でD3リンパ節郭清を行う必要がある。しかしながら、そのアプローチ法は施設ごとに異なり、標準化されていないのが現状である。本ワークショップでは、授動の手順、中結腸動脈の攻め方、エネルギーデバイスの選択など、安全で確実なD3リンパ節郭清を行うために各施設で行われている様々な工夫やピットフォールを紹介していただき、腹腔鏡下結腸右半切除術におけるD3リンパ節郭清の標準化に向けて何が必要かについて議論を深めたい。

ガイドラインの改訂で大腸癌に対する腹腔鏡手術は弱く推奨されているものの、技術的難易度の高い局所進行癌への適応は個々の手術チームの習熟度を十分に考慮するよう注意喚起されている。実際に隣接臓器の合併切除が必要となるcT4b結腸癌は腹腔鏡手術の適応外とする施設も多い。このワークショップでは、cT4b結腸癌に対する術前診断に基づいた腹腔鏡手術の適応および禁忌、適応の経時的変化、術中開腹以降する条件および割合、短期および長期成績などについて、良好な成績のみでなく反省談も積極的に各施設から発表いただきたい。

急性胆管炎・胆嚢炎診療ガイドラインにて、急性胆嚢炎の基本的な治療方針は腹腔鏡下胆嚢摘出術（LC）施行であることが推奨され、LCは胆嚢良性疾患に対する標準術式となっている。しかし、LCにおける胆道損傷発生率は0.45%（日本内視鏡外科学会のアンケート報告）であり、開腹胆嚢摘出術の胆道損傷発生率は0.1～0.25％と比較しても、未だLCの胆道損傷発生頻度は高い状況にある。本シンポジウムでは、各施設で行っている「胆道損傷ゼロを目指す」ための取り組みについて論じていただきたい。

腹鏡下肝切除（LLR）の普及は目覚ましく、近い将来には肝腫瘍治療における標準治療として位置づけられるようになるとも思われる。ILLS2019はまさに日本がリードする形でそれを確認すべき学会でもある。しかしながら、LLRのラーニングカーブの克服は緩徐であり、自らのチーム技量を判断し、症例を適切に選択したうえで施行することが重要であることを認識しておかなければならないことにかわりはない。本シンポジウムではこの点を踏まえたうえで、その進化したLLRの手術手技を供覧していただきたい。

「胆道癌診療ガイドライン」においては、想定されるさまざまなリスクから胆嚢癌を強く疑う症例に対しては原則的に開腹手術が推奨されている。しかし、胆嚢癌の術前診断には限界があり、実臨床においては症例を選んで腹腔鏡下胆嚢摘出術が行われている。また、腹腔鏡下手術の技術および機器の進歩に伴い、T1およびT2胆嚢癌に対する腹腔鏡下根治術の報告も国内外より散見される。他の消化器癌に対する腹腔鏡下手術の適応が拡大されているなか、あらためて胆嚢癌疑診例に対する腹腔鏡下手術の適応とその治療戦略についてご意見を聞かせていただきたい。

腹腔鏡下肝切除は2016年に保険適応が亜区域以上に拡大され、一般診療として全国に広まりつつある。しかし、再肝切除、巨大腫瘍、高度肝硬変症例、肝門脈管に隣接した腫瘍などはどこまで切除が安全施行できるか、一定の見解に至っていない。また、S7/8領域の系統的切除や右葉切除などの高難度術式は、技術的には確立しているものの、広く一般化したとは言い難い。本企画では、腹腔鏡下肝切除がどこまで可能なのか、また一般化しうるのかについて様々な側面から議論していただきたい。

2016年にリンパ節郭清を伴わない腹腔鏡下膵頭十二指腸切除術が保険収載され３年以上が経過した。施設基準が厳しく適応も限られているため、全国的にも少ない症例数に留まっている。しかしながら、膵臓内視鏡外科が公表している周術期成績は諸外国からの報告に比較して良好であり、国内の各施設が安全な導入に成功していることの証左の一つと考えられる。継続的に腹腔鏡下膵頭十二指腸切除術を行っている施設に安全に施行する上での自施設内基準や工夫、次世代や他施設へ継承するための取り組み等について発表いただき討論を行いたい。

昨年Tokyo Guidelines for management of acute cholangitis and cholecystitis 2018(TG18)が発刊され、手術手技や周術期管理の進歩に伴い、Grade IIIの症例であっても、患者の状態が良好で、手術に熟練した外科医であれば手術を行なうことが可能であると推奨したが、ドレナージのあり方や手術実施時期など、患者・施設の状態・状況の相違により判断をすべき問題が残されている。さらに昨年腹腔鏡下胆嚢摘出術後死亡例を検証した日本医療安全調査機構は手術の適応とタイミングを慎重に検討するよう提言している。本セッションでは、各施設における急性胆嚢炎診療アルゴリズムの中での腹腔鏡下手術の位置づけと問題点を提示していただき、手術のタイミング、術前の難易度の評価、手術術式の工夫を含めた治療方針全体への取り組みについて自由に討論を行いたい。

腹腔鏡下膵体尾部切除術は、膵癌（周辺臓器及び脈管の合併切除を伴わないもの）にも保険適応が拡大されるとともに広く普及してきた。腹腔鏡による拡大視効果は後腹膜臓器の丁寧、正確な切除に効力を発揮し、またエネルギーデバイスの日進月歩で腹腔鏡下膵切除は、さらに進化している。
本セッションでは、腹腔鏡下膵体尾部切除術の専門的知識と技量を有するパネリストに、定型化された手術手技を披露していただき、開腹術との比較、脾臓合併切除のpros and consについてご発表いただき、腹腔鏡下膵体尾部切除術の今後の発展性、将来的展望を議論していただきたい。

近年、腹腔鏡下膵頭⼗⼆指腸切除術が保険収載されたが。その⼿術⼿技は確⽴されていない。特に膵再建、胆道再建は⾼難度の内視鏡下縫合技術を必要とし術後合併症軽減のため安全な再建法の確⽴が重要である。本セッションでは、各施設での再建の⼯夫や治療成績を提⽰いただき、腹腔鏡下膵・胆道再建における問題点についても議論して頂きたい。

腹腔鏡下脾臓摘出術は、特発性血小板減少性紫斑病などの血液疾患から導入され、悪性リンパ腫などの腫瘍性疾患や、肝硬変に伴う脾機能亢進症、高度静脈瘤を伴う門脈圧亢進症などに適応拡大されてきた。脾腫の程度、側副血行路の有無により、その難易度は大きく異なり、日本内視鏡外科学会アンケート報告によると、年間施行される260件のうち、80％は完全内視鏡下、20％は用手補助下で行われ、合併症発生率が約10％である。このセッションでは、各施設におけるこの術式のこれまでの適応、成績をご提示いただき、合併症防止の取り組み、巨脾・側副血行路症例の対策、更には適応拡大の工夫など、この術式の将来像を示していただきたい。

1997年にNavarraがone-wound laparoscopic cholecystectomyを報告して以来、RPSの進歩と多様化には目を見張るものがある。とはいえ、開腹や従来のマルチポート法においてでさえ難度の高い肝胆膵脾領域には、まだまだRPS技術が発展する余地がある。本セッションではこれら高難度手術に対するRPSの実際と手技の工夫、有用性を提示いただき、さらにはその将来展望について論じていただけたら望外である。当然ではあるが、いかなる技術もその安全性が最優先されなくてはならず、得られるメリット（＝整容性）とのバランスが重要である。

肝胆膵領域での低侵襲手術は急速に発展しているものの、系統的肝切除や膵頭十二指腸切除などの高難度手術においては、いまだ術式の定型化、普及には至っていない。ロボット支援手術により高難度肝胆膵手術におけるブレイクスルーが期待されているが、ロボット特有の課題も多く安易な導入は危険である。本セッションでは、肝胆膵領域でのロボット支援手術の課題を明らかにし、各施設の取り組みを報告していただくとともに将来への展望を議論したい。

腹腔鏡下手術は手術侵襲を低減させる可能性があるが、視覚情報の制限から解剖の立体的把握が困難であり、触覚情報の欠如や、鉗子操作性の困難さにより同等の開腹手術より一般に難度が高いとされる。肝胆膵領域における腹腔鏡下手術では、不意の出血や臓器損傷の回避、さらには腫瘍学的に十分な切除を行うために、破格を含めた脈管走行の正確な把握や腫瘍の同定が必須である。このため肝胆膵領域では特に術前、術中の画像情報による手術支援の重要性が高い。現在利用可能な画像情報として術前CTやMRIおよびそのBoxel再構築画像、術中超音波検査、ICG蛍光画像などがある。本セッションでは、これら画像による手術支援の特性、使用法や臨床的有用性について討論していきたい。

近年、内視鏡下手術の進歩により、多くの腹腔内手術が腹腔鏡下に行われており、一部では、ロボット支援下手術が保険収載されている。今後ますます内視鏡下手術の割合が増加していくと考えられるが、高度な癒着、炎症・癌の進展、不慮の出血などによって、術中に開腹に移行することがしばしば経験される。安全に手術を遂行するためには、適切なタイミングで開腹へ移行することが重要であるが、症例によっては、当初から開腹手術を選択することも考慮すべきである。各施設の経験から、開腹移行への適応、タイミングなどを提示していただき、患者安全の観点から最適な方法を討論していただきたい。

限局性前立腺癌に対する治療第一選択としてロボット支援手術が行われているが前立腺手術にともなう鼠経ヘルニア発生率は10％前後で、どの手術操作がヘルニアの発生原因なのかは特定されていない。前立腺癌術後のヘルニア根治術は膀胱前腔の癒着で外科医を悩ますこととなる。最近ではヘルニア併存症例に対して前立腺手術と同時にメッシュ固定術を施行する欧米の報告も散見する。一方、鼠径ヘルニア術後の前立腺癌症例ではメッシュと周辺臓器が癒着し、泌尿器科医はロボット支援下とはいえ前立腺手術に難渋することとなる。外科医と泌尿器科医が一堂に会し、前立腺手術と鼠径ヘルニア手術を取り巻く諸問題を検討する良い機会にしたいと考えている。

急速に普及してきた腹腔鏡下鼠径ヘルニア修復術は、近年手技が定着しつつある。一方その有用性に関しては、鼠径部切開法との比較において依然として議論がなされている。
ここでは質の高い手術の普及のために、手術時間やラーニングカーブ短縮のためのコツ、術後合併症・再発の予防策、および困難症例に対する術式の選択や手技の工夫などについて、各施設における取り組みや成績を発表していただき、更に低侵襲な手術を行うための方策について討論していただきたい。

腹腔鏡下鼠径ヘルニア修復術で使用するメッシュの選択（サイズ・材質・形態など）、術野への挿入・展開・固定方法は、術後の再発や合併症を回避する目的において最も重要な項目と言って過言ではない。
しかしながら、メッシュの使用方法について、わが国おける標準的な方法はなく、各施設において症例や病態に応じて選択しているのが実情である。
このセッションでは、メッシュの選択やこれに関わる手技について、ヘルニアの病態や各施設の臨床成績など様々な視点からの現状報告と問題提起をしていただき、議論し現状を総括したい。

⿏径部ヘルニアに対するTAPP、TEPは近年急速に症例数が増加しているが、本学会のアンケートで⾼い再発率が報告されており、安全な普及が求められているところである。そこで、本ワークショップでは、再発、合併症、術中偶発症のリスクを低減する⼿技的⼯夫をビデオでご披露いただきたい。特に⼀般外科医でも容易に実施可能で、明⽇からの臨床にフィードバック可能な⼿技を期待する。

腹腔鏡下腹壁ヘルニア修復術は、感染を軽減する明らかなメリットがあり多くの施設で行われるようになってきましたが、巨大ヘルニアや心窩部、肋弓下、側腹から鼠径部、下腹部などにかかる場合はメッシュの固定が困難であることなどから難易度の高い部位であり、再発や合併症も危惧されます。近年Posterior component separation法や腹膜外アプローチなども導入されてきてはいますが、腹腔鏡下では必ずしも容易ではないのが現状です。各施設の困難症例に対する腹腔鏡下手術の工夫、開腹手術を含めた適応、アルゴリズムなどに関しても報告していただき、活発な討論をお願いしたいと考えます。

鼠径ヘルニアは最も一般的な外科疾患であり、その治療の選択肢の一つである腹腔鏡下鼠径ヘルニア修復術は内視鏡外科手術教育において外科指導医、外科修練医双方にとって極めて重要な術式である。悪性疾患特有のオンコロジカルなバリエーションがないため、指導者は各局面における定型的な手技やストラテジーを指導しやすく、修練医にとっては切開、剥離、非優位鉗子による術野展開など内視鏡外科手術の基本を学べるからである。本ワークショップでは各施設から腹腔鏡下鼠径ヘルニア修復術指導の取り組みを発表していただき、そこからどのように内視鏡外科手術全体の教育へ結びつけていけば良いのかを論じていただきたい。

ロボット腎部分切除術（RAPN）は、2016年4月の保険収載以来、本邦でもかなり普及してきている。しかし腎機能温存を考慮するとある一定の時間で、切除、縫合することが要求される。また腫瘍残存なく切除し、止血、尿路閉鎖による合併症防止も必要である。これらtrifectaの達成を考えると、内包型、大きな腫瘍、腎門部型などについては、ある程度のlearning curveとともに、いくつかの技術的なポイントを習得する必要がある。本シンポジウムでは、本邦のエキスパートから高難度症例に対するRAPNのポイントおよびその成績を解説していただく予定である。これから適応を拡大しようとしている会員の先生方の参考になれば幸いである。

2018年4月にロボット支援膀胱全摘徐術（Robot-Assisted Radical Cystectomy: RARC）が保険収載され、本邦でも急速に普及し始めた。膀胱全摘徐術後の尿路変向術を体腔内で行う術式（intracorporeal urinary diversion: ICUD）も行われているが、体腔外で行う術式（extracorporeal urinary diversion: ECUD）との比較はまだ十分な検討がなされておらず、その有用性については明らかになっていない。本シンポジウムでは両者の比較検討を行い、各術式の長所と短所を明らかにするとともにRARCの新規導入に際しても役に立つ情報を提供したい。

限局性腎腫瘍に対するネフロン温存術（NSS）の術後成績Trifectaとして、癌制御・腎機能温存・合併症なしが挙げられている。ロボット支援腎部分切除術（RAPN）は開腹手術（OPN）や腹腔鏡手術（LPN）に比し、多くの点で優位性が示されている。腎機能温存はNSSにおける第二義的な成績ではあるものの、高CKDや単腎例等の imperative例では大きな命題であり、長期の生命予後にも関連する。術後腎機能には腫瘍サイズやcomplexity等のunmodifiable 因子以外に、阻血方法、阻血時間や腫瘍切除法（核出術）等のmodifiable 因子も影響する。RAPNでは鉗子類の操作性改善により、癌制御を維持しつつ腎機能温存にも様々な工夫がなされている。本PDでは、これらの有効性について議論する。

T2a以下の腎細胞癌に対して根治的腎摘除術が適応になる場合、腹腔鏡下腎摘除術は、低侵襲性と良好な腫瘍制御の成績から、標準術式として強く推奨されるようになってきた。一方、下大静脈に腫瘍が進展する場合や、腫瘍が腎周囲に浸潤する場合には、従来は開腹手術の適応とされてきたが、近年、このような高難度症例に対しても腹腔鏡手術が試みられるようになってきた。本パネルディスカッションでは、cT3以上の腎細胞癌に対する腹腔鏡手術の手術適応、手術術式、妥当性、安全性、有用性等について検討する予定である。

前立腺癌の手術療法において癌の根治が主目的であるが、その後の尿路再建に伴う排尿障害や男性性機能障害などの軽減も大切な問題である。ハイリスク症例においては、拡大手術を行うため神経血管の温存より根治性を重視するが、それ以下の症例では温存できる症例では極力温存すべきである。そこで本ワークショップでは、ロボット支援手術も保険適応から5年が過ぎ、基本的手技の一つ上の段階として神経温存の工夫にフォーカスを当てさせていただきました。各エキスパートの手術手技やその成績を先生方の後の手術及び診療に活かしていただければと思います。

手術支援ロボットdaVinciは3次元の拡大視野の下、腹腔鏡手術の欠点であった動作制限を克服し精緻な手術を可能とし、今やロボット支援下前立腺全摘除術（RARP）は前立腺癌に対する標準術式となった。しかしながら、daVinciを持ってしても完遂するには難渋する症例に遭遇することは少なくない。一次治療（放射線治療や温熱療法）抵抗性前立腺癌、高度前立腺肥大合併例、鼠径ヘルニア術後のメッシュ癒着症例、高度肥満症例等においてRARPを施行する際には様々な工夫が必要である。本ワークショップではRARPの高難度症例について注意すべき点について積極的な発表と討論を期待している。

前立腺癌に対する根治的前立腺全摘除術において、患者のQOLを最も低下させる術後合併症は尿失禁である。これまで開放手術、腹腔鏡手術において、様々な術式の改良が報告されてきた。ロボット支援手術が主流となった今日において、手術用ロボットの特徴を生かしたさらなる術式の工夫が可能となり、尿禁制の向上が求められている。本ワークショップでは、ロボット支援前立腺全摘除術における尿禁制回復のために、各施設が行っている工夫をご紹介いただき、そのコツを共有することで、よりよい術式開発の一助となることを期待したい。

生体腎移植におけるドナー腎採取術は、健康なボランティアに対する手術であり、ドナーの安全性と移植後の良好な腎機能は絶対的な要件である。従って、ドナー腎採取術における腹腔鏡下手術の適用においては安全性、低侵襲性と、難易度（＝容易に一般化・標準化できるか）とのバランスが重要で、さらにボランティアの視点から考えると整容性にも大きな配慮が必要である。米国では1994年に、本邦では1996年に初めて腹腔鏡下ドナー腎採取術（laparoscopic donor nephrectomy: LDN）が報告されて以来、着実に一般化し、広く採用され本邦では2008年に移植用腎採取術（生体）にLDNが保険収載された。日本移植学会による調査では、本邦の2016年実施症例のドナー腎採取術の95%以上は腹腔鏡下で行われており、既にLDNは標準術式といえる。したがって、今後は安全性、低侵襲性、難易度と整容性の向上を求めたLDN術式の開発と確立が求められており、本ワークショップではその点にフォーカスを当てた内容を予定している。

副腎腫瘍に対する腹腔鏡下手術はその最初から確立まで本邦を中心に行われきたと言っても過言ではない。開放手術に比べた低侵襲性と早期回復の利点は明らかで標準手術として定着しているが、より低侵襲な治療への探求も止むところではない。腹腔鏡下副腎摘除術における最新の工夫や成果、より低侵襲で整容性を求めた単孔式腹腔鏡手術やReduced port surgeryなどについて議論を深め、副腎腫瘍に対する腹腔鏡手術の理想、方向性を明らかにしていきたい。

腹腔鏡手術やARTの技術は著しい進歩を遂げ盛んに行われるようになった。著しく進歩はしたもののARTのみでの不妊治療にも限界はあり、その改善や除去に対する生殖外科手術へのニーズは高まっている。しかし、手術により生殖機能ロスや不可逆的な不妊が引き起こされる懸念もあり、不妊症を扱う生殖外科においてはその適応や手技、ならびに教育などが非常に重要となる。本セッションでは、様々な疾患に対して腹腔鏡を用いた最前線の生殖外科手術を行っているエキスパートの先生方にご講演をいただき、これからの生殖外科としての腹腔鏡手術の在り方について考える。

婦⼈科領域では、良性⼦宮疾患や⼦宮体がんに対するロボット⽀援⼿術が保険収載となり、急速にその普及が進みつつある。⼦宮頸がんに対しては先進医療Bによるロボット⽀援⼿術が⾏われており、今年度中に保険適⽤の是⾮に関する審議が⾏われる予定である。また、令和2年度診療報酬改定における要望項⽬として⾻盤臓器脱に対するロボット⽀援下仙⾻腟固定術が挙げられている。いずれの疾患においてもロボット独特のメリットは体感できるものの、その⼀⽅でロボットならではの技術的問題や悪性疾患に対する治療成績に関する議論もある。それぞれの演者には、これらの問題を踏まえた独⾃の⼯夫等について披露していただきたい。

昨年発表された⽶国でのLACC trialの結果は、ようやく保険診療となってスタート台に⽴ったばかりのわが国の低侵襲広汎⼦宮全摘にも重⼤な影響を及ぼした。この衝撃に対して、産婦⼈科では、社会的対応、制度的対応とともに、医学的にも⽇本でのエビデンスの構築を⽬指して学会横断的・オールジャパンでの取り組みを始めている。本セッションではこのような種々の取り組みにおいて中⼼となっている演者によって、その内容と意義に関する議論を進めたい。

女性の晩婚化を背景にして、子宮の機能温存手術の重要性が高まっている。特に子宮腺筋症は激烈な月経痛や過多月経を伴うため、無治療でやり過ごすことのできない疾患である。薬物療法が無効であったり、慣れを生じて効かなくなってきた場合、あるいは妊娠を希望して薬物を中断する場合などに「機能温存手術」の出番が廻ってくるが、その際に問題となるのは、腺筋症病巣を正常筋層からどのように識別するか、また、病巣をどのように除去するかであろう。
今回は「開腹手術か、腹腔鏡下手術か」というテーマであるから、それぞれの手技を披露して頂いた上で、手技上の利点、欠点、更に再発率、妊娠率、妊娠時の合併症などを含む予後の検討から、熱いディスカッションを期待したい。

子宮体がんに対する腹腔鏡下手術は2008年から先進医療が開始され、2014年からは保険収載となった。腹腔鏡下子宮頸がん手術ではLACC trialの不良な予後と手術方法との関連も取りただされている。子宮体がんでも手術手技において術前の頸部の処置やマニュピュレーターの使用、子宮回収方法などが予後に影響を与える可能性があり同様の問題は生じうる。また、肥満症例が多く合併症も生じ易い。そこで今回ある程度症例が蓄積された現時点における中期成績と合併症についてのワークショップを開催する。

腔鏡下仙骨腟固定術（LSC）は保険収載されてから5年が経過し、我が国でも益々拡がりを見せてきております。そんな中、再発や合併症の報告も散見するようになり、手術の質が問われるようになってきました。本日はこの現状を踏まえ、LSCの短期成績と合併症の対策についてディスカッションして頂きます。また時間が許せば、学会横断的な質の管理・向上のための課題と腹腔鏡技術認定制度における位置付けについて討論したいと思います。

開腹術において骨盤および左腎静脈下縁までの傍大動脈リンパ節(paraaortic lymph node:PAN)郭清術を行うには、恥骨結合上から剣状突起下まで大きく切開する必要があり、術後の癒着、感染、腸閉塞などの問題がある。一方、腹腔鏡は深部を拡大視でき、細い血管を確認しながら操作を行うため、出血量させない精密な手術が可能で、術後の癒着も少なく、PAN郭清に適していると考えられる。現在のところ腹腔鏡下PAN郭清術は推定IbあるいはII期さらには漿液性腺癌などのタイプ２子宮体癌において先進医療によって行われている。
腹腔鏡にPAN郭清を行う方法には経腹膜アプローチと後腹膜プローチがある。それぞれに一長一短はあるが、術野確保など施設ごとに工夫がなされている。

子宮内膜症は日常診療でよく遭遇する、月経困難などの疼痛や不妊、さらには内膜症性嚢胞の悪性化など多様な症状を呈する疾患で、その確定診断には腹腔鏡が古くから用いられてきました。治療方針は患者さんの背景によって大きく異なり、妊孕性温存のために不妊治療との組み合わせも検討すべきであり、逆に根治を目指すためには悪性腫瘍の治療のような病巣摘出手技が必要となります。さらには腸管子宮内膜症をはじめとする稀少部位性内膜症などでは他科との連携も重要です。本セッションでは、集学的なアプローチを始め、様々な手術手技を網羅したく、婦人科のみならず、様々な科からのご演題を期待しております。

センチネルリンパ節（SN）とはがん原発巣からのリンパ流が最初に流れこむ1次リンパ節のことで、理論上SNに転移がなければそれより下流のリンパ節にも転移はないため、系統的リンパ節郭清の省略が可能となる（SNNS: SN navigation surgery）。乳癌や悪性黒色腫ではすでにSNNSが保険適用となり、術後リンパ浮腫の激減を通して患者QOL向上に寄与した。近年、子宮頸癌、体癌および外陰癌などの婦人科癌でもSNNSの有効性が報告され、NCCNはじめ海外のガイドラインで推奨されているが、本邦では未だ保険適用になっていない。近年腹腔鏡手術（腹腔鏡手術、ロボット支援手術）における近赤外線イメージングの技術向上は目覚ましく、ICGを用いたSNNSとの併用は更なる低侵襲化を実現すると期待されている。本ワークショップでは本邦の婦人科癌に対する腹腔鏡SNNSの現状について整理し、保険収載にむけた展望に関し活発な意見交換を行う。

呼吸器外科領域において、ロボット支援肺癌および縦隔腫瘍手術が保険収載され、多くの施設で導入が始まっている。ロボット支援手術はまだ歴史も浅く、これから我々が発展させていく手術手技である。本シンポジウムでは、ロボット支援手術の経験を皆で共有し、これから始める施設も含めて安全な導入、実践の助けになれば良いと考えています。ロボット支援手術の導入、経験、手術手技、初期成績などについて活発な討議を期待します。

開胸手術のみならず胸腔鏡手術においても術後の肋間神経障害は発生する。したがって、術後疼痛対策として使用するポート数の減少や機器の細径化による胸壁に対する低侵襲化は他の領域にも増して重要である。一方では、悪性疾患にいたっては根治性を維持すること、優先することは言うまでもない。単孔式胸腔鏡手術やダヴィンチ手術を含めたReduced Port Surgeryにおいて、根治性と低侵襲性、整容性の面から論じていただき、その優位性を導きたい。

縦隔腫瘍を含めた縦隔疾患に対する胸腔鏡⼿術は、体位や⼈⼯気胸の有無、使⽤する⼿術器械やエネルギーデバイスなど、通常の肺癌に対する胸腔鏡⼿術と異なる点が多い。本セッションでは、胸腔鏡下縦隔⼿術のノウハウやピットフォール、そしてリスクマネージメントも含めて、各施設の経験と症例を持ち寄ってご討議いただきたい。また、悪性縦隔腫瘍に関しては、周術期の安全性のみならず、遠隔期成績も併せて胸腔鏡下⼿術の有⽤性を議論していただく予定である。

呼吸器外科領域では2018年4月より肺癌と縦隔腫瘍に対するRATSが保険適応となり、急速に普及が進んでいる。しかしながら、VATSとRATSはともに低侵襲手術であり、共通点も多い一方で、RATSがVATSを凌駕するベネフィットは現時点においては明らかにされていない。実臨床において、RATSとVATSをどのように住み分けていくのか、あるいは適応をどうするのか、それぞれのメリットとデメリットを指摘しながら議論をしていただきたい。

気胸に対する胸腔鏡⼿術は開胸⼿術に⽐べ侵襲が⼩さく、⾼リスクな続発性気胸症例への⼿術適応が拡がっている。⼀⽅、気胸⼿術においては、⾃動縫合機の功罪を念頭に置いた様々な⼯夫、付加処置、アプローチがなされている。しかしながら、標準的な術式は未だ定まっておらず、術者や施設の経験に基づいた治療戦術が取られているのが現状である。本ワークショップでは、今後の診療への架橋になるべく、様々な気胸に対する胸腔鏡⼿術の経験や成績を供覧して頂きその理解を深めたい。

胸腔鏡下手術は各施設で標準化されつつある。どのような立体的膜構造があり、どの程度の張力をどの方向に効かせるのかなど、術野の展開や基本的剥離は比較的容易に教育または修得可能となった現在と言えよう。
同様なことが円滑に行い難い症例に対しても、種々の変遷を経ながら適応は拡大されてきた。そこには各々の、時には苦い経験とそれを克服してきた創意工夫がある。「なぜそうするのか？」を理解し、「もっと良い方法は？」と考え議論する場を提供することで、胸腔鏡手術が更に洗練されていく機会となることを期待する。

肺の解剖学的特徴は、肺血管と気管支が立体的に分岐・交差することにある。3D-CT画像による術前評価はその立体構造の把握に有用である。従来の胸腔鏡による手術では、2D画像の視覚情報を基に立体的な臓器に手術操作を加えるため、eye-hand co-ordinationは容易でない。血管鞘剥離などの繊細な手術操作は更に難易度が高くなる。近年開発された3D胸腔鏡では、立体視と奥行きの把握が可能となり、より繊細な手術操作を施行できる可能性がある。本ワークショップでは術前および術中に3D画像を駆使することにより、安全な胸腔鏡手術を行うための有用性と工夫について論じて頂きたい。

「小児鼠径ヘルニアに対する腹腔鏡下鼠径ヘルニア手術は、現在、小児鼠径ヘルニア手術の約40%を占めるまで普及している。オリジナルのLPEC手技を基本として、それぞれの施設において、適応拡大（advanced LPEC法など）、さらなる低侵襲を目指した工夫（SILPECなど）、再発・合併症を防ぐ工夫、および日帰り手術の導入などが行われている。このセッションでは経験豊富な施設にその工夫やこだわりを動画でご提示いただき、会場内の参加者の方々と共に、安全で確実な小児のLPECのポイントについて議論して頂きたい。」

小児の噴門形成術に腹腔鏡が導入され、本学会技術審査の未編集DVDに腹腔鏡下噴門形成術が採用されてから10年が経過しました。いまやほとんどの施設で腹腔鏡下噴門形成術が施行されており、各施設で術式の定型化が進んでいると思われます。そこで各施設の定型化された腹腔鏡下噴門形成術の術式を報告して頂き、その長所・短所（困難なところ）を共有できればと思います。
また近年では、腹腔鏡下噴門形成術の再発率が開腹手術に比べて高いという報告が、海外からも散見されています。術後再発には様々な要因があると思われますが、われわれ外科医は少しでも再発が少ない手術を行う必要があります。各施設の再発防止に対する考えや術式も合わせてお示し頂ければ幸いです。

胸腔鏡下食道閉鎖症手術は保険収載されて以降、多くの施設で適用が進められている。しかし、食道閉鎖症は新生児期に手術を行う必要があるため、体格が小さくワーキングスペースが狭い。また脆弱な食道の吻合を行うため技術的難易度が非常に高い。またwide gap症例に対する対応や合併奇形の有無による手術適応、新生児麻酔など多くの問題があり、内視鏡手術を導入している施設のいずれでも実施できる術式とは言えない。本パネルディスカッションでは、各施設で行っている工夫や盲点(knack & pitfalls)などについて詳細なvideoを提示していただき術式の標準化や手術手技の進歩を目指して議論を進めたい。

先天性横隔膜ヘルニアに対する内視鏡手術は、遅発例に対しては有用性が認められているが、様々な重症度を呈する新生児例に対しての有用性や適応基準は未だ明らかではない。また、腸回転異常症や腸閉鎖症などの腹腔内病変にどのように対応するかという点についても議論が残る。さらに、胸腔鏡手術では再発が多いという報告が少なからずあり、手術手技そのものについての検討も必要である。開放手術移行、術中合併症、再発などの検討も含め、先天性横隔膜ヘルニアに対する内視鏡手術の課題とその対策について議論したい。

先天性胆道拡張症に対して腹腔鏡下手術が多くの施設で行われるようになっている。しかし胆管拡張形式や膵・胆管合流形式により胆管剥離・切除と肝管空腸吻合の難易度も異なってくる。また胆管や血管系の破格もしばしば経験することから、本症に対する腹腔鏡下手術では開腹手術とは違うpitfallもあるものと思われる。演者には、各施設における工夫や注意すべきpitfallなど述べて頂きたい。

胆道閉鎖症に対する腹腔鏡下葛西手術は2018年に保険収載されたが、施設基準が設けられているため、現段階では多くの施設で腹腔鏡手術は行われてはいない。世界的にも葛西手術を腹腔鏡下で行うことに関してまだコンセンサスは得られていないが、最近の多くの報告では、腹腔鏡手術によって減黄率が悪化しないことは示されてきた。このセッションでは葛西手術を開腹もしくは腹腔鏡で行うことに対しての利点、欠点をそれぞれの視点で論じて頂き、今まで明らかになっていること、今後明らかにするべきことを確認し、理想的な手術方法の確立に向けての一助となることを期待している。

腹腔鏡下鎖肛根治術は、2000年のGeorgesonの報告以来、多くの症例が積み重ねられており、中長期成績の報告も認めるようになっている。当初は高位のみに適応されていたが、現在では施設によっては中間位症例にも適応されるようになっており、PSARPとの比較の論文も散見される。映像機器の発達と拡大視効果により、骨盤最深部へのアプローチや括約筋の視覚化が可能となった一方、瘻孔処理の不確実性と直腸脱・粘膜脱などの技術的課題が十分に解決されているとはいえない。本セッションでは、各施設の適応基準と手術手技、合併症に対する技術的工夫、そして中長期成績のいずれかの観点で演題を募集し、今後の手術成績の向上につなげたいと考えている。

小児水腎症（腎盂尿管移行部通過障害）に対する腹腔鏡下腎盂形成術は、開放手術と同等の有効性や安全性を認める。また、審美性に優れ、疼痛も少ない低侵襲手術である。本手術のアプローチ法は、経腹膜アプローチ（腹腔鏡）と後腹膜アプローチ（後腹膜鏡）がある。いずれも一長一短があり、いずれがよいかの明確なエビデンスはない。本ワークショップでは、「小児水腎症に対するアプローチ法（腹腔鏡vs後腹膜鏡）」と題し、本手術のエキスパートに術式をご紹介いただき、それぞれのアプローチ法の利点・欠点について議論を深めたい。

内視鏡手術は、その周術期管理においてERAS (Enhanced Recovery After Surgery) プロトコールが導入されることにより、さらに安全で低侵襲になると考えられる。ERASの実践のためには、医師、看護師のみならず多職種のメディカルスタッフからなる周術期管理チームの有機的な取り組みも重要であると考えられる。本セッションでは、内視鏡手術に求められる周術期管理チームの果たすべき役割とその実践、さらに成果について議論していただきたい。

近年の医療技術の進歩により、外科的手術は低侵襲の内視鏡的手術が主流となっております。あわせて手術医療材料の種類も増加し医療材料費も高額なものになっています。数多くある医療材料の中で、外科医師は診療科や医師ごとに材料を選定し使用しています。選定には外科診療科や医師ごとに使用する材料が違うことから、外科医師が医療材料の選定理由や選定判断などについてお話いただきたいと思います。また、厚労省は2017年に単回使用医療機器の「再製造」に関する新しい制度をシステム化する方向で進めています。今後再製造品が流通した際に外科医として再製造品の適正使用についてのご意見をいただきワークショックでディスカションしていきたいと思います。