この度、第81回総会学術大会の大会長を仰せつかりました岩永秀幸と申します。今回の大会テーマは「Radiology for Everyone」としております。今回のテーマはシンプルに英語のみです。あえて日本語に訳するなら「すべての人のための放射線医学」となります。
皆さんはどのような” Radiology ”を想い浮かべられるでしょうか? 私が医療における放射線技術に携わるようになった39年前は、” Radiology ”と言えば、CT・核医学・血管撮影はあったものの、放射線診断のX線写真が主流であり、放射線技術の原点と言える時代でした。銀粒子を使用したアナログフィルムと増感紙を組み合わせて撮影し、暗室で自動現像機にフィルムを流して、現像、定着、水洗、乾燥の4工程を経て、1枚の写真が出来上がる。当時は、この4工程が90秒で出来るだけでも画期的な時代でした。また、現像液を調製するときに飛び散った薬液が酸化して変色するため、白衣を見れば診療放射線技師と分かる時代でした。現在では、白衣に薬剤のシミを見ることもなくなり、職場の匂いや音、そして撮影室の空間も大きく変わりました。時代の進歩は激しく、X線写真はアナログ時代からデジタル時代へと大きく変貌し、今では、”写真”ではなく”画像”と言う言葉が定着しています。これらの進歩は、放射線に関係する多くの理学・工学者の研究成果がもたらした「 Radiology for Everyone 」と言えると思います。まさに、JSRTが探求してきた“放射線技術学”の成果と言えるでしょう。
この歴史的な進歩を考える中、もう1つのテーマとして「原点回帰」を掲げ、アナログ時代を振り返りながらディジタル時代への移行で得たもの、失ったものについて技術的な視点から再考し、近未来に急速に進むであろう人工知能(AI)や医療DXを皆さんと一緒に考える大会にしたいと考えています。
さて、JRC2025のポスターをご覧頂けましたでしょうか? 本大会のJRS、JSRT、JSMP、各団体の大会長の想いが至る所に沢山詰まったポスターになっています。医師、患者、地方、遠隔医療、家族、ロボット手術、正当化、Society 5.0、横浜と多くの想いをこの小さな空間に詰め込めています。じっくりと見て頂き、「 Radiology for Everyone 」を感じて頂ければ、幸いに存じます。
さて、今回のシンポジウムを紹介しますと、JRC合同シンポジウムでは、「Green Radiology」、「医学物理学のSociety5.0への貢献」、「ゲノム診療を考える:未来医療における放射線診断・治療方法の変革」の3つがあり、それぞれの観点から「Radiology for Everyone」を考えるシンポジウムになっています。日本放射線技術学会のシンポジウムは,「DRLs2025 and beyond -放射線技術学会が取り組むべき課題-」、「人工知能の軌跡と奇跡 -医療の未来への新たなるステップ-」、「放射線医療技術を取り巻くエポックメイキング 放射線技術分野の変革点(過去・現在・未来)」の3つを開催します。また、今回は各分野のご著名な先生とランチを楽しんで頂けるように18セッションのランチタイムレクチャーを準備しております。その他、各専門部会の教育講演やシンポジウムを企画しております。嬉しいことに本大会に多くの日本語の発表演題を頂きました。今回、会場を拡張しつつ皆さんの発表場を優先し、木曜日の午前中からセッションを構成しております。ご参加いただき多くの熱い議論を期待しております。ハンズオンセミナーは、ノーコードでのAI技術開発・クラウド環境のAI開発を計画しております。また、マリンロビーでは、線量計作成セミナーも開催します。ご興味がある方は、お早めにご応募下さい。
一方で、本大会と平行して開催しているJSRT-JSMP合同企画のInternational Conference on Radiological Physics and Technology (ICRPT)はご存知でしょうか? ICRPTは、日本放射線技術学会が先導する最先端の放射線技術学研究を世界に伝えたいという願望から,日本医学物理学会と共同で運営している国際発表大会です.本大会、4th-ICRPTを開催することになりました。502室に座れば1日中、英語発表、英語での質疑応答を体験することができます。JRC2025に登録していれば無料で参加できます。回を重ねるごとに、少しずつですが502室に多くの方の後ろ姿を見ることができ、国際学会としての発展を期待するところです。本大会には、国外問わず多くの英語発表演題を頂きました。502室だけでは全演題発表ができず、一部の演題は419室で行います。ぜひ英語セッションにも足を運んで頂ければと思います。
今年もハイブリッド形式で開催し、教育講演やシンポジウムなどはオンライン配信を行う予定です。会場で参加できなかった貴重な講演などはオンデマンド配信でもご閲覧頂けます。情報として、今回より予稿集は完全電子化となります。予稿集(冊子)の事前配布はありませんのでご注意下さい。
最後に、パシフィコ横浜にご参集頂き、多くの熱い議論や新たな出会いが生まれるそんな大会になることを祈念しております。
実行委員一同、パシフィコ横浜で皆さんをお迎えできることを楽しみにしております。