会長 宮本 享(京都大学 脳神経外科)
一般社団法人日本脳神経外科学会 第78回学術総会を2019年10月9 日(水)〜12日(土)の4日間にわたり、大阪国際会議場(グランキューブ大阪)にて開催させていただきます。伝統ある本総会を担当させていただくことを大変光栄に存じております。
さて、学会を企画するにあたり、日本脳神経外科学会学術総会について考えてみました。指定演者による生涯教育を目的とする日本脳神経外科コングレス総会との違いはなにか、各サブスペシャリティー領域において発展してきた分科会の学術集会との違いはなにか、ということを考えました。また、現在の日本脳神経外科学会学術総会の課題とは何かということも考えてみました。日本脳神経外科学会の隆盛を示すように、学術総会は今や多くの演題が発表される大きな学会となりました。しかしながら、多会場で複数のシンポジウムなど重要なプログラムが同時並行して進行するため聴衆が分散してしまい、会長が渾身で企画したプログラムを十分に聴講できないということが少なくありません。せっかく素晴らしいプログラムが用意されているのに、会員が聴講できず大切な情報や問題意識を共有できないのは不都合な真実です。多会場でプログラムを同時進行せざるをえない大きな原因のひとつは、応募演題がほぼ全て採択される現状です。その副作用としては、会員が学術総会で応募した演題が採択され発表できても、それについて誇りや喜びあるいは責任を感じなくなってしまっているのではないかと思います。かつて採択率が低かった時代には、次年度の総会に出席するための目標をたてて、1年間かけて演題応募の準備をしたものでした。時間をかけて演題応募を計画しなくなったということは、多くの会員がClinical QuestionやResearch Themeを常に考えていないという可能性を示唆しており、これは脳神経外科の発展にとって由々しきリスクでもあります。
以上のように「総会ですべきこと、総会でしかできないこと」とは何かを考えた結果、それはやはり原点への復帰すなわち「採択され発表できることに誇りと責任を感じるようなプログラムを会員が主体となり作っていくこと」ではないか、そしてそのプログラムを通じて会員として共有すべき知識や問題意識を獲得していくことではないかという結論に至りました。
そこで、最近のあり方から見ればいささか異例ではありますが、第78回総会では“会員による会員のための総会”をめざして、あえて主題を設定しないことにいたしました。
第78回総会では演題募集時にはシンポジウムの設定を行なわず、優れた一般応募演題からシンポジウムを作成していく方針にいたしました。口演採択率は応募演題の25%を想定しておりますので、厳正適格な査読プロセスが不可欠となります。このため、仙台で行われた第77回学術総会の最終日にプログラム委員の皆様にご集合いただき、第78回のコンセプトや査読についての意識を共有していただきました。シンポジウム企画の提案についても会員から公募することにいたしました。
他の診療科では基礎学術集会を開催している学会もあります。我々の未来の扉を押し開けるためには基礎研究の重要さは言うまでもありません。このため、第78回総会では基礎学術企画を予定しており、基幹施設長からの推薦による公募を行い、あらかじめ指定された各領域からの演者による基礎的研究に関するセッションを予定しております。
学術総会は専門医領域講習の単位をひとりあたり最大12単位取得可能とされていますが、プレナリーセッションやランチョンセミナーなどのみが単位認定対象セミナーとなっているため、従来のように会期3日間のみで12単位の対象セミナーを企画することはプログラム構成上大変難しいのが現実です。このため、第78回総会は会期を4日間とし最終日の10月12日(土)の午前中にプレナリーセッションで教育ビデオセミナー「サムライの頭脳と技術」を開催し同セミナーだけで4単位取得できるように予定しております。このセミナーではmicrosurgery, IVR, endoscopic surgeryの3セッションにおいて単に手術手技だけを供覧していただくのではなく、術前にどのように治療戦略をたてて、術中どのように考えて手術をしたかという症例検討方式での教育的な内容を想定しております。
機器展示については単なる企業展示だけでなく、テーマ展示「未来の病院」を計画しております。
“会員による会員のための総会”となりますよう会員の皆様には、奮ってご応募、ご提案そしてご参会いただきますようお願い申し上げます。