第122回日本耳鼻咽喉科学会総会・学術講演会の開催にあたって
会長 大森 孝一
京都大学大学院医学研究科 耳鼻咽喉科・頭頸部外科学 教授
この度、第122回日本耳鼻咽喉科学会総会・学術講演会を京都大学耳鼻咽喉科・頭頸部外科学教室が担当させていただくことになり、2021年5月12日(水)から5月15日(土)に国立京都国際会館で開催いたします。大変光栄なことであり、参加していただく会員の皆様にとって有益な会となり、本学会の発展に貢献できるよう教室員一丸となって、鋭意準備を進めております。
日本耳鼻咽喉科学会は1893年(明治26年)に創立され、127年経った現在は会員数が11,000名余りとなっております。日本耳鼻咽喉科学会総会・学術講演会には多くの会員が参加し、最近では第121回の参加登録者数は5,000名を超えており、これは会員のおよそ半数にあたります。このような学会の発展は先人の努力の上に成り立っているものと感謝しております。
新型コロナウイルス感染症の流行は100年に一度のpandemicと言われており、世界では医療や社会に劇的な変化が生じています。1918年(大正7年)~1920年(大正9年)にスペイン風邪が流行しましたが、日本耳鼻咽喉科学会の前身の大日本耳鼻咽喉科会総会は、1918年に東京、1919年に福岡、1920年に東京で開催されました。流行が収束した後の1921年には宿題報告「インフルエンザと耳鼻咽喉科疾患」として、(1)大正9、10年に於ける「インフルエンザ」後、耳鼻咽喉科疾患罹患患者統計(山川強四郎教授)、(2)「流行性感冒に於ける我専門領域の合併症に就て」(中村登教授)が報告されています。
100年経過した現在において、耳鼻咽喉科診療や学会の在り方を見直し、withコロナ、afterコロナ時代に向けての対応と改革が急がれます。危機の時代ではありますが、「患者さんのため」という診療の本質は見失わず、そして、環境の変化に対応して私たち自身が「進化」していく必要があり、会員の英知を結集して新たな耳鼻咽喉科を「共に創って」いきたいと思っています。
第122回学術講演会では、宿題報告として、岩手医科大学の佐藤宏昭教授が「急性感音難聴診療の新展開」を、東北大学の香取幸夫教授が「嚥下障害治療の開発―医学、歯学、工学の連携―」を講演されます。いずれも重要な課題であり、また東日本大震災で被災された両大学が途切れること無く取り組んでこられた研究の集大成をお聞かせいただけるものと楽しみにしております。
耳鼻咽喉科は、耳科学、鼻科学、咽頭喉頭科学そして頭頸部外科学の研究と教育、医療と福祉を担う診療科で世界的には耳鼻咽喉科・頭頸部外科と称されています。今回の学会では、それぞれの専門領域における医学の進歩、デジタルトランスフォーメーション(DX)、認知症との関連、栄養管理と腸内細菌、次世代人材育成、10年後の耳鼻咽喉科、他診療科の進歩や多職種との連携をテーマにしたシンポジウムを予定しています。また、各専門領域の教育講演や手術手技セミナーでは臨床最前線の情報が得られ明日からの診療に直結する内容になるものと確信しています。領域が多岐に亘り診療形態も様々ですので、会員の皆様の多様なニーズに応えることができるよう、多彩なプログラムを計画しています。
2021年の本学会では現地開催に加えて、DXを実現する新たな学会運営としてオンライン開催も併用いたします。参加登録方法、単位申請方法、発表スライドのアップロードなどご不便をおかけする部分もあろうかと存じますが、オンデマンド視聴では現地開催終了後にゆっくりとご自宅で見て頂くことも可能です。本学会が新たな変革の時代の扉を開ける会となるように、皆様のご協力、ご理解をお願い申しあげます。
5月の京都は葵祭りの祭儀がおこなわれる新緑がまぶしい季節です。学会への多数の演題応募をお願いしますとともに、ぜひ多数の方々に京都に足をお運びいただきますようお願い申し上げます。多くの皆様のご参加、ご登録をお待ちしております。