
第79回日本胸部外科学会定期学術集会
会長(心臓) 小野 稔
東京大学 心臓外科
- 第79回日本胸部外科学会開催にあたって -
大変光栄なことに、京都国際会館で第79回日本胸部外科学会学術集会を心臓分野担当として、呼吸器分野の京都府立医科大学井上匡美先生、ならびに食道分野の浜松医科大学竹内裕也先生とともに開催させて頂くこととなりました。3分野における診断・治療技術の高度化・専門化の流れの中、3分野の独自性を維持しながら、各分野の最先端に触れることができる学術集会を実現するために、統括会長を設けない3分野が対等に運営を行う最初の学術集会です。今回のテーマを「胸部外科の新たな時代へ~Over the Horizon~」と致しました。各分野における新たな知見ならびに治療戦略が次々と展開されていく時代の中、本学術集会において10年先を見据えた展望を見通すことができる学術集会としたいとの3会長の強い決意を込めています。同時に、胸部外科学会として協調体制を原則としながら、3分野の独自性を遺憾なく発揮していく思いが詰まっています。
心臓大血管の分野における新しい技術とデバイスの開発、さらには人工知能の導入と展開は急速に進んでいます。先進的な心臓大血管治療を牽引する多くの先生方を世界各国から招待致します。お呼びする先生方は、日本からの多くの留学生を受け入れて頂いた経験をお持ちで、日本の外科医の勤勉さと謙虚さとともに、丁寧な技術を理解して頂いています。お呼びする先生方は皆さんとてもフレンドリーです。この機会に是非とも日々の臨床に活かせるノウハウを学び取って頂きたいと思います。独自のノウハウを構築して素晴らしい手術成績を挙げている国内施設も複数あります。これらの施設の発表には多くのヒントが隠されています。大いに学び取って頂ければと思います。
外科医の不足が叫ばれる今、皆さんには大いなるステップアップの地平が広がっています。タスクシェア・シフトの導入と拡大によって、外科医がすべき業務に集中しやすい環境がますます浸透していくことは確実です。また、施設拠点化が進むことによって経験できる手技が増え、1人当たりの業務負担は軽減されていくに違いありません。待遇改善が進めば、外勤の時間を削減し、研究の時間を取ることができるようになるでしょう。
秋の京都は見どころ満載です。日頃の忙しい臨床から解放され、同窓生や同級生と和やかな時間を過ごして頂き、最高の思い出の学術集会にして頂ければ幸いです。

第79回日本胸部外科学会定期学術集会
会長(呼吸器) 井上 匡美
京都府立医科大学 呼吸器外科学
この度,第79回日本胸部外科学会定期学術集会呼吸器分野会長を拝命いたしました.伝統ある本学会は,今回より,従来の統括会長および分野会長による運営から,心臓・呼吸器・食道の3分野会長制に変わります.これまで以上に,それぞれの分野が独自性を発揮しつつ,小野稔心臓外科分野会長・竹内裕也食道外科分野会長とともに,ひとつの胸部外科学会としてメッセージを発信できればと考えております.“胸部連合外科学会”ならではの分野領域横断セッションにはぜひご参加ください.
学会のテーマ「胸部外科の新たな時代へ~Over the Horizon~」を記したポスターには男女の胸部外科医とメディカル・スタッフが夜明けの水平線を眺めながら何か話をしています.癌薬物療法の進歩とこれに伴う局所進行癌に対する拡大手術,低侵襲で精緻なロボット手術をはじめとした技術革新,社会構造的な患者の高齢化に伴う併存疾患と周術期合併症の管理,自己免疫原性を伴うことがある胸腺腫瘍の病理・病態と低侵襲手術の長期成績,再発率の高い若年性気胸と高齢者の難治性気胸,肺移植分野の新しい技術,ワーク・イン・ライフ時代の外科医教育・研究,海外・国内留学の意義,など,様々な課題について,将来を見据えながらベテランから中堅・若手を交えて活気あふれる議論ができるプログラムを作っております.私は,外科医の絶対的基軸である技術論に加え,病理学・腫瘍学・免疫学・生理学・分子生物学などを踏まえた「胸部外科学」を目指して轍を刻むことが,後進にとって尽きない興味と夢のある胸部外科分野の発展につながってゆくと信じております.
京都での開催は,2019年伊達洋至京都大学呼吸器外科学前教授が第72回総会を主催されて以来7年ぶりとなり,京都府立医科大学として初めて担当いたします.紅葉にはまだちょっと早い季節ですが,風薫る秋の京都にぜひ足を運んでいただき,学会場である京都国際会館での熱い議論に加え,古都の散策と味覚・美酒を満喫してください.そして,学会から帰路には,胸部外科医になってよかった,と実感していただける学会にしたいと思います.皆様のご参加を心よりお待ち申し上げます.

第79回日本胸部外科学会定期学術集会
会長(食道) 竹内 裕也
浜松医科大学 外科学第二講座
このたび第79回日本胸部外科学会定期学術集会食道分野会長を拝命いたしました。歴史と伝統を誇る本学術集会を担当させていただきますことは身に余る光栄に存じます。今回より統括会長制から3分野会長制となりましたが、心臓 小野 稔会長、呼吸器 井上匡美会長とともに日本胸部外科学会のさらなる発展に向けて、3分野がそれぞれの独自性を打ち出しながらもより強力に連携・統合するよう準備を進めております。開催にあたり多くの先生方のご支援、ご協力を賜りますことに心より御礼申し上げます。
食道外科は胸部外科のみならず消化器外科、頭頸部外科にまたがる領域にあり、頸部から腹部まで広い範囲の手術に加え、特殊な周術期管理を要するため、高度な技術や経験を必要とします。近年食道癌治療は、低侵襲手術としてのロボット支援手術や縦隔鏡下手術、免疫チェックポイント阻害剤を含む集学的治療とコンバージョン手術、そしてAIやリキッドバイオプシーなど著しい進歩を遂げております。今回学術集会のテーマは、「胸部外科の新たな時代へ ~Over the Horizon~」ですが、食道外科はまさに“新たな時代”に突入しようとしております。
今回食道分野の主題演題として、ロボット支援食道切除術の手術手技と治療成績、cT3br/T4食道癌に対する治療戦略、食道癌・食道胃接合部癌に対するconversion surgeryの適応とpitfall、食道切除後胃管再建 Ivor Lewis vs McKeown、超高齢者食道癌に対する治療方針、縦隔鏡下食道切除術におけるトラブルシューティング、ロボット支援手術時代における若手食道外科医の育成、胃管作製と吻合法の工夫など、いま最も旬なトピックを取り上げました。また、左反回神経周囲リンパ節郭清の未編集ビデオを用いたビデオクリニックや、毎年恒例の食道困難症例検討会、日本胸部外科学会/日本食道学会/日本内視鏡外科学会共同企画「食道外科専門医・JSES技術認定合格を目指して」など盛りだくさんの企画を用意しております。
領域横断セッションも数多く企画いたしました。心臓、呼吸器、食道の3分野の先生方がその経験や技術を共有することで、胸部外科学会ならではの新たな知見や成果が発信されることを楽しみにしております。また領域を超えた交流により、ご参加の先生方がたくさんの新しい友人をつくられ、ともに京都の夜の街に繰り出していただければ望外の喜びです。
実りある2026年秋になりますよう3会長が協力して学術集会を盛り上げ、おもてなしさせて頂きます。一人でも多くの先生方に演題登録していただき、ご参加賜りますようよろしくお願い申し上げます。
