Symposium

ごあいさつ

国際交通安全学会は、1974年の設立以来、交通とその安全を中心とする研究調査を活動の基軸に据え、望ましい交通の実現を目指してまいりました。世界の交通を取り巻く環境は大きく変貌し、環境、エネルギー、自然災害、社会福祉などの諸領域において実践的な取り組みが求められています。異なる地域や国の特性や文化的背景に即して交通の役割を検討することが、ますます重要になってきました。

 

当学会の活動は、このような観点に立ち、学術の領域だけではなくすべての交通に携わる関係者が参画する「超学際性Transdisciplinary」を重視しています。その一環として、2015年より毎年、国際フォーラムGIFTS(Global Interactive Forum on Traffic and Safety)を定例開催し、持続的な「知の共創」の構築を目指してきました。第6回となる今回は、内外の有識者ならびに国際機関の実務者の方に参画いただき、新型コロナ感染症の拡大を踏まえたポストコロナ社会のあり方を念頭に置きつつ、世界の国・地域における持続可能な交通社会の構築に向けて、解決すべき諸課題や、将来に向けた方策について参加された皆様とともに討議を行います。

 

皆様の積極的なご参画をお願い申し上げます。

 

国際交通安全学会
会長 武内 和彦

 

 

交通文化の多様性と安全軽視行動

今日、大気汚染等の環境問題をはじめ、交通とそれを取り巻く問題は深刻化を増している。とりわけ交通事故による死者数は年間135万人を超え、きわめて憂慮すべき状況が続いている。このうち死者数の9割を構成する中低所得国においては、将来社会の中核となるべき子供・若年層の死亡原因の第一位が交通事故である。さらに、このような国の多くの人々は通勤手段として安全で安価な交通手段を得られておらず、経済的・社会的な発展の障壁となっている。同時に、先進諸国においても死傷者数の削減は頭打ちとなっており、交通事故死者数ゼロに向けて新しい交 通システムの構築に取り組むことが必要である。

 

そもそもどの国・地域においても特有の価値観や宗教、生活信条や社会制度が見られるが、これが交通参加者の規範的な信念や行動、法令や行政組織の基盤であり、これらの文化的要因が交通事故や交通混雑への許容度などに影響を与えている。したがって、交通事故を理解し、削減しようとする場合、特に国家間で比較を行うのであれば、文化による影響というものを評価し分析することが重要である。このような観点から、本シンポジウムでは、研究者と実務者により「交通文化」の定義とその範囲を明確にし、道路利用者の行動と交通安全の関係者の活動を探っていくとともに共通の言語と交通安全文化の理解を推し進め、交通事故の削減へむけて世界各国で協働することが望まれる。ここでの議論の成果が、これまで以上に有効な交通安全施策を正しい優先順位で実施するための端緒をひらくことを期待する。

 

なお、現在世界中で甚大な被害を引き起こしている新型コロナウイルスの感染は、人々の生活における安心や安全を大きく脅かしている。こうした感染の拡がりは、グローバル化が進む今日の世界では避けることが難しいと考えられる。しかしながら、それと同時に、人々の意識や行動が変容することで、感染拡大に対して一定の歯止めをかけることができることも事実である。そうした人々の行動ならびにそれを支える価値観を考えるうえで、「文化」の問題は非常に重要である。もちろん、今回のGIFTSにおいて、新型コロナウイルスの問題を直接的に論じることは基本的にないかもしれないが、安全で安心な社会のあり方を探究するうえで、いま世界中で起こっている現象を無視して議論することもできないと考える。本シンポジウムでは、こうした問題意識を共有しながら、参加者たちが多様な議論を交わすことを期待している。

 

開会挨拶 武内 和彦
趣旨説明 北村 友人
     
講演+パネリスト ソームズ・ジョブ Soames Job  
講演+パネリスト ジョージ・ジアニス George Yannis  
講演+パネリスト スザンナ・ザマタロウ Susanna Zammataro  
講演+パネリスト ニコラス・ウォード Nicholas J. Ward  
司会 北村 友人
閉会挨拶 鎌田 聡
   
タイムテーブル
13:30 - 13:35   開会挨拶
13:35 - 13:40   趣旨説明
13:40 - 15:00   講演
15:00 - 15:20   休憩
15:20 - 16:20   パネルディスカッション
16:20 - 16:25   閉会挨拶

開会挨拶

 

趣旨説明

武内 和彦

IATSS会長
地球環境戦略研究機関(IGES)理事⻑
東京大学特任教授

 

北村 友人

IATSS会員/国際フォーラム実行委員会委員⻑
東京大学大学院准教授

講演 + パネリスト

*以下、アルファベット順
 

ソームズ・ジョブ  Soames Job

世界銀行、GRSF・GLRS局長

●略歴
ソームズ・ジョブ博士は世界銀行においてグローバル交通安全施設の責任者であり、交通安全のグローバルリーダー。ソームズは交通安全分野の教授を務める傍ら、交通安全における政府導組織を成功裏に導いてきた。また、様々な開発銀行、国連、国際標準化機構(ISO)、経済協力開発機構(OECD) などのコンサルタントを行い、90 以上の国や州へ交通安全のガイダンスを提供してきた。 前職としてオーストラリアGlobal Road Safety Solutions 社のCEO の役職を含め、オーストラリア国家交通安全委員会理事、ニューサウスウェールズ州交通安全センター長、オーストラリア交通安全カレッジのフェロー及び学長、全国交通安全管理グループ議長、オーストラリア新車分析プログラム(ANCAP)副会長、シドニー大学安全衛生心理学研究ユニット長など。主にチームの一員として交通安全の分野において国の内外で25の賞を受賞、また400 を超える学術的著作がある。


 

ニコラス・ウォード Nicholas J. Ward

モンタナ州立大学教授、安全衛生文化センター長

●略歴
ニコラス・ウォード教授は安全衛生文化センター長であり、モンタナ州立大学の工学部ノーム・アスビョルンソン(人名)カレッジで産業及び管理システム工学の教授。カナダのキングストンにあるクイーンズ大学で組織心理学(人的要因)の博士号を取得。同センターでの彼の役割として、共同研究者のネットワークを構築し、センターの持続可能なビジョンを考案、センターを大学の使命に合わせる責任を担っている。彼はまた、主任研究員(PI)を務め、複数のプロジェクトでリーダーシップと専門知識を提供している。
ウォード教授は道路交通安全文化に関するTRB(輸送調査委員会)小委員会の初期メンバーで、全米死者数ゼロ戦略の共同執筆者であり、安全システムを構築するための基盤として交通安全文化の推進に関する国際的リーダーとして認められている。
モンタナ州ボーズマンに在住。余暇には、旅行、ラフティング、美味しい食事、友人や3匹の犬との時間を楽しんでいる。


 

ジョージ・ジアニス George Yannis

アテネ国立技術大学(NTUA) 教授

●略歴
ジョージ・ジアニス教授はアテネ国立技術大学(NTUA) 土木工学部の輸送計画及びエンジニアリング部部長。専門は交通安全マネージメント、特にデータの管理および分析に重点を当てている。
30 年以上にわたり、260 以上の調査にエンジニアリング・プロジェクト及び研究に携わり、また欧州委員会やその他の国際機関(UNECE, OECD, WHO, World Bank, EIB, CEDR, ERF,IRF, UITP, ETSC, ECTRI, WCTR, TRB) においてさまざまな科学委員会に幅広く貢献してきた。
彼はまた600 以上の科学論文(科学ジャーナル誌には182)を発表、広く世界中で引用されている。 詳しい情報についてはこちら:www.nrso.ntua.gr/geyannis


 

スザンナ・ザマタロウ Susanna Zammataro

国際道路連盟(IRF) 事務局長、ジュネ―ブ

●略歴
スイスのジュネ―プにある国際道路連盟(IRF) の局長として、組織の戦略計画の開発とその実施を担う。1948 年に設立されたIRF は会員制の組織であり、その使命はあらゆる人がアクセスでき、持続可能なモビリティを実現できるような道路及び交通網の開発を促進することである(www.irfnet.ch)。
最近ではTUMI (Transformative Urban Mobility Initiative)により「輸送における最も注目すべき女性40 人」の1 人に選ばれるなど彼女は交通安全の不屈の代弁者である。彼女はまた交通安全に関するFIA( 国際自動車連盟) ハイレベルパネルの諮問委員会のメンバーであり、2012 年より国際協力を促進し国際的および地域の調整を強化することを目的としたグローバルマルチステークホルダーのパートナーである国連交通安全協力(UNRSC)グループの柱、「より安全な道路とモビリティ」の共同議長を務めている。

司会

 

北村 友人

IATSS会員/国際フォーラム実行委員会委員⻑
東京大学大学院准教授

●略歴
慶應義塾大学文学部卒業。カリフォルニア大学ロサンゼルス校(UCLA)教育学大学院修士課程・博士課程修了。Ph.D.(教育学)。専門は、比較教育学、国際教育開発論。東南アジアを中心に、主に途上国の教育政策に関する研究を行っている。国連教育科学文化機関(UNESCO)パリ本部教育局教育専門官補、名古屋大学大学院国際開発研究科准教授、上智大学総合人間科学部准教授を経て、現職。他に、東京都教育委員、日本学術会議連携会員、日本比較教育学会理事、王立プノンペン大学(カンボジア)学長特別顧問、等を務める。

閉会挨拶

鎌田 聡

IATSS専務理事


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