第4回 AYAがんの医療と支援のあり方研究会学術集会
会 長 天野 慎介
一般社団法人 全国がん患者団体連合会 理事長
第4回AYAがんの医療と支援のあり方研究会学術集会は新型コロナウイルス感染の影響で完全web方式での開催となりました。関係者の皆さまのお力添えとご尽力に、改めて感謝申し上げます。
2018年3月に閣議決定された国の第3期がん対策推進基本計画では、「がんは、小児及びAYA世代の病死の主な原因の1つであるが、多種多様ながん種を多く含むことや、成長発達の過程においても、乳幼児から小児期、活動性の高い思春期・若年成人世代といった特徴あるライフステージで発症することから、これらの世代のがんは、成人の希少がんとは異なる対策が求められる」とされ、国のがん対策における重要な政策テーマの1つとして、その対策が検討されてきました。
その対策の検討では、一般に15歳から39歳とされるAYA世代が「特徴あるライフステージ」にあることから、AYA世代のがん患者に特有な課題があることが指摘されてきました。また、AYA世代のがん患者ががんを発症し、治療を受け、治療を終えてから経過観察や社会復帰、あるいは再発や病状の進行、いわゆる終末期や看取りを経験するという一連の「ペイシェント・ジャーニー(Patient Journey)」を進んでいく中で、多様な課題に直面することが指摘されてきました。
例えば、思春期世代の5年生存率については、その改善率が他の世代と比較して低いことが指摘されており、そのがんの中にはいわゆる希少がんが含まれています。療養環境については、同世代のがん患者が少ないことから、その交流や情報交換の場が必要とされています。学業や就職、恋愛や結婚、出産といったライフイベントを経験する世代でがん治療を受けることにより、人生の成長段階に大きな影響を受けています。晩期障害に対する理解の不足や、介護保険を使うことができない中での在宅医療も大きな問題です。
このように、AYA世代のがん患者に特有かつ多様な課題があることは、今までも数多くの指摘がなされてきました。しかし、それを乗り越えるための議論は、未だ多くはありません。一つ一つの課題を乗り越えることは容易ではありませんが、国内でAYAがん患者の医療と支援のあり方に関心をもつ医療者と支援者が集う学術集会であるからこそ、その議論を試みたいと考えます。
また、今回の学術集会は大会長である私が医療者ではなく、AYA世代でがんを経験した当事者である、ということも新しい試みです。AYAがんの医療と支援のあり方研究会(AYA研)は設立当初より、医療者と当事者の協働を1つの理念としてきましたが、学術集会に当事者の率直な視点を取り入れていきたいと考えます。
私が27歳でがんを発症した20年前、これから自身が経験するであろう「ペイシェント・ジャーニー」を考えると、その羅針盤は全く無く、自分がこれからどこに進んでいくのか、大きな不安を抱えていました。今回の学術集会を通じて、一人でも多くのAYA世代のがん患者に羅針盤を提供し、「AYA世代がん患者のペイシェント・ジャーニーを支える」場としていきたいと思います。皆さまのご理解とご支援を何卒よろしくお願い申し上げます。