第92回日本胃癌学会総会

日本の胃癌学会の活動は、世界における胃癌の病理学の確立に重要な役割を果たしてきた。現在、ゲノム情報を加えた新しい分類も提唱されてる。胃癌病理学のやり残してきた課題とこれからの胃癌病理学の向かうべき方向性について、胃癌病理学の権威の先生がたから意見をいただき、今後の世界の胃癌病理学の方向性を演者の先生とともに討論したい。

標的となるがんゲノム異常を同定するため、様々ながん腫に対するがんゲノムプロファイリングが行われている。しかし、進行胃がんにおいては、治療効果を予測するゲノム異常として確立したバイオマーカーはHER2のみである。近年の網羅的な分子生物学的解析によって胃癌の生物学的な特徴についての理解が深まっている。胃癌患者の予後を改善するために、どのように胃癌の分子生物学的特性に基づいたゲノムプロファイリングを活用するかについて議論したい。

本セッションでは近年増加している食道胃接合部癌の診断、内視鏡治療、化学療法を含めた周術期治療に関する最新の知見を発表して頂く。

食道胃接合部癌の手術術式に関しては未だ議論が多い。本邦で行われた前向きコホート研究の結果から至適リンパ節郭清範囲に関しては一定の見解が得られたが、アプローチ法や再建法の選択に難渋する場合も多い。本セッションでは第一線で活躍する外科医から最新の手術手技をその成績とともに提示して頂く。

本セッションでは、これまでの明らかとなった胃癌に対する低侵襲手術（腹腔鏡下手術・ロボット手術）に関するエビデンスを総括し、そのエビデンスが日常診療でどのように解釈され生かされているかを討議する。今後のロボット手術の位置づけや方向性に関しても示して頂きたい。

日本を含む東アジアと西洋諸国では依然として胃癌に対する治療方針に相違点が存在する。今後、世界規模での臨床試験などが望まれる中、東西の架け橋はより重要性を増すと思われる。本セッションでは東西の相違点を理解するとともに、今後の協力体制に関しても提示して頂きたい。

近年、がん免疫療法の進歩が著しく、特に、抗PD-1/PD-L1抗体や抗CTLA-4抗体薬などの免疫チェックポイント阻害薬が複数のがん種において有効性を示している。胃癌においても三次治療以降においてニボルマブがプラセボに対する全生存期間延長効果を示し(ATTRACTION-2試験)、本邦において承認された。一方、より前方治療ラインでのpembrolizumabの第III相試験では、標準化学療法に対して全生存期間における優越性を示していない。従って、免疫チェックポイント阻害剤のバイオマーカーやより高い治療効果が得られる併用療法の開発が急務である。本セッションでは胃癌治療における免疫チェックポイント阻害剤の現状とこれからの方向性に関して議論を行いたい。

胃癌に対する周術期化学療法として、欧米では術前後のFLOT療法が、本邦では術後の経口フッ化ピリミジンを中心とする2剤併用療法が標準とされている。さらなる治療成績の向上のための取り組みとして、対象の選択、化学療法レジメンの開発とその投与時期(術前and/or術後)、これまでのエビデンスに基づき、現在進行中の臨床試験や今後の進歩の可能性について議論したい。

早期胃癌に対するESDは、低侵襲で根治性が高い内視鏡治療として標準化し、世界的に普及している。最近の治療手技の進歩や医療機器開発の活性化により、トラクションデバイスなど様々な新しいデバイスを用いたESDの改良やロボット技術を応用したESDなどの報告がなされている。また、内視鏡治療と腹腔鏡手術を組み合わせた新しい治療であるLECS など、内視鏡医と外科医のコラボレーションによる治療も開発され、多くの報告がなされている。本セッションでは、胃病変に対する従来のESDを超える新しい低侵襲治療について広く演題を募集し、今後の展望についても議論したい。

本セッションでは、これまでに築かれてきた胃癌手術のエビデンスを総括するとともに、日常診療でエビデンスが生かされているか、エビデンスを外挿するうえでの問題点などを討議する。

2000年3月に、Case 0に初めてイマチニブ投与され画期的治療効果が確認された。その後、固形がん初の分子標的治療薬の開発が行われ、今日のゲノム医療に至る。この間、GISTでは他の2剤（スニチニブ、レゴラフェニブ）が承認され、詳細な分子メカニズムが解明され、他の稀な遺伝子変異も見つかった。この開発を契機に希少がんで国際共同臨床研究が行われるようになり、アジアのGIST診療ガイドラインも制定され、日韓共同試験が行われた。
希少がんの中では良く解明されたGISTではあるが、未だに診断治療で希少がん特有の多くの課題を抱えている。本シンポジウムでは、希少がんGISTのこれからの診断、外科治療、薬物治療、集学的治療の課題と展望を示して頂きたい。

我が国では、2016年より対策型検診として胃内視鏡検査の実施が認められるようになった。内視鏡検診の普及によって、胃癌の死亡率減少のみならず早期発見率の更なる向上が期待される一方で、二重読影の負担など体制面での課題も残されている。また、近年ではH.pylori感染率の低下により、診断困難な早期胃癌の報告も増えている。今後、より効果的な内視鏡検診を行うために、早期胃癌の新しい内視鏡所見や観察の工夫を整理しておくことは重要である。本セッションでは、内視鏡検診の導入成功事例や課題、精度管理など体制側の工夫、より効果的に検診を実施するための新しいモダリティーの開発などについて広く演題を募集し、今後の展開についても議論したい。

胃癌に対する標準治療薬は殺細胞薬剤に加えて、HER2・VEGFR2阻害剤・抗PD-1抗体といった新薬が導入されているものの、有効性は十分ではない。また胃癌では様々なネガティブな臨床試験結果も報告されており、分子生物学的な知見に基づく効率的な新薬開発の必要性が示唆される。本シンポジウムでは進行胃癌に対する新規治療開発の現状について討論したい。

JCOG0110の結果発表以降、大弯に浸潤しない上部進行胃癌に対しては脾温存術が標準術式となった。しかし依然として大弯浸潤例に対しては脾摘を標準術式とする施設も多い。一方、脾摘を行った際の合併症発生率の高さ、また合併症の予後へ与える影響に対する懸念から、大弯浸潤例であっても脾温存術を行うべきであるという意見も多い。本セッションでは、高齢化社会を迎えるわが国における、本課題に対する方向性に関して議論する。

AI技術の進歩により、画像診断、内視鏡診断、そして病理診断にAI技術が取り入れられた新しい診断体系が導入されると思われる。癌の治療にどのようにAIがかかわってくるのか、その問題点と課題を本パネルディスカッションで明らかにする。

噴門側胃切除は胃上部早期胃癌や食道胃接合部癌に対して施行される機会が増加している。様々な再建法が報告されているが未だ絶対的な術式は確立されていない。本セッションではそれぞれの再建法の長所・短所を提示して頂き、そして使い分けの規準を議論する。

CONVO-GC-1によりR0切除が施行されればStage IVからのconversion症例は比較的良好な予後が得られることが大規模データを用いて示された。しかし手術を行うタイミングの判断などに関しては未だ議論すべき点が多い。本セッションではoligometastasisに対する治療戦略を含め、今後の方向性や臨床試験のデザインに関して議論して頂きたい。

2019年に、キメラ抗原受容体T細胞（CAR-T細胞）療法が特定の白血病と悪性リンパ腫に対して単群の臨床試験の結果に基づいて承認された。また脳腫瘍に対する腫瘍溶解性ウイルスも少数例の少数例における臨床成績に基づいて承認申請されている。胃癌においても画期的な臨床効果を示す治療の開発が望まれており、展望について議論したい。

近年、国民の高齢化に伴い高齢もしくは超高齢の胃癌患者が増加傾向にある。年齢で治療を分けるべきかどうかは議論があるが、高齢者は併存疾患による他病死のリスクも高く，臓器機能障害を有する患者が多いことから、どのような治療を行うべきか悩む事が日常診療ではしばしば経験される。本セッションでは高齢者に対する至適な治療法に関して、早期胃癌から進行胃癌まで幅広い領域に関して議論を行う。

胃癌に対する内視鏡診断学は、胃内の系統的な観察から存在診断、質的診断、量的診断まで我が国の先達による弛まぬ努力で築かれた世界に誇れる学問である。近年、NBI、BLI、LCIなどのIEE(Image enhanced endoscopy)や拡大内視鏡の登場によって、より正確な内視鏡診断が出来るようになっただけでなく、質の高い臨床試験結果に裏付けられた新しい胃癌内視鏡診断学のエビデンスが確立されつつある。本セッションでは、IEEを含めた新しい内視鏡の胃癌診断におけるインパクトや、機能診断など新しい内視鏡を用いた画像診断の取り組みなどについて広く演題を応募し、新しい診断学の展開についても議論したい。

胃癌の治療標的としてのバイオマーカーは、近年、期待されているほどの進歩には至っていない。HER2以外のゲノム異常は未だバイオマーカーとしては確立されていない。一方で、胃癌における蛋白発現は、多く報告されており、蛋白発現をバイオマーカーとした治療の開発は現在活発になっている。近年、大きく進歩した、がん免疫療法における胃癌の治療効果は、未だ十分ではなく、治療効果を予想できるバイオマーカーの同定および一般化しうる測定方法の確立は必要である。また、進行再発胃癌の予後は不良であり、早期胃癌をより簡便に発見できるか、また術後再発を予想できるバイオマーカーや手法の開発も期待される。本シンポジウムでは、早期診断から進行再発の治療まで、臨床応用が期待されるバイオマーカーについて議論したい。

胃癌病理組織診断は胃癌治療の基盤である。病理組織分類は現在IARCの作成するWHO組織分類が世界の標準分類として利用されている。2019年には9年ぶりに第5版が出版された。新しい5版の病理組織分類について、改訂のポイントを作成にかかわった病理医に明らかにしてもらうとともに、その問題点や課題をあきらかにするとともに、これからの新しい胃癌組織分類の方向性を明らかにすることを目指す。

AIによる診断技術の導入が、研究レベルや診療レベルですでに導入がいろいろな臓器診断に開始されてきている。本ワークショップでは現在の医療へのAI技術の導入が進んでいる分野の中で胃癌診療にかかわると思われる領域を選び討論したい。

定型的胃癌手術はほぼ完成の域に達したが、近年はさらなる正確性を求め、ロボット手術や近赤外線内視鏡を用いたナビゲーション手術が行われるようになった。
その有用性と意義を検証し、未来の胃癌手術に関して議論して頂きたい。

スキルス胃癌や腹膜播種は依然として予後不良であり治療抵抗性である。新規治療や新たな治療モダリティの展望について議論したい。

腹腔鏡下胃切除は広く一般診療に浸透し、近年は大規模前向き試験の結果も揃いつつある。一方、ロボット胃切除は2018年4月の保険収載以降、その導入を試みる施設が増えている。本セッションでは安全な手技の啓蒙を目的に、そのピットフォールと回避法、さらにはトラブルが発生した場合の対処法を提示して頂きたい。

第6回のESD研究会では，より安全確実で創造性に富んだESDを目指してディスカッションをしたいと考えております。第1部では，内視鏡医が学ぶべき解剖学的な知識に関してご講演をお願いする予定です。第2部では，診断に苦慮した症例や偶発症へのトラブルシューティングなど，35歳以下の若手の先生にご発表いただき，議論を深めたいと思います。第3部では，未来のESDに向けて，安全性の確保やESDの創意工夫に関する演題を募集いたします。みなさまの積極的なご応募をお待ちしております。