第27回日本災害医学会総会・学術集会

第27回日本災害医学会総会・学術集会

ご挨拶

会長 中田敬司

第27回日本災害医学会総会・学術集会
会長 中田 敬司
(神戸学院大学 現代社会学部 社会防災学科 教授)

第27回日本災害医学会総会・学術集会は2022年3月3日(木)~5日(土)の3日間、広島国際会議場をメイン会場とし開催される運びとなりました。

まずは、多大なるご支援・ご協力いただいた各企業・団体ほか関係者の皆様、海外を含めご講演いただく先生方、また大会の準備にご尽力いただいた多くの皆様に心から感謝申し上げます。

本大会は感染症を含め南海トラフ地震や首都直下地震も予測される「災害列島」に暮らす我々が、それらに対応していくため、何をどう攻めるのか、何をどう守っていくのか、さらに何をどう育てていくのか、将来に向けて新たな視点で探求していくことを目的に、そのテーマを「災害医療のパラダイムシフトー何を攻め・守り・育てるのかー」と掲げました。

今後の災害医療対応システム、急性期以降の様々な医療・保健・福祉関係・NGO団体等の多機関連携、各団体の強みや弱み、研修・教育・訓練のあり方について、また災害時病院の機能維持(BCP)、病院船構想、災害情報共有システムを含めた新技術活用、避難所環境、人的・物的資源の確保、ロジスティクス、国際的相互援助のあり方、災害医療に係る法的整備の課題など、将来に向けてしっかりと議論を深めていく必要があります。

今回、特別企画として「COVID-19と災害医療の戦い‐今までの対応の総括・この災害の本質・出口への道標‐」と題し、元厚生労働副大臣 衆議院議員 橋本 岳氏にご講演いただくとともに、ダイヤモンドプリンセス号から現在までの新型コロナウイルス感染症対応について考えるシンポジウム並びに好評の「レジェンドセッション」などタイムリーかつ興味深いセッションを企画いたしました。さらに本学会が加盟している日本学術会議「防災学術連携体」では「浸水被害、土砂災害に対する病院の備え」をテーマに気象学・工学・情報学分野からの特別セッションを予定しています。

また、今大会は人類史上初めて原子爆弾が投下された街「広島」での開催となります。教育の街から、軍都へ、そして「国際平和文化都市」として変貌を遂げた開催地「広島」からのメッセージを発信する企画として「暁の宇品」の著者でノンフィクション作家の堀川恵子氏(広島県出身)を講師としてお招きすることができました。

そして、パラダイムシフトを考える3つの観点「攻める」「守る」「育てる」をキーワードに、新たな視点を得るために災害医療とは異なる分野でご活躍中の先生方からご講演いただきます。

「攻める」は、㈱中国放送 報道制作局岩永哲氏及び友定真治氏、「守る」は真言宗 神峰山 般若寺 住職 福嶋弘昭氏、そして「育てる」は、東京オリンピック・ボクシング競技の金メダリスト入江聖奈選手を育てた伊田武志氏です。それぞれの観点で課題解決のヒントが得られればと楽しみにしています。

さらに海外からJoseph Lamana 氏(U.S. Department of Health and Human Services)、Flavio Salio 氏(World Health Organization)、Pete Skeleton 氏(World Health Organization)Odeda Benin-Goren氏(Israel Ministry Of Health - General Medical Division)他、また国内からも「被ばく医療」、「山岳医療・火山」、「豪雨災害」「避難生活・トイレ環境」等様々な分野で造詣の深い先生方のご講演が予定されています。

是非ともサイエンスとして「災害医学の確立」に向けた活発な議論が展開されますことを心から願っています。

また、何より本大会は初めて私「ロジスティシャン」が大会長を務めることとなります。ご指名いただいた皆様に感謝申し上げるとともに、今もなお身の引き締まる思いでいます。そしてまさに、本学術集会そのものが「パラダイムシフト」しているのかもしれません。哲学者 内田 樹氏は「大震災のように非常時に重要なのは兵站、いわゆるロジだ。非常時のロジは通常のルールや習慣に従っていては埒が明かない。豪腕が求められる。ただし、豪腕とは現場で怒鳴り散らすことでなく、組織の要所要所に゛無理を頼める゛相手をどれだけ持っているかで決まる。つまり緊急対応能力とは、平時にどれだけの人間関係を築いているか、資産を持っているかで決まる。」と述べています。そして本学会の創設者のお一人、山本保博先生は常に我々に「貯人」の大切さをお示しくださっていました。今ここで「ロジ力とは・・」を改めて私自身が考えていく所存です。

2022年に入っても新型コロナウイルス感染症は中々収束に至らない状況が続いています。しかしそうした中でも今回、特別企画・一般演題・ポスター等を含め約700演題のご登録をいただきました。そのおかげで、充実したプログラム構成となり、多くの学びを得られる環境を整えることができました。エントリーしてくださった皆様に心から感謝申し上げます。

最後になりましたが、今大会はweb等を活用するとともに、現地会場では徹底した新型コロナウイルス感染対策を実施しながら開催いたします。充実した学術集会となりますよう多くの皆様のご参加とご協力を心からお願い申し上げ、ご挨拶とさせていただきます。

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