第21回日本糖尿病インフォマティクス学会 会長
小出 景子
永寿総合病院 糖尿病臨床研究センター
この度、第21回日本糖尿病インフォマティクス学会の学会長を拝命いたしましたので、ご挨拶させていただきます。
日本糖尿病インフォマティクス学会は、2020年9月に第20回の年次学術集会を開催した日本糖尿病情報学会を発展的に引き継いで発足した学会です。よって、2021年8月の学術集会を第21回として開催いたします。学会名の変更に当たっては、情報に関する技術を広く含む概念であります“インフォマティクス”が、本学会の目的に合致するとして採用されました。前身の学会が設立されてからの20年間を振り返りますと、糖尿病を取り巻く環境や治療法などが大きく変わっています。同時に、情報に関する技術も変化し、PCの処理能力は高くなり、通信はスマートフォンに変わり、ネットは生活に欠かせなくなり、AIは気づかない形で日常生活に入ってくるなど、飛躍的に進歩しました。糖尿病治療の現場で情報技術の進歩を最も実感するのは、血糖変動を知るCGMとインスリンポンプではないでしょうか。CGMの出現により24時間の血糖変動が把握できるようになり、インスリンポンプはSAPとなって低血糖を予防できるようになりました。一方、機器の進歩により情報量が膨大となり、医師のみで診察時に処理するのは困難となっています。このような状況を改善するデータ共有法として、データマネジメントシステム(DMS)指導を提唱してきました。この経験からデータ共有の重要性を考え、第21回学術集会のテーマを「デジタルデータ共有が拓く糖尿病の近未来」といたしました。
デジタルデータと糖尿病の近未来としては、PHRやビッグデータの活用、CGMやインスリン治療の充実、COVID-19感染拡大を機に広まったオンラインの診療・服薬指導の拡充、地域医療への貢献、モバイルヘルスの実用化、糖尿病網膜症の診断などをはじめとするAIの適正利用、遺伝情報解析などによる個別治療の充実、安心を支える保険の個別化、などが考えられます。勿論、これらの進歩を治療や教育の現場で活かすには、情報リテラシーの向上や、実臨床における発想と創造が求められます。第21回の学術集会では、情報関連の最新技術と臨床応用の両面から幅広く学び議論できる場にしたいと考えています。私は薬剤師ですので、最前線の医療スタッフが、最新の情報を学ぶだけでなく機器やアプリに触れて学べる機会を設けたいと考えています。
“インフォマティクス”を難しく考えずに、医師、薬剤師、看護師、栄養士、検査技師、理学療法士などの医療者、また情報技術の研究者の方々や企業の方々にも、積極的に演題応募とともにご参加いただけますようお願いいたします。
学術集会は、2021年8月28日(土)、29日(日)、東京駅丸の内口に隣接するJPタワーホール&カンファレンスルームで開催いたします。多くの皆様方の参加を心よりお持ちしています。
2021年1月吉日