プログラム
理事長講演
司会: |
小池 和彦 |
(関東中央病院) |
演者: |
持田 智 |
(埼玉医科大学消化器内科・肝臓内科) |
会長講演
司会: |
金子 周一 |
(金沢大学情報医学開発講座) |
演者: |
中本 安成 |
(福井大学学術研究院医学系部門内科学(2)分野) |
特別講演
特別講演1
司会: |
下瀬川 徹 |
(みやぎ県南中核病院消化器内科) |
演者: |
坂井 建雄 |
(順天堂大学医学部医史学研究室) |
特別講演2
司会: |
脇田 隆字 |
(国立健康危機管理研究機構) |
演者: |
Luca Guidotti |
(Department of Immunology and Infectious Diseases, San Raffaele Hospital & San Raffaele Vita-Salute University) |
特別講演3
司会: |
竹原 徹郎 |
(関西労災病院) |
演者: |
河部 壮一郎 |
(福井県立大学恐竜学部恐竜・地質学科) |
特別講演4
司会: |
榎本 信幸 |
(山梨大学医学部消化器内科) |
演者: |
新井 紀子 |
(大学共同利用機関法人情報・システム研究機構国立情報学研究所社会共有知研究センター/一般社団法人教育のための科学研究所) |
特別企画
世相を斬る消化器病リサーチ
司会: |
坂本 直哉 |
(北海道大学消化器内科) |
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正宗 淳 |
(東北大学大学院医学系研究科消化器病態学分野) |
メディカルスタッフ特別企画
タスクシフトへ向けた人材育成の現況と展望
司会: |
池嶋 健一 |
(順天堂大学大学院医学研究科消化器内科学) |
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長沼 誠 |
(関西医科大学内科学第三講座) |
キャリア支援委員会特別企画
シンポジウム
シンポジウム1
消化管腫瘍診断治療の新規内視鏡技術-未来への展望-
本セッションでは、「消化管腫瘍診断治療の新規内視鏡技術-未来への展望-」をテーマに、最先端の内視鏡技術について議論いたします。近年、画像強調技術やAI支援診断に加え、分子イメージングによる腫瘍性病変の可視化など、新たな内視鏡診断技術が開発されてきています。さらに、これらの技術を治療に応用する取り組みも進み、ロボット支援手術やナビゲーションシステムの発展により、低侵襲で安全な内視鏡治療戦略も実現しつつあります。新たな内視鏡技術の進歩は内科と外科の垣根を超え、将来の消化管腫瘍診療に大きなパラダイムシフトをもたらそうとしています。
これからの消化管腫瘍診療を切り拓く最新の研究成果を広くご発表いただき、活発な議論を通じて未来への展望を共有したいと考えております。どうぞよろしくお願いします。
司会: |
藤城 光弘 |
(東京大学医学部附属病院消化器内科) |
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小野 尚子 |
(北海道大学病院光学医療診療部) |
シンポジウム2 ※英語セッション
B型肝炎の診療と創薬の新たな展開
Recent Advances in Hepatitis B Care and Therapeutic Development
B型肝炎治療は核酸アナログ製剤により進展したが、functional cure の達成はいまだ困難であり、新たな治療戦略が求められている。長期治療に伴う合併症、治療適応拡大や中止基準の検討、高齢化に伴う併存疾患、HBV再活性化対策など診療課題は多岐にわたる。加えて、HBVに対する差別や偏見により専門医受診や治療開始が遅れる例もあり、簡便な検査・診断から治療へ円滑につなぐ体制の整備も重要である。一方、創薬では免疫調節薬、cccDNAやHBV RNAなどを標的とした治療、治療効果予測マーカーの探索など新規アプローチが進んでいる。本セッションでは、B型肝炎の診療課題に対する実臨床の取り組みや、機能的治癒を目指した創薬開発に関する基礎・臨床の幅広い演題を公募する。
Despite significant progress in hepatitis B treatment with the introduction of nucleos(t)ide analogues (NA), achieving a functional cure remains challenging, highlighting the need for novel therapeutic strategies. Clinical challenges include managing complications from long-term NA therapy, defining criteria for treatment expansion or cessation, addressing comorbidities associated with an aging population, and preventing HBV reactivation. In addition, stigma and discrimination against HBV often delay referral to specialists and initiation of treatment. Therefore, establishing integrated systems that enable seamless transitions from simple testing and diagnosis to timely treatment is essential. On the other hand, therapeutic development for HBV is rapidly evolving, with new approaches targeting immune modulation, cccDNA and HBV RNA, as well as efforts to identify predictive biomarkers of treatment response. This session invites a broad range of presentations on both clinical initiatives addressing unmet needs in HBV care and basic and translational research aimed at achieving a functional cure.
司会: |
四柳 宏 |
(東京大学医科学研究所先端医療研究センター) |
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田中 靖人 |
(熊本大学消化器内科学) |
シンポジウム3
Interventional EUSを用いた多角的診療アプローチ
近年、Interventional EUS(I-EUS)は胆膵領域における低侵襲診療の選択肢として急速に普及している。診断では, EUS-guided samplingに加え, EUS through-the-needle examinations(EUS-TTNE)や門脈圧測定など多様な技術が導入されてきた。治療では, EUS-BD, EUS-GJS, EUS-ADなどのEUS-guided drainage/anastomosis(EUS-D/A)が広く実施されているが, 安全性や技術習得に関する課題も残されている。また, EUS-FNI/RFAによる膵神経内分泌腫瘍の治療, 静脈瘤へのコイル塞栓といったvascular intervention, 肝疾患領域の“endo-hepatology”も注目されている。本シンポジウムでは, I-EUSの多角的応用と今後の展望について, 多領域の視点から議論したい。
司会: |
伊佐山 浩通 |
(順天堂大学医学部消化器内科) |
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肱岡 範 |
(国立がん研究センター中央病院肝胆膵内科) |
シンポジウム4
Multi-option時代における炎症性腸疾患advanced therapyの総合的戦略
Advanced therapy(AT)の進歩は炎症性腸疾患(IBD)患者の手術率を下げ、患者QOLは明らかに改善している。一方で、高齢患者のマネージメント、クローン病の肛門病変や小腸病変に対するATの有効性など、残された課題も多い。モニタリングの重要性が提唱されているが、各薬剤の投与順序や切り替え時期の見極めなど、総合的な戦略は未確立である。多くのATが使用可能だが、どの薬剤の治療成績も傑出しておらず、”therapeutic
ceiling(治療の天井)”とも呼ばれている。ATの効果予測に関するバイオマーカーや臨床像が不明確なことも要因で、種々の検討が行われている。本セッションでは単に各AT薬剤の有効性を示すだけでなく、各薬剤の使い分けや投与順序、切り替え時期の見極めなど、総合的なIBD治療戦略に関する演題を歓迎する。上述したunmet
needsに挑む、意欲的な発表を期待している。
司会: |
久松 理一 |
(杏林大学医学部消化器内科学) |
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渡辺 憲治 |
(富山大学炎症性腸疾患内科) |
シンポジウム5
肝癌免疫療法時代における病態解明と臨床応用
肝癌に対する免疫療法は、薬物療法全体の治療成績を飛躍的に改善し、治療選択肢を大きく広げた。しかし、その効果は患者ごとに大きく異なり、背景にある腫瘍免疫機構、癌微小環境、背景肝疾患との関連性など、多層的な病態理解が求められている。このため、分子レベルでの病態把握とその統合が不可欠であり、肝癌病態の本質に迫る基礎研究の重要性は、近年ますます高まっている。本シンポジウムでは、肝癌免疫療法時代における病態解明とその臨床応用の可能性について、多角的かつ先進的な視点からの議論を行いたい。分子病態、免疫機構、バイオマーカー探索、モデル動物を用いた研究、臨床検体を活用したトランスレーショナルな取り組み、さらには個別化医療を見据えた応用研究など、多様なアプローチによる演題の応募を歓迎する。新たな知見を共有いただき、議論を深めることで本領域のさらなる発展を目指したい。
司会: |
山下 太郎 |
(金沢大学医学部消化器内科) |
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疋田 隼人 |
(大阪大学大学院医学系研究科消化器内科学) |
シンポジウム6
肝硬変診療における到達点と今後の展開
肝硬変に対する治療は飛躍的に進歩しているが、成因の変化や合併症についてはさらなる対策が必要である。MASLDやALDは増加傾向にある肝硬変の成因であり、生活習慣の改善やcardiometabolic risk factor/減酒・断酒への対策は喫緊の課題である。肝予備能の低下や肝線維化の進展に関連する低アルブミン血症、門脈圧亢進症、(不顕性)肝性脳症、難治性腹水や低亜鉛血症については様々な研究成果が報告されており、現時点での到達点を整理し問題点を明確にする必要がある。また、サルコペニア・フレイル、急性腎障害や門脈肺高血圧症などの肝外合併症については病態の解明と多職種連携によるさらなる対策が必要である。本シンポジウムでは肝硬変診療における現時点での到達点を発表いただくとともに、課題を共有することで、肝硬変患者の予後やQOL改善を見据えた今後の展望について議論したい。
司会: |
吉治 仁志 |
(奈良県立医科大学消化器内科) |
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川口 巧 |
(久留米大学医学部消化器内科) |
シンポジウム7
肝門部領域胆管癌に対する新たな治療戦略
肝門部領域胆管癌の診療においては、診断から治療に至るまで多くの選択肢が存在し、専門的な知識と高度な技術が求められ、いまだ標準化が確立されていない領域も多い。切除企図症例においては、胆道鏡を含む術前進展度診断の精度向上、術前・術後補助療法の意
義、外科手術の進歩と周術期管理の最適化など、多くの議論がされている。一方、切除不能症例に対しても、化学療法に加えて免疫療法や分子標的治療、さらには胆管内ラジオ波焼灼療法、肝移植など、治療選択肢が拡がりつつありる。さらに、抗腫瘍効果の向上と予後改善に伴い、胆管炎のマネージメントが一層重要となっており、それに応じて胆道ドレナージ法の選択も変化しつつある。本シンポジウムでは、肝門部胆管癌診療における現状の課題を整理しつつ、新たな治療戦略の構築に向けた取り組みについて、幅広い視点から議論を深めていきたい。
司会: |
吉住 朋晴 |
(九州大学消化器・総合外科) |
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中井 陽介 |
(東京女子医科大学消化器内科) |
シンポジウム8
膵癌の長期予後を目指した新たな治療ストラテジー
膵癌は5年生存率8.5%と最も予後の悪い癌であるが、近年、切除率および予後の改善を目指した早期診断の試みと並んで、局面に応じた様々な治療の試みがなされており、治療ストラテジーが徐々にではあるが変わろうとしている。切除可能膵癌においては、術前補助療法が標準治療となりつつあり、手術については低侵襲手術の導入や術後補助化学療法の検討、術前・術後の栄養管理、膵酵素補充療法などの周術期治療の検討がなされ、切除可能境界膵癌については、動脈合併切除の是非を含めた術式の検討や術前・術後の補助化学療法の検討がなされている。また、局所進行切除不能膵癌に対する化学療法/化学放射線療法や、遠隔転移を有する膵癌に対する化学療法、遺伝子異常を標的とした薬物治療についても多くの検討がなされている。本セッションでは、こうした状況を踏まえて各施設における新たな治療ストラテジーを、その治療成績とともに紹介していただきたい。
司会: |
海野 倫明 |
(東北大学大学院消化器外科学) |
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安田 一朗 |
(富山大学第三内科) |
シンポジウム9 ※英語セッション
炎症性腸疾患における病態研究・臨床応用の最前線
The cutting edge of pathophysiological (basic) research and clinical application in inflammatory bowel disease
近年炎症性腸疾患に対する複数の分子標的治療薬が開発され、速やかな寛解導入と長期寛解が可能になりつつある。また臨床症状だけでなく、内視鏡や組織学的に評価をおこない検査結果をもとに治療の最適化を行う「Treat to Target」の概念が提言されている。一方で分子標的薬全盛期の現在においても治療効果が減弱する症例や、複数の分子標的薬に治療効果が認められない「Difficult to Treat」の症例の存在が問題となっており、臨床応用に結びつくような病因・病態に関する研究が期待されている。現在免疫学、分子生物学、遺伝子学、腸内細菌に関する研究などが精力的に行われ、急速に発展してきていることで今後病態に基づいた新規治療法が開発され臨床応用される可能性がある。本シンポジウムでは炎症性腸疾患における病態研究の最前線や臨床応用の実際などに関する成果を公表していただきたい。基礎・臨床の双方から多くの応募を期待する。
In recent years, multiple molecular targeted therapies have been developed for inflammatory bowel disease (IBD), making it increasingly possible to achieve rapid induction of remission and long-term maintenance. Furthermore, the concept of "treat to target" has been proposed, to optimize treatment based on serological, endoscopic and histological findings. On the other hand, even in this era where molecular targeted drugs are at the forefront, there remain challenging cases where therapeutic effects diminish, or where no response is observed to multiple advanced therapies—so-called "Difficult to Treat" cases. Researches into the etiology and pathophysiology that can be translated into clinical practice is highly anticipated. Currently, intensive researches are being conducted in fields such as immunology, molecular biology, genetics, and gut microbiota, and these areas are rapidly evolving. As a result, there is potential for the development and clinical application of new therapies based on underlying disease mechanisms.
This symposium aims to showcase the latest findings in pathophysiological research and real-world clinical applications in IBD. We look forward to many submissions from both basic and clinical research fields.
司会: |
金井 隆典 |
(慶應義塾大学医学部内科学(消化器)) |
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長沼 誠 |
(関西医科大学内科学第三講座) |
シンポジウム10
進行食道癌に対する集学的治療の進歩
近年、進行食道癌に対する集学的治療は大きな進展を遂げており、特に免疫チェックポイント阻害剤を用いた癌免疫療法や、化学放射線療法の有用性に関する知見が国内外で蓄積されています。これらを基盤とした新たな治療戦略の模索はもとより、治療奏効率を高めるための基礎的研究、予後予測や奏効予測に資するバイオマーカーの探索も重要性を増しています。本シンポジウムでは、最新の動向を踏まえ、進行食道癌に対する集学的治療の現状の把握と未来を展望すべく、臨床研究・基礎研究を問わず幅広い分野からの演題を募集いたします。多数のご応募をお待ちしております。
司会: |
野村 幸世 |
(星薬科大学医療薬学研究室/東京大学医学部附属病院胃食道外科/東京大学アイソトープ総合センター) |
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片岡 洋望 |
(名古屋市立大学消化器・代謝内科学) |
シンポジウム11
ヘリコバクター・ピロリ除菌後胃癌の病態と臨床像
ヘリコバクター・ピロリ除菌療法の普及により、わが国における胃癌の発生様式は大きく変化しています。現在、新たに診断される胃癌の除菌後胃癌が増加しつつあり、とくに除菌後長期経過して発見される胃癌の特徴が注目されています。除菌後胃癌による胃癌死を防ぐためには、病態と臨床像を把握し、適切なサーベイランス戦略を確立することが不可欠です。除菌後胃癌の臨床病理学的解析や分子機構の解明、リスクファクター、萎縮・腸上皮化生など背景胃粘膜の分子生物学・病理学的特徴、さらにはヘリコバクター・ピロリとそれ以外のマイクロバイオームの関与など病態を明らかにすることが重要です。また、画像強調内視鏡(IEE)技術や人工知能(AI)を活用した画像診断の進歩も、早期発見と診断精度向上に新たな展望をもたらしています。本シンポジウムでは、最新の知見を共有し、除菌後胃癌克服に向けた今後の方向性について多角的に議論を深めたいと考えております。
司会: |
永原 章仁 |
(順天堂大学医学部附属順天堂医院消化器内科) |
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磯本 一 |
(鳥取大学医学部消化器腎臓内科学) |
シンポジウム12
腸内細菌叢と消化器疾患の病態連関
腸内細菌叢やその代謝産物は生体内の様々な臓器に影響を及ぼし、消化管に限らず肝胆膵の良悪性疾患、さらには消化器臓器以外の代謝、免疫、神経のネットワークをチューニングして、病態と連関することが明らかになった。また、病態形成だけでなく、治療への反応性にも関与することも示されるなど、今やマイクロバイオーム研究は消化器病学において欠かすことのできない存在となっている。本シンポジウムでは、腸内細菌を起点とする消化器臓器の連関に注目し、最新の研究成果とその病態、診断や治療への応用などについて幅広く議論していきたい。従来の解析手法、プロバイオティクスやプレバイオティクスの利用のみならず、新しい視点やモダリティーによって腸内細菌叢を再考し、消化器疾患における次世代の腸内細菌叢研究と治療法の開発につながる議論の場となることを期待したい。
司会: |
妹尾 浩 |
(京都大学大学院医学研究科消化器内科学) |
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猿田 雅之 |
(東京慈恵会医科大学内科学講座消化器・肝臓内科) |
シンポジウム13
移植医療の適応拡大と今後の展望
COVID-19 pandemicの収束に伴い、我が国の脳死移植実施件数は回復基調にあるが、まだまだ世界的には低水準であり、たとえば肝移植においては、まだまだ生体移植に依存するところが大きい。移植医療拡大のためには、(1)適応疾患の拡大、(2)マージナルグラフトの有効活用、(3)社会への啓発活動、さらには(4)持続可能な移植システムの構築、(5)移植実施施設の拡大、(6)人材確保、などまだまだ取り組むべき課題も多い。本シンポジウムでは消化器臓器移植に携わる多方面の演者からの、移植の現状(脳死・生体)に関する報告、新たな取り組み、未来への提言を広く募集する。前向きな近未来の移植医療の姿が描けるようなセッションになるよう、多数の応募を期待したい。
司会: |
長谷川 潔 |
(東京大学医学部附属病院肝胆膵外科) |
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青木 琢 |
(獨協医科大学病院肝・胆・膵外科) |
シンポジウム14
十二指腸非乳頭部腫瘍の診断と治療の到達点
十二指腸非乳頭部腫瘍は、病理組織学的には粘液形質により臨床像や生物学的悪性度が異なる可能性が報告されている。狭帯域光観察併用拡大内視鏡に加え、超拡大内視鏡や共焦点内視鏡による観察や、病変切除後の縫合・被覆などによる有害事象の予防の有効性が報告されている.表在性上皮性腫瘍(Superficial non-ampullary duodenal epithelial tumor:SNADET)に対する内視鏡治療としては、EMRに加え、cold forceps polypectomy(CFP),cold snare polypectomy(CSP),underwater EMR(UEMR),内視鏡的粘膜下層剥離術(ESD)などが選択され、さらに腹腔鏡補助下縮小術や腹腔内視鏡合同手術(D-LECS)による治療法も報告されている.近年の内視鏡および様々なデバイスの開発や手技の工夫により,リスクを低減し根治性を目指した治療が可能となり、診断法や治療指針が確立されつつある。十二指腸非乳頭部腫瘍に対する内視鏡診断法のアルゴリズム,外科との連携を含めた最新の治療成績に関する演題を広く募集する.
司会: |
塩谷 昭子 |
(川崎医科大学消化器内科) |
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岡 政志 |
(埼玉医科大学総合医療センター消化器・肝臓内科/埼玉医科大学総合医療センター内視鏡センター) |
シンポジウム15
Information and communication technology (ICT)が切り拓く消化器病診療の新時代
近年、ICTは近年の医療現場において大きな変革をもたらしており、消化器病診療の分野でもその活用が注目されている。具体的には、AIを活用した画像診断支援、地方や離島の患者に対する専門的な診療提供(遠隔医療)による医療の地域格差解消などが挙げられる。さらに、ウェアラブルデバイスやモバイルアプリを活用した生活習慣のモニタリングが、消化器疾患予防や再発防止に向けての取り組みとして勧められつつある。そして、電子カルテデータの高度解析を用いることにより、診療・研究・教育の在り方も大きく変わり始めている。今後、ビッグデータを活用した個別化医療の実現や、患者参加型の診療モデルの構築などへの展開も期待されている。本セッションでは、ICTを積極的に活用した先進的な取り組みを共有し、その成果や課題、今後の展望について多角的な議論を深めたいと考えている。様々な立場や角度からの多数の演題の応募を期待する。
司会: |
仲瀬 裕志 |
(札幌医科大学医学部消化器内科学講座) |
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厚川 正則 |
(日本医科大学消化器内科学) |
シンポジウム16 ※英語セッション
膵胆道癌のゲノム医療における課題と展望
Challenges and Future Directions of Genomic Medicine in Pancreatic and Biliary Tract Cancers
近年の網羅的ゲノム解析技術の進歩により、膵胆道癌においてもゲノム異常に基づく個別化医療が進展している。特に胆道癌ではFGFR2融合遺伝子など治療標的となる異常の頻度が比較的高く、パネル検査やFISHによるコンパニオン診断が臨床に浸透しつつある。また、複合免疫療法の登場により、免疫微小環境の理解も治療戦略上重要性を増している。一方、FGFR阻害薬に対する耐性変異など新たな課題も生じており、そこにはリキッドバイオプシーの活用も注目されている。膵癌では、パネル検査に加えてBRCA1/2などの検査が行われているが、現状では治療に直結する例は限られている。そこで本セッションでは、実臨床におけるゲノム医療の現状と課題、各種コンパニオン診断の活用方法、新規治療標的やバイオマーカーに関する探索的研究、免疫微小環境理解など、膵胆道癌診療の今後の展望について幅広く議論したい。
Advancements in genomic analysis have accelerated personalized medicine in pancreatic and biliary tract cancers. In biliary tract cancer, actionable alterations such as FGFR2 fusions are relatively common, and gene panel testing along with companion diagnostics such as FISH are becoming part of routine clinical practice. The emergence of combination immunotherapy has also highlighted the importance of understanding the tumor immune microenvironment. Meanwhile, challenges such as resistance mutations to FGFR inhibitors have emerged, bringing attention to the potential of liquid biopsy. In pancreatic cancer, gene panel or BRCA1/2 testing is performed, but cases leading to treatment decisions remain very limited. This session will cover the current state and challenges of genomic medicine, the use of companion diagnostics, exploratory research on novel targets and biomarkers, and the role of the immune microenvironment to explore future treatment strategies.
司会: |
立石 敬介 |
(聖マリアンナ医科大学消化器内科) |
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中川 勇人 |
(三重大学大学院医学系研究科消化器内科学) |
パネルディスカッション
パネルディスカッション1
ヘリコバクター・ピロリ診療の課題と将来展望
近年は感染率の低下からポストピロリと呼ばれる状況だが、依然高齢者層では感染例が多数であり、高齢者と若年者で疾患の二層化が見られる。そのような中、2024年に日本ヘリコバクター学会からH. pylori感染の診断と治療のガイドラインが改定された。
H. pylori診療は近年も変化が進んでいる。診断は既存の診断法に加え新しい検査法が開発され、抗体法では判定に関し現場での混乱が見られている。治療では、薬剤感受性試験や3次除菌以降の問題が残っている。また高齢者における胃癌罹患数が増加する中、除菌後胃癌への対策も欠かせない状況であり、マイクロバイオータやエピゲノム変異との関連も解明が進んでいる。
このセッションでは、将来に向けたH. pylori感染の診断と治療、除菌後のフォローアップ、除菌後胃癌等の幅広い分野における対策のアップデート、課題解決に向けた議論を行い真のポストピロリ時代への一助としたい。
司会: |
兒玉 雅明 |
(大分大学医学部先進医療科学科) |
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前田 愼 |
(横浜市立大学医学部消化器内科学) |
パネルディスカッション2
膵・胆道良性疾患の課題と治療戦略
膵臓の良性疾患としては慢性膵炎・膵石症、胆道の良性疾患としては原発性硬化性胆管炎(PSC)・胆石(総胆管結石)症・胆嚢炎・胆管炎・乳頭機能不全・乳頭部腺腫などが挙げられる。また、術後の吻合部狭窄など合併症に対する治療も重要な問題である。良性膵管狭窄に対する治療、無症候性総胆管結石の治療の必要性、PSCへの薬剤的・内視鏡的・移植外科的治療介入、高齢者や併存疾患のある症例の治療戦略、良性疾患と癌の鑑別診断など未解決の課題が多くある。今回は高齢化が進み、EUS下治療やバルーン内視鏡を用いた診療などが広く行われるようになった現状を鑑み、急性膵炎、自己免疫性疾患を除いた良性膵・胆道疾患について長期予後まで考えた診断・治療の課題を挙げていただき、それに対する戦略と成績について報告していただきたい。そのうえで今後取り組むべき課題について議論できればと考えている。多種・多様な応募を期待する。
司会: |
糸井 隆夫 |
(東京医科大学消化器内科) |
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川嶋 啓揮 |
(名古屋大学大学院医学系研究科消化器内科学) |
パネルディスカッション3
ウイルス性肝疾患診療の課題と新たな展開
ウイルス性肝炎にはA型からE型が存在し、それぞれ異なる病態と課題を有する。近年、抗HCV療法は飛躍的に進歩したが、eliminationの達成には依然高いハードルがある。一方、HBVの完全排除は未だ困難であり、新規治療の開発が強く求められている。さらに、ウイルス制御下においても、肝線維化や門亢症が不可逆な症例があり、肝発がんや病態進展リスクも依然として健常人より高い。現在のウイルス性肝疾患診療には、これらの病態進展要因に対する介入、肝発がんの抑制、治癒を可能とする革新的治療法の開発のみならず、ワクチン開発、劇症化の予防、免疫応答の最適化、ウイルス変異の制御、およびスクリーニングやcascade of careにおけるギャップの解消など、基礎・臨床双方から解決すべき課題が山積している。そこで本セッションでは、課題の克服を目指した病態の本質解明と、新規治療法の開発や診療上の対策に関して、最新の研究成果について創造的な議論を展開し、ウイルス性肝疾患の制圧を目指した研究と診療の将来展望を共有したい。
司会: |
考藤 達哉 |
(国立国際医療研究センター肝炎・免疫研究センター) |
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朝比奈 靖浩 |
(東京科学大学消化器内科) |
パネルディスカッション4
進行肝癌に対する集学的治療の進歩
分子標的治療薬および複合免疫療法の登場により、切除不能進行肝癌の予後は明らかに向上した。さらに、薬物療法と局所療法のコンビネーションによる集学的治療により、進行肝癌であっても、cancer free drug freeが治療のゴールになりつつある。しかしながら、脈管侵襲陽性例の予後が飛躍的に改善したわけではない。どのような病態において、どのような治療の組みあわせが適切か、TACEなどの局所療法や放射線治療が複合免疫療法の治療効果を増強するか、肝切除や焼灼療法によるconversion therapyの是非と最適なタイミング、内科・外科・放射線科の連携、複合免疫療法不適の患者に対する治療方針、薬物療法の最適なシークエンス、脈管侵襲陽性例のfirst line therapyは?まだまだ解決すべき課題は多い。
司会: |
黒崎 雅之 |
(武蔵野赤十字病院消化器内科) |
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波多野 悦朗 |
(京都大学肝胆膵・移植外科) |
パネルディスカッション5
膵IPMNの病態解明とマネジメントの新展開
元来IPMNの悪性度は形態・粘液形質などによりが評価されてきたが、分子遺伝学的研究により、IPMNの発生と癌化に関与する様々な遺伝子異常と由来癌・併存癌の発生形式が解明され、2024年には国際ガイドラインも改訂された。浸潤癌に移行しやすい背景膵についての知見も得られてきている。IPMNをマネジメントする際に、悪性度評価、手術適応、切除範囲と術式決定、併存膵癌の有無の評価が重要である。経過観察については、年齢・基礎疾患の有無を考慮して、その適否、検査法、終了時期が検討されている。日本の大規模前向き試験で由来癌・併存癌の頻度は明らかとなったが、リスク因子や治療方針は未解決である。術前に悪性と診断されながらも腺腫段階で切除される例も少なくなく、低侵襲手術の普及は患者負担軽減の観点から新たな選択肢となる。本セッションでは、膵IPMNの病態解明と適切なマネジメント法を探ってみたい。
司会: |
七島 篤志 |
(宮崎大学肝胆膵外科) |
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北野 雅之 |
(和歌山県立医科大学第二内科) |
パネルディスカッション6
食道胃接合部癌の診断と治療の最前線
西らにより、食道胃接合部は解剖学的にも組織学的にも特殊な部位であり、そこに発生する癌もまた独特な性質を持つ可能性が指摘されたのは、今から約50年前にさかのぼる。多くの接合部腺癌が早期に見つかるようになり、食道学会と胃癌学会の共同研究により最適なリンパ節郭清範囲や手術アプローチ法が示され、接合部癌に特化したガイドラインが作成されるに至った。しかし、接合部腺癌の早期発見に向けたバレット食道に対するサーベイランスの必要性や接合部癌内視鏡切除後の治癒判定法については十分なコンセンサスがなく、また我が国における外科切除の術前術後治療に関するエビデンスは少なく標準治療は定まっていない。そこで本セッションでは食道胃接合部癌の診断と治療に関する検討を報告していただき議論することにより、この癌に対する理解を深め今後の発展に繋げたいと考えている。多数例の検討だけでなく新規性の高いものは少数例の検討も歓迎する。
司会: |
河野 浩二 |
(福島県立医科大学消化管外科学講座) |
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石原 立 |
(大阪国際がんセンター消化管内科) |
パネルディスカッション7
薬剤性消化管障害の病態と診療の新展開
薬剤性消化管障害は、粘膜のびらん・潰瘍といった器質的変化にとどまらず、免疫反応の過剰活性化、炎症性変化、腸内環境の変化、機能異常など、さまざまな機序による多様な病態を呈する。たとえば、NSAIDsによる粘膜障害に加え、免疫チェックポイント阻害薬による自己免疫性腸炎(irAE腸炎)、抗菌薬関連腸炎、Microscopic colitis、オピオイド誘発性便秘などが知られている。
薬剤によって病態や対応は異なり、予防や治療、副作用への対処など、診療において考慮すべき点は多い。近年は新規薬剤の使用や多剤併用が増加しており、それぞれの状況に応じた適切な対応の重要性が一層高まっている。
本セッションでは、薬剤性消化管障害に関する病態解明、診断・治療の工夫、予防策や副作用マネジメントなど、最新の知見や実臨床での取り組みに関する演題を広く募集する。基礎から臨床まで、さまざまな視点からの発表が寄せられることを期待する。
司会: |
石原 俊治 |
(島根大学医学部内科学講座内科学第二) |
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北條 麻理子 |
(順天堂大学医学部消化器内科) |
パネルディスカッション8
肝不全診療の現状と課題克服
急性肝不全(ALF)とAcute-On-Chronic Liver Failure(ACLF)は、肝移植などの集学的治療を要する予後不良な疾患であり、真の成因診断法の開発や非移植対象患者に対する治療戦略の構築など、解決すべき課題は多い。また慢性肝不全(非代償性肝硬変)に対しては、薬物療法や栄養療法に加え、運動療法の有用性も期待されているが、それらの長期予後やQOLの改善に対するエビデンスは十分とは言えない。高齢者や基礎疾患併存患者の肝不全、術後や治療後の肝不全、アルコールやMASHを背景とする肝不全など、肝不全の病態は複雑化しており、その診療にはさらなる深化が求められている。本セッションでは、新規の診断・治療法や医療技術の開発状況、基礎研究の知見、さらには社会インフラ・ネットワークの整備まで幅広くご発表いただき議論を重ねることで、肝不全診療の課題克服に向けたプロセスを明らかにしたい。
司会: |
寺井 崇二 |
(新潟大学大学院消化器内科学分野) |
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清水 雅仁 |
(岐阜大学大学院消化器内科学) |
パネルディスカッション9
機能性消化管疾患の病態解明と診療の進歩
非びらん性胃食道逆流症(NERD)、機能性ディスペプシア(FD)、過敏性腸症候群(IBS)、機能性便秘症をはじめとする機能性消化管疾患は、いまだ明確な機序が解明されておらず、個別化医療の観点からも多面的なアプローチが求められている。近年の腸脳相関研究の進歩は目覚ましく、様々な研究手法から機能性消化管疾患の病態解明が進みつつある。また実臨床においては各種診療ガイドラインの整備が進み、多くの患者に恩恵を与えるべくさまざまな診療面の進歩が見られている。本パネルディスカッションでは、基礎研究から臨床応用、さらには診療現場での実践までをつなぐ、機能性消化管疾患の病態解明や診療の進歩に関わる最新の知見を共有し議論したい。
司会: |
藤原 靖弘 |
(大阪公立大学消化器内科学) |
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新崎 信一郎 |
(兵庫医科大学医学部消化器内科学) |
パネルディスカッション10
薬物性肝障害と免疫関連有害事象のマネジメント
薬物性肝障害(DILI)は日常臨床において頻繁に遭遇する重要な肝障害である。2023年、特異体質性DILI診断のためRECAM-J 2023が公表されたが、その妥当性と信頼性は前向きに検証される必要があり、加えて小児例や軽症例、慢性肝障害を有する症例、漢方・自然食品等に起因する症例等に対するRECAM-J 2023の適合性の検討はこれからの課題である。また、RECAM-J 2023が適用できない特殊型DILIに分類されるタモキシフェンによる肝障害もその全貌は明らかになっておらず、治療を担当する乳癌専門医との連携が必要である。さらに免疫チェックポイント阻害薬(ICI)による肝障害も近年増加しており、重症例も多く、極めて重要な問題である。2025年、日本肝臓学会主導でICIによる肝障害に対する診断・治療指針を作成したが、実臨床におけるその有用性は改めて検討されなければならない。これらの問題につき、本パネルディスカッションで様々な側面から議論を重ねたい。
司会: |
田中 篤 |
(帝京大学医学部内科) |
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日浅 陽一 |
(愛媛大学大学院消化器・内分泌・代謝内科学) |
パネルディスカッション11
進行大腸癌に対する集学的治療の新展開
高齢化に伴い大腸癌患者は増加を続けている。検診の普及や内視鏡治療技術の進歩により,早期に診断されて手術を回避できる患者は増加しているが,今なお治癒切除には周囲臓器の合併切除が必要となる症例や,治癒切除が困難・不能な遠隔転移を伴う症例は少なくない。一方で切除不能大腸癌に対する薬物療法に関しても原発部位に応じた薬剤選択やRAS,BRAF遺伝子変異,マイクロサテライト不安定性,HER2タンパク発現などを指標とした個別化により生存期間の延長が得られている。
大腸癌治療において切除が最も治癒を期待できる治療であるという原則のもと,最近では術前化学療法や化学療法が奏功した症例に対するコンバージョン手術の適応が広がっている。本パネルディスカッションでは治癒切除困難・不能結腸癌あるいは直腸癌に対する各施設の取り組みや成績を共有し,今後の標準治療確立に向けた議論を深めたい。
司会: |
五井 孝憲 |
(福井大学第一外科) |
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水島 恒和 |
(獨協医科大学外科学(下部消化管)講座) |
パネルディスカッション12
胆石症診療ガイドライン Up-to-Date
胆石症診療ガイドラインは、日本消化器病学会を中心に、日本消化器内視鏡学会および日本胆道学会の協力のもと、2009年の初版以降、2016年、2021年と改訂が行われてきた。改訂第3版以降、急性胆嚢炎・胆管炎に対する超音波内視鏡下ドレナージ、無症候性総胆管結石の取り扱い、肝内結石症に対する経口的内視鏡治療などに関する新たなエビデンスが示されており、現在、最新の知見と臨床実態を反映した改訂第4版の作成が進行中である。本パネルディスカッションでは、ガイドライン作成委員の先生方より、今回新たに整理されたBasic Question(BQ)、Clinical Question(CQ)、Future Research Question(FRQ)について、回答案および推奨・解説案をご提示いただく予定である。各領域におけるエキスパートによる最新の見解が示される貴重な機会であり、各項目に対する解釈や今後の課題を共有し、より実践的で有用なガイドラインとなるよう議論を深めていきたい。多くの皆様のご参加を心よりお待ちしている。
司会: |
潟沼 朗生 |
(札幌医科大学医学部消化器内科/消化器がん遠隔医療講座) |
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木暮 宏史 |
(日本大学医学部内科学系消化器肝臓内科学分野) |
パネルディスカッション13
慢性便秘症診療ガイドラインの現状と展望〜慢性便秘症診療においてガイドラインに求められる役割とは〜
慢性便秘症は日常生活に支障をきたすのみならず、循環器疾患、脳血管疾患、腎疾患などのさまざまな疾患の病態に関与し、長期生命予後にも影響を及ぼす重要な疾患である。昨今、新規治療薬の登場とともに慢性便秘症の診療は大きく進展しており、その背景には、「慢性便秘症診療ガイドライン2017」および「便通異常症診療ガイドライン2023-慢性便秘症」の2つの診療ガイドラインが果たした役割は大きい。本セッションでは、まずこれまでの2つの診療ガイドラインが臨床現場でどのように活用され、診療に貢献してきたかを振り返るとともに、今後の診療ガイドラインに求められる視点や展望について議論を深めたい。本テーマに関連する演題を広く募集する。
司会: |
今枝 博之 |
(埼玉医科大学消化管内科) |
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伊原 栄吉 |
(九州大学大学院医学研究院病態制御内科学) |
パネルディスカッション14
慢性膵炎診療ガイドライン改訂における課題と今後の展開
慢性膵炎診療ガイドラインは,日本膵臓学会が作成した慢性膵炎臨床診断基準に基づいて作成されてきた.2009年に改訂された慢性膵炎臨床診断基準では,世界に先駆けて早期慢性膵炎の疾患概念および診断基準が提唱され,2019年の改訂を経て様々なエビデンスが構築されてきた.また,高力価膵消化酵素薬の登場による新たな治療方針,そして慢性膵炎に対する内視鏡治療の進歩等も相まって,慢性膵炎診療は新たなステージを迎えている.2021年に発刊された慢性膵炎診療ガイドライン改訂第3版では,2019年の診断基準改訂に基づいて多くのBQ,CQ,FRQが設定され,現在の慢性膵炎診療に大きく役立っている.一方で,2019年に改訂された慢性膵炎診断基準の検証作業も進んでおり,第3版でFRQに設定された内容に関しても,少しずつエビデンスが構築されてきている.このような背景のもと,第4版発刊に向けて新たにガイドライン委員会を組織し改訂作業を行ってきた.本セッションでは,ガイドライン作成委員から改訂作業の報告をして頂きながら,第5版に向けて取り組むべき課題を明らかにしたい.聴講者も交えて活気のあるパネルディスカッションになることを期待している.
司会: |
入澤 篤志 |
(獨協医科大学医学部内科学(消化器)講座) |
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池浦 司 |
(関西医科大学内科学第三講座) |
パネルディスカッション15
過敏性腸症候群(IBS)ガイドライン改訂に向けて
過敏性腸症候群(IBS)は日常診療でよく遭遇する疾患である。IBSでは腸-脳相関の乱れを基盤に消化管運動機能異常、内臓知覚過敏、腸内細菌叢異常、腸管バリア機構破綻、食物不耐や心理社会的異常などが認められる。我が国では本学会からIBS診療ガイドライン2014 (初版) と2020(改訂第2版)が公表され、病態や治療についての最新知見がまとめられてきた。しかし、未だ難治例も多く、現在改訂第3版の刊行に向けての作業が進行中である。特に、新規治療薬、デジタル/AI技術を用いた診療開発、電気・磁気刺激治療や腸内環境に焦点を当てた治療に関する最新エビデンスなどの整理が必要である。加えて近々改定される国際基準Rome Vの動向にも注意を払う必要がある。本パネルディスカッションでは、多方面からのIBSに関する最新知見を幅広く募集し、我が国の日常診療に求められる臨床課題について議論を深めたい。
司会: |
奧村 利勝 |
(旭川医科大学) |
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金澤 素 |
(東北大学大学院医学系研究科心療内科学分野) |
パネルディスカッション16
MASLD診療ガイドライン
2023年,SLDの新たな分類が発出され,アルコール摂取量を基準にMASLD/MetALD/ALDとされた.今回のガイドライン改定は、『MASLD診療ガイドライン』への書名変更からはじまった.常に心掛けたのは,海外との齟齬がなく,しかも本邦の実態に即したガイドラインを作成することである.特に,高齢者や非肥満例が多い本邦の実態には細心の注意を払った.概念・定義では,心代謝系危険因子(CMRF)に含まれるBMIや腹囲は海外の基準が妥当であるのか.診断では,高齢者のFIB-4 indexも含め,如何なる非侵襲的検査で肝硬変・肝がんハイリスク症例を絞り込み,専門家に紹介すべきか.肝臓以外のイベントとして,心血管系や悪性疾患は特に重点的に啓発を試みた.治療では,BMIに応じた体重減量の基準や,2型糖尿病/肥満症/脂質異常症の併存疾患治療の最新エビデンス,更に薬物療法の時代まで視野に入れた将来の展望を示した.当日は,作成委員から改定のポイントを御紹介頂き全体で議論を深めたい.
司会: |
芥田 憲夫 |
(虎の門病院肝臓内科) |
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小木曽 智美 |
(東京女子医科大学消化器内科) |
パネルディスカッション17
機能性ディスペプシア診療ガイドライン改訂の方向性と今後の課題
機能性ディスペプシアは日常診療の中でも、最もよく遭遇する疾患でありながら、その病態が多因子から成ると共に複合的であることから治療方針に難渋することが多かった。しかし、初版、第2版のFD診療ガイドラインにより、病態と共に治療方針が明確になりつつあり、知識も整理されてきた。一方で、腸内細菌叢の影響、消化管粘膜の炎症遷延化のメカニズム、膵機能異常の併存、vonoprazanの治療成績、腸脳相関から見たアプローチ、抗菌薬あるいは抗アレルギー薬による治療成績など、少しずつではあるが、新たなエビデンスが蓄積されつつある。そして、これまでの知見を生かし、酸分泌抑制剤や消化管運動改善薬に抵抗性のある病態に改めてアプローチする時ではないかと感じる。こうした基礎的、臨床的な課題に加えて、意欲的な演題を広く募集する。こうした潮流の中で新ガイドラインが作られていくものと考えている。
司会: |
二神 生爾 |
(日本医科大学武蔵小杉病院消化器内科) |
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田中 史生 |
(大阪公立大学大学院医学研究科消化器内科学) |
パネルディスカッション18
2026年改訂肝硬変ガイドラインの最新情報
本パネルディスカッションでは、2026 年改訂の肝硬変診療ガイドラインの最新の進行状況をお伝えできればと思います。2020 年度版と新たに変わった点は、MASH などの名称変更はもちろんですが、NILDA(non-invasive liver disease assessment)が飛躍的に進歩してきていること、栄養療法だけでなく運動療法も組み込み包括的な管理を目指した肝臓リハビリという概念が出てきたこと、ウイルス肝炎の治療後を中心に線維化改善、肝機能改善などの知見が集まってきていること、門脈圧亢進症の治療は欧米と異なる進化を遂げていること、ACLF などにつながるイベントの抑制・制御に関する記述が増えたこと、移植の時期に関する記述、患者中心の医療を目指した QOL に関する項目が増えたことなどがあげられるかと思います。日常診療を行う医師が理解しやすいように、肝硬変の全体像を表現し患者の予後改善につながるガイドラインにしたいと考えておりますので、是非、肝硬変の診療の肝を聞きに来ていただければと思います。
司会: |
中川 美奈 |
(東京科学大学消化器内科) |
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土屋 淳紀 |
(山梨大学消化器内科) |
パネルディスカッション19
日常臨床の現場に残された消化性潰瘍の解決すべき課題~ポストピロリ時代におけるガイドラインの改訂~
H. pyloriの除菌治療の保険適用拡大に伴って、今や除菌治療は日常臨床において広く普及している。また、プロトンポンプ阻害薬よりも強力なカリウムイオン競合型アシッドブロッカーが上市されるなど、消化性潰瘍治療をめぐる環境は大きく様変わりをしている。近年では、H. pyloriやNSAIDsに起因しない特発性潰瘍の増加、H. pylori以外のHelicobacter属菌 (Non-Helicobacter pylori Helicobacter)による潰瘍発症、薬物性潰瘍ではNSAIDsのみならずアンジオテンシンⅡ受容体拮抗薬や酢酸亜鉛による新たな胃粘膜傷害の報告も見られている。このような背景のなか、消化性潰瘍診療におけるエビデンスも蓄積され、現在、同ガイドラインは改訂作業に着手している。
本セッションはポストピロリ時代における消化性潰瘍診療における解決すべき課題や問題点を議論するために企画された。消化性潰瘍における疫学、薬物・内視鏡治療など多方面からの演題を募集する。
司会: |
鎌田 智有 |
(川崎医科大学健康管理学) |
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杉本 光繁 |
(大分大学グローカル感染症研究センター) |
パネルディスカッション20
大腸ポリープ診療ガイドライン
本学会の「大腸ポリープ診療ガイドライン」(改訂第2版)は2020年に発刊され、現在、第3版への改訂作業が進行中である。本ガイドラインは、「大腸ポリープ」のみならず「大腸局在性病変」すべてを対象とし、疫学、スクリーニング、病態・定義・分類、診断(内視鏡・病理)、治療・取扱、治療の実際、偶発症と治療後のサーベイランス、その他(ポリポーシス、潰瘍性大腸炎関連腫瘍など)と網羅的に構成されている。発刊から5年が経過し、国内外から新たなエビデンスが集積され、大腸ポリープ診療を取り巻く状況も大きく変化している。本セッションでは、ガイドラインに基づく診療経験や課題、最新の知見や技術を取り入れた診断・治療に関する研究、患者のQOL向上や医療経済に関する検討など、幅広い領域からの演題を募集する。多数のご応募と、当日の活発な議論を期待したい。
司会: |
岡 志郎 |
(広島大学大学院医系科学研究科消化器内科学) |
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浦岡 俊夫 |
(群馬大学大学院医学系研究科内科学講座消化器・肝臓内科学分野) |
パネルディスカッション21
胃食道逆流症ガイドライン
GERD診療ガイドライン(第3版)が発行され5年目を迎え、現在、改定作業が進められている。第3版では、GERDをNERD、軽症逆流食道炎、重症逆流性食道炎の3群に分け、新しく登場したボノプラザンの使用に関し、従来からのPPIとの使い分けが提唱された。その後、主にボノプラザンに関して、新たなエビデンスが加わり、それらに基づいた使用法を再検討する必要がある。PPI、ボノプラザンは安全性の比較的高い薬剤であるが、種々の有害事象に関するデータも集積し、使用に際しては、改めて、必要最小用量で、最小期間の投与が重要となっており、維持療法の要否に関しても慎重に検討する必要がある。また、2022年4月より内視鏡的逆流防止術が本邦で保険適用となり、全国的に広がりをみせており、外科的治療においても適応を広げる試みがなされている。さらに、バレット食道の取り扱いに関しても新たなデータをもとに改定する必要がある。本セッションでは、GERD診療ガイドライン改定に向けて、関係するすべての医療関係者と議論できる場としたい。
司会: |
飯島 克則 |
(秋田大学消化器内科) |
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眞部 紀明 |
(川崎医科大学検査診断学(内視鏡・超音波)) |
ワークショップ
ワークショップ1
Steatotic Liver Diseaseの病態に基づく診療戦略
Steatotic Liver Disease(SLD)は、MASLD、MetALDからアルコール関連肝疾患(ALD)に渡る幅広い疾患スペクトラムを包括する概念であり、その病態には共通基盤に加えて疾患固有のメカニズムが関与している。遺伝的背景および生活習慣・嗜好をはじめとした様々な環境・エピゲノム因子がSLD病態進展の鍵を握っているが、その詳細は未だ不明の点も多い。診断には非侵襲的手法が活用されているが、肝線維化のみならず病態をより正確に反映した検査法の確立が求められる。治療薬開発においても、疾患特異的な創薬に加えて、広範な適応を狙った戦略など様々なトライアルが進行中である。本ワークショップでは、SLD病態解明に関する基礎・臨床双方からのアプローチや、病態に立脚した診断・治療への取り組みなど、さまざまな観点からの演題を幅広く募り、次世代のSLD診療戦略構築へ向けた実りある討議の場としたい。
司会: |
池嶋 健一 |
(順天堂大学大学院医学研究科消化器内科学) |
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赤羽 たけみ |
(宇陀市立病院) |
ワークショップ2
急性膵炎診療の課題と展望
急性膵炎診療ガイドライン(GL)2021第5版の普及により,急性膵炎に対する診療が適正化され,重症例の予後改善が得られるようになったが,いまだに致死例が存在する.GLでは成因や予後の現状,新規診断・重症度判定や早期治療,晩期合併症に対する推奨治療など致命率の改善につながるポイントが明らかになりつつある.臨床の現場では高齢者に対する診療機会も増加しており,高齢者対策も重要である.今後は成因別の対応,早期診断や重症度判定の診療に与える影響や適正化の評価,早期治療の予後への影響,致死例よりみた高危険群の抽出,予後予測因子の再検討などが望まれる.本ワークショップでは,成因,診断・重症度判定,早期治療,晩期合併症治療,Pancreatitis bundlesの遵守状況などの診療実態に加え,現在の課題と今後の展望を明らかにしていただきたい.幅広い視点からの応募を期待している.
司会: |
良沢 昭銘 |
(埼玉医科大学国際医療センター消化器内科) |
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河上 洋 |
(宮崎大学医学部医学科内科学講座 消化器内科学分野) |
ワークショップ3
バイオマーカーに基づいた切除不能胃癌に対する治療戦略
近年、がん治療においては個別化医療の重要性が高まっており、胃癌においても分子生物学的な知見の進展により、バイオマーカーに基づいた治療選択が現実のものとなった。切除不能胃癌という極めて難治な疾患に対して、どのように精密な治療戦略を構築していくべきか、われわれは今まさに問われている。
本ワークショップでは、最新の研究成果や臨床データを踏まえ、バイオマーカーの意義や実臨床における活用法について各施設からご発表いただき、今後の治療方針の在り方について議論していただきたい。
司会: |
武藤 学 |
(京都大学大学院医学研究科腫瘍内科学講座) |
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矢野 文章 |
(東京慈恵会医科大学上部消化管外科) |
ワークショップ4
消化管出血に対する最新の治療戦略
本ワークショップは、消化管出血に対する最新の知見や実臨床に根ざしたアプローチを幅広く議論できる場にしたいと考えております。近年では高齢化に伴う抗血栓薬の使用増加や、NSAIDs関連出血、術後合併症としての出血など、その病態も多様化しています。
内視鏡的止血術における新たなデバイスや技術の進歩はもとより、出血源不明例に対するカプセル内視鏡、ダブルバルーン内視鏡の適応、IVR(血管造影・塞栓術)や外科的治療との連携による集学的治療の現状についても取り上げたいと考えております。AIや画像解析技術の応用など、近年注目される新たなツールの導入など、多様な観点からの演題を募集いたします。診断技術、治療戦略、医療資源の選択について、臨床現場での実践的な工夫やエビデンスに基づいたアプローチを共有することは、今後の診療の質向上に大きく寄与するはずです。現場での経験や工夫を共有し、今後の診療に資するセッションにしたく、多くの皆様のご応募をお待ちしております。
司会: |
村山 洋子 |
(市立伊丹病院消化器内科) |
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草野 央 |
(北里大学医学部消化器内科) |
ワークショップ5
消化管稀少疾患の診断・治療の最前線
特殊光観察、超拡大内視鏡での生体内細胞観察などによって、微細ながら特徴的な所見を持つ疾患の発見が可能となった。一方でomics技術に代表される解析技術の進歩により少数例のサンプルでの解析も可能となり、消化管希少疾患の病態解明が進んでいる。消化管内圧やpHモニタリングなどの機能面からの解析も進んでいる。責任遺伝子が同定され診断基準にも含まれるようになった「CEAS」のように、疾患概念まで変貌を遂げたものもある。一方で治療法に関しては、「MEFV 遺伝子関連腸炎」の遺伝子変異パターンとコルヒチン反応性等、期待される成果が出始めたものの、辿り着いていない疾患がほとんどである。したがって症例の集積と施設間の情報共有が未だに重要である。本ワークショップでは様々な消化管希少疾患の診断および治療に関する最新の知見を多施設から持ちより、討論する場としたい。多数の演題の登録を期待します。
司会: |
大宮 直木 |
(藤田医科大学先端光学診療学) |
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穂苅 量太 |
(防衛医科大学校消化器内科) |
ワークショップ6
膵神経内分泌腫瘍に挑む:進化する診療戦略と治療の最前線
膵神経内分泌腫瘍(pNET)の診療は大きく進化を遂げている。画像診断では、ソマトスタチン受容体シンチグラフィーに加え、より高感度なSSTR-PETが海外では標準化されつつあり、国内でも臨床応用が期待されている。超音波内視鏡下穿刺吸引法の技術進歩により、1cm以下の微小病変の診断も現実的となった。
治療法も多様化し、外科切除のみならず、RFAやTACEなどの局所療法、ソマトスタチンアナログ、エベロリムスやスニチニブなどの分子標的薬、ストレプトゾシンなどの化学療法、さらにはPRRTまで多くの選択肢がある。
こうした多様なアプローチを適切に選択・組み合わせるためには、内科・外科・放射線科・核医学・病理など、多領域にわたる専門家によるmultidisciplinary teamが不可欠である。
本セッションでは、pNET診療の現状と課題、そして今後の展望について講演いただき、多角的な視点から議論を深め、最適な診療戦略を探りたい。
司会: |
平野 聡 |
(北海道大学消化器外科学教室II) |
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池田 公史 |
(国立がん研究センター東病院肝胆膵内科) |
ワークショップ7
小腸疾患に対する内視鏡診断・治療の進歩
暗黒大陸と揶揄されていた小腸は20年前のダブルバルーン内視鏡の登場からカプセル内視鏡、シングルバルーン内視鏡などモダリティーの充実により大きな発展を遂げてきた。腫瘍、炎症、出血、狭窄など多様な病態に対してそれぞれ対処する必要があることからも内視鏡の果たす役割は非常に大きい。しかしながら、未だ小腸疾患の診断や治療、治療効果判定に苦慮する場面が多いことも問題である。本セッションでは、内視鏡による新しい診断方法や止血、狭窄拡張、腫瘍切除などに対する手技の工夫に加えて医師の負担低減化・教育など各施設での研究や現状を幅広く募集する。小腸疾患に対する内視鏡の未来像を理解・共有する機会としたい。
司会: |
斎藤 豊 |
(国立がん研究センター中央病院内視鏡科) |
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土屋 輝一郎 |
(筑波大学附属病院消化器内科) |
ワークショップ8
消化器病領域の鏡視下・ロボット支援手術の新展開
消化器病領域の低侵襲手術の発展は著しく、特にロボット支援手術の保険収載も進み、多くの施設で導入期から安定期に入っている。一方、一般診療としてロボット支援手術を普及していくには以下の多くの課題がある。1.厳しい施設基準と導入・維持コストの問題、2.多様なロボット機器への対応と機能の改良、3.適応拡大やロボット支援加算へ向けたエビデンスの創出、4.ロボット支援手術導入による時間延長と働き方改革への対応、5.教育と新規導入施設への支援、6.AIやVRの活用、7.鏡視下手術への回帰と棲み分け、8.その他。今後のロボット支援手術がどのように展開していくか、上記の問題点を踏まえた演題を消化管、肝胆膵領域を問わず広く募集する。また低侵襲手術と内科的治療との組み合わせの演題、新しいコンセプトの披露も歓迎する。
司会: |
江口 晋 |
(長崎大学外科学講座) |
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大塚 隆生 |
(鹿児島大学消化器外科) |
ワークショップ9
炎症性腸疾患の非侵襲的活動性モニタリングの進歩
炎症性腸疾患の診療において、疾患活動性の正確な把握は、治療方針の決定や再燃の予測において極めて重要である。特に近年は、従来のCRPや血清アルブミン、血沈に加えて、LRG、便中カルプロテクチン、PGE-MUMといった新規バイオマーカーが登場し、これらのバイオマーカーの活用あるいは組み合わせることで非侵襲的に精度の高い活動性評価が可能になりつつある。また、PR3-ANCAや血清アミロイドA蛋白といった他疾患で用いられてきた指標に加えて、新規バイオマーカーの有用性も検討されている。これらのマーカーは、内視鏡的活動性の推定、治療効果の判定、臨床的再燃の予測などに活用可能なだけでなく、医師・患者双方の負担軽減にも寄与することから、適切な炎症性腸疾患診療の実践に必要不可欠と考えられる。本セッションでは、非侵襲的モニタリングの最新知見と今後の展望について多角的に議論したい。
司会: |
江崎 幹宏 |
(佐賀大学医学部内科学講座消化器内科) |
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杉本 健 |
(浜松医科大学内科学第一講座) |
ワークショップ10
慢性肝疾患の変遷と発がんに対する新戦略
近年、我々が診療にあたる慢性肝疾患は大きく変化している。肝臓に様々な障害が起これば如何なる原因であれ肝細胞に酸化ストレスやオートファジーの異常などの代謝障害が起こり、肝細胞周囲の類洞壁細胞からの刺激等もあり肝細胞に遺伝子変異が生じて肝発がんが起こる。ただ肝発がんの頻度は原因により全く異なる。肝細胞癌の原因としてかつてはC型肝炎ウイルス感染が最多で、ついでB型肝炎ウイルス感染など肝炎ウイルス感染が多かったが、これらの疾患の診断や治療の進歩により他の疾患が原因となる肝細胞癌が増加している。アルコール関連肝疾患は以前より知られているが、近年注目されているのは代謝機能障害関連脂肪性肝疾患である。また、脂肪肝がなくても肥満や糖尿病のみでの発がんもあり、さらに寿命の延長により疾患を有さない症例も存在する。そのような時代の肝発がんへの戦略ならびに発がん後の治療を考えたい。本セッションでは、肝発がんの分子機構に迫る基礎的研究、診断・治療に関する臨床的知見、さらには予防戦略を含む多角的な視点からの発表を期待する。
司会: |
原田 大 |
(産業医科大学医学部第3内科学) |
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建石 良介 |
(東京大学大学院医学系研究科消化器内科学) |
ワークショップ11
肝疾患のバイオマーカーと画像診断の新展開
近年、肝疾患の診療においては、非侵襲的かつ高精度な診断技術の開発が急速に進展しており、血中マイクロRNAや循環腫瘍DNAなどを用いたリキッドバイオプシー、新規血清バイオマーカーの探索、AI技術を用いた画像解析支援、さらにはエラストグラフィーや拡散強調MRIによる肝線維化・腫瘍評価など、多様なアプローチが注目されている。これらは病態の可視化や早期診断、治療効果のモニタリング、予後予測において大きな可能性を有する。本ワークショップでは、ウイルス性肝炎、アルコール性肝炎、MASLD/MASH、肝硬変、自己免疫性肝疾患、肝細胞癌、肝内胆管癌などの広範な疾患を対象とし、基礎研究から臨床応用に至るまで、先進的な診断・評価技術に関する演題を幅広く募集する。特にバイオマーカーと画像診断の融合的なアプローチ、AIや機械学習の臨床応用に関する応募を歓迎し、活発かつ有意義なセッションとなることを期待する。
司会: |
田中 真二 |
(東京科学大学医学部分子腫瘍医学) |
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武冨 紹信 |
(北海道大学大学院消化器外科学教室Ⅰ) |
ワークショップ12
自己免疫性肝胆膵疾患の診療の現状と将来展望
自己免疫が関与する肝胆膵疾患には、自己免疫性肝炎(AIH)、原発性胆汁性胆管炎(PBC)、原発性硬化性胆管炎(PSC)、自己免疫性膵炎(AIP)、IgG4関連硬化性胆管炎(IgG4-SC)などが挙げられ、いずれも厚生労働省の指定難病に位置付けられている。これらの疾患に対しては、全国疫学調査の実施や、診断基準および診療ガイドラインの改訂が継続的に行われてきた。一方、その病因は依然として不明であり、正確な診断や適切な治療法の選択に難渋する例も多く、病態に基づく新たなバイオマーカーの開発や、より効果的な治療戦略の確立が強く望まれている。本ワークショップでは、これらの自己免疫性肝胆膵疾患に対する各施設における診断、病態把握、病型分類、さらには長期予後の改善を目指した治療法の工夫についてご紹介頂きたい。現時点での診療上の課題を共有するとともに、将来への展望について活発な議論がなされることを期待する。
司会: |
大平 弘正 |
(福島県立医科大学消化器内科) |
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児玉 裕三 |
(神戸大学大学院医学研究科内科学講座消化器内科学分野) |
ワークショップ13
消化器領域における再生医療の展望
近年、再生医療は飛躍的な進歩を遂げており、難治性疾患をかかえる消化器領域においても新たな治療法として大きな期待が寄せられています。本学会でも再生医療研究推進委員会を2018年に設置し、消化器領域における再生医療を発展させ臨床応用を加速させるための活動を続けています。そこで本ワークショップでは、基礎研究~橋渡し研究~臨床研究までの幅広いフェーズの最新の研究成果を公募します。また、iPS細胞や体性幹細胞などの幹細胞、オルガノイド、CLiP細胞、膵島細胞などの細胞移植、細胞外小胞、バイオマテリアル技術、組織工学など、多様な視点からの演題を歓迎いたします。本領域の発展に向けて、実りある議論を交わせることを楽しみにしています。
司会: |
岡本 隆一 |
(東京科学大学大学院消化器病態学) |
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高見 太郎 |
(山口大学大学院医学系研究科消化器内科学) |